第8話 チートスキルの効果は絶大で

「よし……すぅぅ……」


 オレは、パンチングマシンに向かって、低く構えてから精神を集中する。閉じた目を開け、右足に力を入れて拳を繰り出した。


「らぁ!!」


 バスン!パンチングマシンは大きく揺れ、かなり後ろまで後退する。そして、オレが殴ったところには穴が開き、サラサラと砂がこぼれ落ちてきた。


「……なんだこれ……昨日まで、揺れるだけだったのに……」


「素晴らしい威力です。それが陸人様の新しい力ですか?」


「そうみたい……」


「そうなると、戦闘力も上がってそうですね」


「試してみていいか?」


「もちろんです。私は準備万端ですよ」


 アトムが短剣を構えてオレの前に移動してきた。刃はついていないが鉄製だ。当たればそれなりに痛い。オレも同様の武器を手に取り、構える。


「今日は勝たせてもらおうか」


「まだまだ陸人様には負けませんよ」


 そしてアトムとの模擬戦が始まった。何度か打ち込んでみるが、やはり一撃一撃の攻撃力が上がっていることを実感する。昨日まではアトムの攻撃を受けることしかできなかったのに、アトムの剣戟を弾き返すことができていた。


「手加減はいらないぞ!アトム!」


「それでは失礼して」


 アトムが低く構えて足めがけて双剣を振るってきた。


「うわっ!?」


 咄嗟にジャンプして避けるが、


「隙ありでございます」


「へぶっ!?」


 肘を腹に叩き込まれて悶絶する。


「まだまだ、でございますね」


「ぐぅぅ……アトム、おまえ……肘とかずるいぞ……」


 腹を押さえながら抗議した。これは双剣での訓練なのに……


「実戦にズルも何もありません」


「まぁたしかに……よし!じゃあもう一戦!」


「承知しました」


 その日、オレは満足するまでアトムとの戦闘訓練を続けた。結論として、やはり攻撃力というか筋力が上がっていることがわかった。


 スキルを得て、仲間をクラスに加入させて、ステータスポイントを割り振っただけなのに、ここ数ヶ月分の努力を上回る能力を手に入れたのだ。


「すごい!すごいぞ!このスキルは!」


「スキルというのは?」


 アトムから質問されたので、スキル、クラス替えについて説明する。もちろん、口止めはしておく。


「なるほど。でしたら、そのクラスに残り28人を加入させれば陸人様はかなり強くなるのではないでしょうか?」


「たしかに!アトムは天才だな!」


「恐れ入ります」


 オレはモニターを表示させて、空席の欄をタップしてみた。


―――――――――――――――――――――

新しいメンバーをクラスに加入されますか?

Yes or No

―――――――――――――――――――――


「YES!」


―――――――――――――――――――――

対象となる人物が存在しません。

―――――――――――――――――――――


「え?なんで?」


「陸人様」


「なに?」


「私から提案しておいてなんですが、クラスに加入させる人物にアテはあるのでしょうか?先ほどの説明ですと、一定の信頼を得ているお友達しか加入させれないのですよね?」


「あっ……」


「柚愛様はどうでしょうか?」


「もう入ってもらった……」


「そうですか。では、頑張ってお友達を作りましょう」


「お!おまえまでなんだよ!頑張らなくたって友達くらい!……そ、そうだ!アトム!おまえが入ってくれよ!」


 オレはもう一度、座席をタップした。


――――――――――――――――――――

クラスに加入できるのは、生物だけです。

ロボットなどの無機物は加入できません。

――――――――――――――――――――


「そんな……」


「陸人様、私は陸人様のお友達ですよ」


「……」


 アトムなりのフォローだったのかもしれない。でも、ゆあちゃんとコイツくらいしか、友達のあてがないオレにとっては、逆にその優しい言葉が効きまくった。


「ぐぬぬ……」


「どうかされましたか?」


「いや……今日も訓練ありがと、また明日」


「承知しました。それでは私はこれで休ませていただきます」


 オレはアトムが充電スポットに正座するのを見ながら着替えて、訓練場の外に出る。


 スキル、クラス替え、すごいスキルであることはわかったが、色々課題もありそうだ。

 ……主にオレのコミュ力の問題な気もするけど……


 いや!きっと友達なんてすぐできるさ!前向きにいこう!まずは明日のゆあちゃんの訓練だ!クラスに入ってくれたお礼も兼ねてビシバシしごいてやるぞー!


 オレは現実逃避を発動しながら、お母さんが作る美味しい夕食を食べに家に戻るのであった。




=====================

【あとがき】

本作を読んでいただきありがとうございます♪

「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、あらすじの下にあるレビューから「★で称える」をいただけると助かります!


「もう一歩!」なら★

「頑張れ!」なら★★★


ブクマもいただけると泣いて喜びます!

なにとぞよろしくお願い致しますm(__)m

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る