16.
二人の間に立っていたジルヴァが双方の顔色を伺うように、顔を左右に動かして落ち着かさなそうにしているのを、「ほら、ジルヴァ」と手を広げてこちらに来るように促した。
と、すぐに腕の中に収まってくれたジルヴァの頭を撫でてやると、安心した笑みを見せていた。
その表情を見て、緊張していた身体が和らいでいくのを感じた。
「⋯⋯おれ、あのクソババアと話してくる」
「⋯⋯は⋯⋯」
不意に立ち上がった奴に思わず声が上がった。
「話、しても意味ないんじゃ⋯⋯」
「そんなの分かりきってる。けど、また家出っていう手段は使えないんだ。話をして、無理やりにでも納得させるしか他はないだろう?」
「そうだが⋯⋯」
話をしても意味がないと、警察官と共に来た時に分かっているはずだ。
さっき祥也だから輪にかけてというのもあるが、匡であっても一方的で自分の考えを意地でも曲げないような相手に、そんな方法をしても無意味だ。
だが、他に方法なんて。
「匡」
横切ろうとする弟のズボンを掴んだ。
「俺が⋯⋯俺が話をつけてくる」
やっとの思いで言うと、匡は驚いた顔を見せた。
「何言ってんだ、兄貴! それこそダメだろっ!」
「⋯⋯あの人が家に来た時分かっただろ。俺のせいで、悪影響を与えたって。だから、お前が話をつけに言っても意味がない」
「だからって、兄貴が行っても同じだろ!」
「俺のせいだって仕向ければいい。そうしたら、もしかしたら⋯⋯」
「それでもダメだっ! 兄貴にこれ以上は⋯⋯!」
人の肩を無遠慮に掴んで、間近に迫るいまにも雫が落ちそうな潤んだ瞳。
こんなにも人のことを想って、縋りついてくるとは思わなく、虚を突かれた祥也だった。が、小さく笑みのような表情をした。
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