第20話 スキルホルダー
翌週の月曜日、中学に向かおうと家を出たところ、家の目の前にリムジンが停まっていた。
「なんだこの車?まさか?」
警戒しながら近づくと、リムジンの窓が開き、知ってる顔が話しかけてくる。
「りっくん、おはよ〜」
ゆあちゃんだ。それに、隣には仏頂面の鈴が足を組んで座っていた。
「おはよ。なにしてんの?」
「鈴ちゃんが中学まで送ってくれるって」
「そうなんだ。じゃあまた学校で」
オレは、手を振って歩き出そうする。しかし、すぐに呼び止められた。
「何言ってんのよ。あんたも乗るのよ」
「いいのか?」
「いいから乗れ」
「へい……」
オレは勝手に開いたドアからリムジンに乗り込む。オレが乗り込んでもほとんど揺れたりしない。タイヤが無くて浮いているといっても、うちの乗用車ではこうはいかないだろう。さすが高級車だ。
とりあえず、窓際の横の席に座わることにした。内装も豪華で座席はふかふかだ。この前はじめて乗ったときにも思ったが、豪華すぎて、何か壊したらどうしようと、落ち着かない空間である。
少しそわそわしながら、2人のことを見た。2人は1番後ろの席に並んで座っている。
「おまえ、中学は行かなくていいのか?」
「成績良いから大丈夫なんじゃない?」
「さぼりかよ。んで?なんのようだ?」
「あんたの《クラス替え》とかいうスキルについて詳しく聞きにきたの」
「あー、なるほどね。じゃあ、中学に着くまでに説明するわ」
オレは、なるべく詳しく、オレのスキルについて説明することにした。
クラスに加入すると、その人物のステータスがわかること。その人物の好感度が高いほどボーナスポイントが入り、そのポイントを割り振ることで、オレのステータスを高めることができること。好感度が100になると更にボーナスがあること。等々、今わかっていることを全て話した。
「へー、やっぱり面白いスキルね」
「あ、それとさ。この前、鈴にメリットについて聞かれたよな?あのときは忘れてたんだけど、デメリットはあるんだよね」
「なによそれ。だとすると、仲間だからって、無条件に加入するってのは話が変わってくるわよ?」
「まぁそうだよな」
「で?そのデメリットって?」
「えっとだな。たぶんだけど、おまえをクラスに加入させると、オレと同じクラスに転入することになる」
「はぁ?どういう意味よ?スキルの話でしょ?」
「ううん、違うの。あのね。ゆあとりっくんは、小学校と中学校が同じなんだけど、小学生のときは別々のクラスだったの。それでね、りっくんがクラス替えを使って、ゆあをクラスに加入されたら、りっくんとゆあだけが他の教室に割り当てられて2人だけのクラスになったんだ」
「そうなんだ。もともと6年5組までしか無かったのに、次の日から6年6組が出来上がって、オレたち2人だけの教室が割り当てられた」
「は?なにそれ?そんなの周りの人たちが不自然だって騒ぐでしょ?」
「それが、誰も何も言わないんだ」
「なによそれ……こわっ……」
「まぁ、慣れるとなんでもないよ。でさ、中学でも、オレとゆあちゃんだけの2人っきりのクラスになってるんだよね」
「つまり、わたしがあんたのクラス替えスキルでクラスに加入すると」
「リアルでも強制的に転校させられる、と思う」
「そしてその違和感は誰にも気づけないってわけ?」
「正確に言えば、クラスに入ってる当人たちは変なのーって気づくことはできる」
「わけわかんないスキルね……」
「まぁ、クラス加入の代償?だとしたら軽い代償だと思うけどね。仲間が近くにいた方が作戦立てる時に都合が良いし、オレとしては悪いことはあんまりないかな、と思ってる」
「ゆあはりっくんと一緒にいれて……あっ!なんでもない!」
「ん?」
ゆあちゃんがなにか言いかけてモジモジしている。
「ラブコメおつ。まぁ、あんたのスキルの特性は理解したわ。ちょっと不気味だけど、特に問題ないから、約束通り加入してあげる」
「おぉ!いいのか?」
「えぇ、わたしとしてもあんたが強くなった方が助かるしね」
「さんきゅー。それじゃあさっそく」
「あ、ちょっと待って。一応、クラスに加入する前に2人に伝えておくことがあるの」
「なに?」
「なんだよ?」
「実は、わたしもスキルホルダーなんだ」
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