15.

「ジルヴァも来てくれたんだな」

「はい、しょーやさまがいてほしいっていうので⋯⋯」

「仕方ないことだった。本当はジルヴァのことを巻き込みたくはなかったんだが⋯⋯」

「⋯⋯あー⋯⋯そうだよな。ここまでなるって予想はできたはずなのに、上手く回避ができなかった」


地べたに座った匡が目線を下げたまま、力なく笑っていた。


「兄貴、おれのワガママであんなヤツに叩かれたんだろう⋯⋯?」


それから、不意に顔を上げた匡の顔にギョッとした。

その目には涙を浮かべている。

こんな顔を向けられる日が来るなんて。


「⋯⋯らしくもない」


今度は祥也の方から目線を外し、ぽつりと言う。


「⋯⋯で、来たのはいいが、お前はこれで満足か」


そう訊くと、匡は少しの間の後、「⋯⋯分からない」と小さく言った。


「兄貴達がこうして来てくれても、結局はこの状況は変わらない。もうアイツの思う通りにしたくない! けど、どうしたら⋯⋯なあ、兄貴。おれはどうしたらいい?」


どうしたらいい、と言われても。

そのような相談を友達と呼べる間柄すらいなかった祥也に、ましてや憎くてたまらない相手からされるとは思わなかった。

それにしても、この状況の的確なものは何なのか。

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