第3話 オタク、魔道具コーチングを受ける。
「あ、そうだ。ちょうどいいから、魔道具の説明から入りましょうか。その方が自然な流れで説明できるわ」
「ほいー、うーんなんかここが当たるなぁ……」
気の抜けた返事で、早くもソファーへ寝転がり始める優等生ちゃん。
白髪がサラサラと揺れ、制服が乱れるのも構わず、寝心地のいい姿勢をモゾモゾと動きながら探り出す。
「
「へー」
そこへ、
「って言うかさ、賢者さん」
「何かしら」
「もしかしてだけど、さっきから魔法を詠唱無しで使ってる?」
「ええ。と言うより、あんなのを今でもやっている
「何それすごい」
「私は
「
「うん。へー、そうなんだ、って感じ」
優等生ちゃんはソファの上で足をバタバタさせつつ、相槌を打つ。
「てか、おもろー。楽でいいね」
「あなたは
「ああ……なんか、あれを思い出すな。『数の悪魔』」
「なぁに? それ」
賢者は帽子を直しつつ、聞き返す。
「悪魔が人間界にやってきて、数学が出来なくて悩んでる冴えないショタに、数学を教えてくれるんだよ」
ソファーの上で、大仰に身振り手振りをする白髪。
「ただ、教え方が奇抜でさ。うさぎをめちゃくちゃに召喚してきたり、他にも色々悪魔みたいなことしてくるんだけど……ふふ、思い出したら笑っちゃうな」
「そうなのね……」
「面白い本だったなぁ。アレ」
※読者向け参考用リンク(ブックライブのレビューに飛びます):https://booklive.jp/review/list/title_id/1157446/vol_no/001
「確かに、体験した方がわかりやすいものね。なら、そうねぇ……」
するりと賢者が前へ手をかざす。
「いや、僕は普通に、論理的に説明された方が理解出来……。ああ、即時詠唱だ、コレ……」
ピョコン、と。
一匹のうさぎのような生物が現れる。
薄い緑色の毛並み以外は、見た目はほとんどうさぎだ。
「これは、ヤンヤーガよ。種族はアイミナ属」
「こんにちは、ヤンヤーガさん」
優等生ちゃんがそろそろとソファーから降りてきて、ヤンヤーガを撫で始める。
ヤンヤーガはフンフンと鼻を鳴らし、目を細める。
「なんか、うさぎと言うよりは猫っぽいかも……?」
「そうかもしれないわね。おそらくあなたの世界で言うところのうさぎの見た目をした、精神性は猫の
「合ってると思う。多分」
「ヤンヤーガは、主に私たちクリンド属や、あなたのようなミリー属の
「く、食えんの?」
「ええ、美味しいわよ。種族については、後で詳しく説明するけど……」
言いつつ、
知力<インテリ>に長けたクリンド属。
精神性<メンタル>に長けたミリー属。
攻撃性<ファイト>に長けたメレイア属。
生存<イデア>に長けたアイミナ属。
「この四種族は、基本的な種族だと思っていいわ」
「ほえー」
ヤンヤーガを撫で続ける優等生ちゃん。
「あとの何種類かは例外だから、必要になったら、その時詳しく説明するわ」
「はーい」
優等生ちゃんは、ヤンヤーガの毛のフサフサさ加減に、若干の気を取られつつも、返事を返す。
「
「なるほど、ペットか」
ヤンヤーガが耳をピク、と震わせ、それを見た優等生ちゃんが「おお、反応した(笑)」と呟く。
「
「なぜ」
ヤンヤーガからようやく手を離し、
「ミリー族の使役は、特定の
そう言われて「あぁ……」と若干、苦笑いをする優等生ちゃん。
その隙に、ヤンヤーガが優等生ちゃんのリボンを、てしてし、と殴る。
「メンヘラだからか……確かに、言うこと聞かない時のメンヘラは、何をするか分からないから、厄介だもんな。わかるよ……」
優等生ちゃんは制服のリボンをつい、つい、と引っ張り、直す。
それを見て悲しかったのか、「キュウ……」と鳴き声を出すヤンヤーガ。
「メレイア族は、
「ふーん」
再びヤンヤーガを撫で始める優等生ちゃん。
「つまり、そいつらは非効率なんだね」
「ええ。アイミナ属を使うことが多いのは、彼らは小さい子や、すばしっこいものが多いから」
「キュイィ……」
言葉に反応したのか、それとも撫でられて気持ちよくなったのか、目を細め、鳴き声をあげるヤンヤーガ。
「……あ、そういうこと!?」
急にテンションが上がり始める、コスオタ。
理解出来ることが楽しいのだろう。
オタクは知的好奇心の塊である。
「生存が得意って、何も長寿だけじゃないのか……」
「そうよ」
ふふ、と金髪碧眼の
服の袖をまくり、ジャラリ、と
「それから、クリンド属の
「ただしクリンド属は、使役する側にもそれなりの
「へー。色々あるねぇ」
「さてと……ここまではいいかしら? 質問はある?」
「大丈夫! たぶん」
「素直でいい子ね、さすが、"優等生ちゃん"と名乗るだけはあるわ」
「えへへー」
ヤンヤーガを抱え、ニコニコと笑う優等生ちゃん。
「次は、いよいよ魔法の基礎、マテリアルと属性について教えるわね」
メンヘラオタク「やったあ異世界転生だあ!僕、魔王になります!ウオオ!」 筆屋富初/Hituya Huhatu @you10say
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