14.

誰も口を開ける雰囲気ではない中、しばらく歩いていると、住宅街のある一軒に向かっているのに気づき、そして、その家が目に映った時、立ち止まりそうになった。


ただ血の繋がった家族という形で住まわされていた大きな監獄に、終わりの見えない拷問のような日常が走馬灯のように駆け巡り、酷い頭痛を覚えた。

本能的にここに行ってはならないと訴えている。


「⋯⋯しょーやさま⋯⋯?」

「⋯⋯悪い。何でもない」


力なく笑いかけると、遠くの方で急かす声が聞こえ、「行くか」とジルヴァにいつの間にか立ち止まっては、震える足を無理やりにでも動かして歩を進めた。

玄関を潜った途端、「匡は部屋にいるから」とだけ告げてさっさとどこかに行ってしまった。

放心していたのも束の間、その足で二階へと向かった。

恐らく匡の部屋だと思われる扉を、叩くのを一度は躊躇していたが、控えめに叩いた。


「⋯⋯」


しばらくしても部屋の主らしい人が開けてこないことから、間違えたかと隣の扉へと足を向けた時。

ガチャと、開かれる音が聞こえ、顔をそちらに向けた。


「兄貴!? え、どうしたんだよ! なんで?」


薄く開けていた弟と目が合った瞬間、声を上げ、バッと大きく開いた。


「なんでって、お前が来るようにって⋯⋯」

「てか、そのほっぺどうしたんだよ! あいつにやられたのか?」

「⋯⋯大したことじゃない」

「ともかく入れっ!」


半ば強引にジルヴァと共に入れられる。

六畳程度の広さに学習机らしきものと、ベッドと呼ばれるものが部屋の大半を占めていた。

祥也にはそういうきちんとした物を、もっというと部屋すら与えられなかったために、その扱いの差を突きつけられて、この部屋から今すぐにでも逃げ出したくなった。

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