第5話 クラスへの勧誘
「それで?」
ゆあちゃんの部屋に入って床にあぐらをかくと、ゆあちゃんがぷんぷんしながらオレのことを見下してきた。腕を組んで怒った態度を取っている。オレはそんな態度を無視して、テンション高めに話し始めた。
「そうそう!オレさ!昨日、東京駅のダンジョンに行ったんだけど!モンスターを倒してスキルを手に入れたんだ!その話がしたくて!」
「ダンジョン?モンスター?りっくんまたダンジョンに忍び込んだの!?危ないことしたらダメだって言ったでしょ!怪我!怪我してない!?」
ゆあちゃんが心配そうにオレの身体を触ってくる。
「大丈夫だって。そんなことより聞いてよ!そのスキルってのがさ!」
「そんなことってなに!?」
ひときわ大きな声をあげられ、ビクッとする。
「ゆあは!りっくんが死んじゃうかもって心配で!心配で!ダンジョンなんかに入ったらダメだよ!」
涙を流されて、少し頭が冷えた。正面で女の子座りしている幼馴染に向き直って正座に座り直す。落ち着いた声で、自分の気持ちを伝えることにした。
「……ごめん。でも、オレはうみねぇちゃんを助けるまで、やめる気はないよ」
「……ぐすっ……そんなの無理だよ……」
「無理じゃない。オレは高校生が負けたモンスターだって倒せたんだ。それに、スキルだって手に入れた。これからオレが東京駅ダンジョンを解放してみせる」
「……スキルってなんなの?」
オレが冷静だとわかったからか、ようやく話を聞いてくれる気になったようだ。
「そうそう!そのスキルなんだけど!元々は《群れの統治者》ってスキルで!今は翻訳されて《クラス替え》ってスキルになったんだ!」
「……スキルって、ダンジョン踏破者しか、もらえないんじゃないの?」
「それがさ!ユニークモンスターを討伐したとかで手に入れたんだ!とにかく聞いてよ!」
それからオレは、左腕のエニモで空中にモニターを映しながら、スキルの説明をした。
説明を聞き終わったゆあちゃんは、
「で、ゆあにこのクラスに入れってこと?」
「そう!ゆあちゃんなら入ってくれるでしょ!?」
「……イヤ」
「なんで!?」
「だって……ゆあが協力したら、りっくん、またダンジョンに行くんでしょ?」
また、泣きそうな顔で見つめられてしまう。
「……ゆあちゃんが協力してくれなくても、オレはダンジョンに潜るよ」
「……バカりっくん……」
「ごめん」
「……わかった。入ってあげる!」
意を決したように涙を拭いて強い顔をするゆあちゃん。
「ほんとに!?」
「でも!その代わり!これからはゆあも一緒に行くから!」
「一緒に行く?どこに?」
「ダンジョン!」
「え?……それは、ゆあちゃんには無理……」
「無理じゃない!ずっとアーチェリーだって続けてきた!ゆあも戦える!」
「でも……」
「なら入ってあげない!」
「そんな!?困るよ!」
「そーだよね!りっくんは、ゆあしかお友達いないもんね!陰キャ!」
「そそ!そんなことなしぃー!?ゆあちゃん意外にもたくさん友達いるしぃ~?」
嘘であった。嘘を言っている自分にダメージが入る。
「嘘ばっかり!学校でも休憩時間ずっと寝たふりしてるでしょ!友達いないから!」
「ち、ちち!ちげーし!なんで知ってんだよ!隣のクラスのくせに!バーカ!見た目だけギャル!リア充詐欺!」
「リア充詐欺ってなによ!ちゃんとリア充だもん!りっくんと違って友達たくさんいるもん!」
「うぐぅ……わ、わかった……こ、降参だ……」
オレは、苦しくなって両手を上げた。ゆあちゃんは満足げな顔をしている。
「じゃあ、ゆあがそのスキルに加入してあげる代わりに、ゆあもダンジョンに連れていくってことでいいよね?」
「わかった……でも、今まで通り、お母さんやおばちゃんには内緒だぞ?それと、しばらくは、ゆあちゃんのこと訓練するから。オレが合格を出すまではダンジョンに連れて行かない」
これなら、適当に修行つけて疲れたところを放置して、ダンジョンに潜っても言い訳ができるだろう。ふふふ……
「……なら、ゆあが入れるようになるまで、りっくんもダンジョン禁止」
「え?……いや、それは……」
なんという幼馴染だ。オレの心を読めるのだろうか。
「この条件を飲まないなら協力してあげない!バカりっくん!」
「わ、わかった……全く納得してないが、その条件を飲もう……ゴクゴクと……」
「なによそれ、バカみたい。それで?ゆあはどうすればいいの?」
「んー?どうすればいいんだろうね?」
そういえば、クラスに加入されるのってどうすればいいんだろうか。疑問に思いながら《クラス替え》スキルの画面を操作してみる。すると――
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