第18話 新橋駅ダンジョン

 オレたちは、双葉の案内に従い、新橋駅ダンジョンの前までやってきていた。

 双葉が手配したリムジンから降りて、駅へと近づいていく。さっきの高級レストランでも思ったが、こいつは相当な金持ちのようだ。


「双葉さんってお金持ちなんだね〜」


 ゆあちゃんが離れていくリムジンを見ながら、話しかけた。


「まぁ、パパが社長だからね。あと、わたしのことは鈴でいいから」


「そう?なら鈴ちゃんでいい?」


「いいわよ」


「ありがと♪じゃあ、ゆあのこともゆあって呼んで♪」


「わかったわ、ゆあ、よろしくね」


「うん♪」


「で、双葉、どっから忍び込む?」


「こっちよ」


 双葉のやつが先導する。ついていくと、道路から地上の線路沿いに歩いていき、整備員が出入りするような出入り口までやってきた。フェンス状の扉があり、電子ロックがかかっている。その電子錠に、双葉が左腕のエニモをかざすと、ピピっと音が鳴り鍵が開く。


「なんでおまえが開けれるんだ?」


「ハッキングしたのよ」


「おまえ……どっちが犯罪者だよ」


「うっさいわね、行くわよ。ゆあ、ドアはちゃんと閉めといてね」


「うん。わかった」


 そしてオレたちは線路の中に忍び込み、上を見上げる。上空30メートルに東京スカイラインの新橋駅が見えていた。


「じゃ、ここから行くわよ。あんたたちは背中のそれで上るわけ?」


「ああ」


 オレとゆあちゃんは背中に浮いていたスケボーを地面に放って、それに乗る。準備万端だ。


「じゃあ、行くわよ」


 双葉は、しゃがんでスニーカーに触れてからジャンプする。その勢いのまま、ゆっくりと上昇していった。


「わぁ〜、あれって小型飛行デバイスだよね?めっちゃ高いやつ」


「金持ちめ。行こう、ゆあちゃん」


「う、うん」


 オレたちもあいつの後を追って空に飛び上がった。スケボーをジグザグに操作しながら上昇し、なるべく目立たないよう素早く移動する。そして、新橋駅のホームに降り立った。


「ふぅ、ちゃんと出来た……」


「おつかれ」


 駅まで辿り着いて安心しているゆあちゃんに労いの言葉をかける。双葉のやつはすでにダンジョンのゲート前で待機していた。

 オレたちはそのあたりの壁にスケボーを立てかけてから双葉の方に歩いていく。


 新橋駅も、他のダンジョンと同様に、線路の向こう側が透明な膜で覆われていて、触れることはできても通過できなくなっていた。

 そして、一か所だけ、通過できるようになっている場所がある。ダンジョンへの入口、ゲートだ。ホームの中央当たりに、紫のモヤがかかったゲートが鎮座していた。


「あんたちの武器は?」


「オレは双剣」


 上着を脱ぎながら答える。


「なんで、そんなに予備の双剣背負ってるのよ」


「投げるから」


「はぁ?」


 双葉のやつが不思議そうにオレの装備を確認した。


 オレの背中には双剣のストックが3セット、6本の剣が背負われているのだ。肩くらいから腰にかけて鎧のように背負っている。それに加えて、腰の両サイドにもさしているので、合計で8本の剣を装備していた。


「りっくんはね、投剣術っていう技を使うんだよ。ブーメランみたいに剣を投げて戦うの」


「変なの」


「ふふ、そうだよね。それに背中に沢山つけて、虫みたいでしょ」


「たしかに。キモいわ」


「ふざけんな!カッコいいだろ!」


「厨二ね」


「おまえも二丁拳銃で厨二だろうが!」


「……」


「たしかに、鈴ちゃんもりっくんみたいでカッコいいよね。ふふ」


 ゆあちゃんが、鈴の両サイドの太ももにセットされた光学銃を見て、少しからかう素振りを見せる。


「ゆあはアーチェリー?」


「うん」


「足引っ張ったら、後でお仕置きよ」


「わ、わかった……頑張る」


 からかったことはスルーされたようだが、少し睨まれている。やはり、短気なチビのようだ。


「行くわよ」


「う、うん……よーし、がんばるぞぉ……」


「大丈夫、ゆあちゃんはオレが守るから」


「りっくん……うん!」


 そしてオレたちは、緊張感を持ってゲートに踏み込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る