第6話 はじめてのクラスメイト

 オレは、《クラス替え》スキルを操作し、モニターに映るオレの座席の右隣をタップした。空席になっている座席だ。すると、


―――――――――――――――――

新メンバーを加入させますか?

Yes or No

―――――――――――――――――


と表示された。


「おお?YESっと」


――――――――――――――――――――

加入させる新メンバーは的場柚愛ですか?

Yes or No

――――――――――――――――――――


「ゆあちゃん、いい?」


 隣に寄り添い、肩が触れている幼馴染に確認する。


「う、うん……」


 ゆあちゃんがモニターを覗き込み、ごくりと喉を鳴らすのが聞こえてきた。オレも少し緊張しながら、YESボタンを押す。


―――――――――――――――――――――――――――――

的場柚愛がクラスに加入しました。

的場柚愛の好感度を計測し、咲守陸人の統率力に反映します。

―――――――――――――――――――――――――――――


「好感度?りっくん?これでどうなるの?」


「さぁ?」


 一緒にモニターを見るゆあちゃんに生返事をしていると、ローディングバーが100%になって、メッセージが更新された。


―――――――――――――――――――――――――――――――――

的場柚愛の好感度は93でしたので、咲守陸人の統率力に93を加算します。

統率力が一定値をこえたため、ステータスボーナスが発生します。

統率力のボーナスポイントとして9ポイント、加入特典として5ポイントが加算され、合計14ポイントが付与されました。

現在付与可能なステータスポイントは、19ポイントです。

―――――――――――――――――――――――――――――――――


 一気にメッセージが表示され、若干混乱する。順番に見ていこう。まず、ゆあちゃんのステータスだ。オレの右隣の席には的場柚愛の名前があり、それをタップするとゆあちゃんのステータスが表示された。


――――――――――――――

氏名:的場柚愛(まとばゆあ)

年齢:12歳

性別:女

役職:なし

所有スキル:なし

攻撃力:5(E)

防御力:3(E-)

持久力:5(E)

素早さ:11(E+)

見切り:7(E)

魔力:0(E-)

精神力:25(D+)

学級委員への好感度:93/100

総合評価:E

――――――――――――――


「よわっ、雑魚じゃん」


「なにそれ!ひどい!バカりっくん!」


 ゆあちゃんに頭をポカポカされた。


「あーもう……痛いなぁ」


「そういう、りっくんのステータスはどうなのよ!」


「ん~?はいどーぞ」


 オレは自信満々に自分のステータスを表示させる。


――――――――――――――――

氏名:咲守陸人(さきもりりくと)

年齢:12歳

性別:男

役職:学級委員

所有スキル:クラス替え

攻撃力:14(E+)

防御力:19(D-)

持久力:68(B+)

素早さ:23(D)

見切り:8(E)

魔力:0(E-)

精神力:65(B+)

統率力:93(E-)

総合評価:D+

――――――――――――――――


「ふふふ」


「うわっ……つまり、ダンジョンに忍び込む精神力を持つ、サイコパス体力バカってことね……」


「なんだよそれ!……まぁ、持久力はめっちゃ高いよね。自覚なかったけど」


「毎日のように片道3時間かけて東京駅ダンジョンに通ってるからでしょ?バカみたいに、修行だー!とか言いながら」


「あーなるほど?ちなみに今は片道2時間でたどり着けるよ」


「へ~……」


 ゆあちゃんが白い目を向けてきたので、一旦オレのステータスは閉じて、もう一度、ゆあちゃんのステータスをじっくりと見た。


「ゆあちゃんの方は、基本雑魚だけど、好感度ってのだけ異様に高いな。93/100だってさ?」


「へ?……な!?ななな!?」


 ゆあちゃんがモニターを確認して、ゆでだこのように真っ赤になっていった。


「なに赤くなってるの?」


「だ!だってこれ!」


 プルプルと震えてモニターを指差しているが、オレはそれよりも伝えたいことがあった。ゆっくりと口を開く。


「なんか、ありがと」


「へ?」


「オレ、ゆあちゃんに好かれてるって確認できて、なんか嬉しいや」


「……りっくん」


「オレ!ゆあちゃんと友達で良かった!」


「は?……りっくん?」


「じゃあ!オレさっそくこのステータスボーナスっての試してみるから!また明日!あ!明日から訓練だかんな!朝からランニングするから!あとでメッセする!じゃな!」


 オレははやる気持ちを抑えてゆあちゃんの部屋から駆け出した。

 ボーナスポイントとかいうのを、自分のステータスに割り振ったらどうなるのか、楽しみで仕方がなかったからだ。


「……ッー!!りっくんのバカー!!」


なんか、ゆあちゃんの部屋から怒鳴り声が聞こえてきたような気がするが、気にしない。オレは柚愛ちゃんの家から飛び出して、自宅に戻ることにした。

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