13.

あの後、家に連れ戻した匡がボイコットをしているらしく、祥也を連れ来なければ部屋を出ず、なんなら、このまま死んでやると言い出しているらしい。


「なんで⋯⋯」

「なんででしょうね。アンタが悪いことを教えたんでしょ」

「そんなわけ⋯⋯。⋯⋯そっちが自分の理想を押し付けるから、匡が辟易──」


パンッと何かが叩くような音が間近に聞こえた。

それが段々と頬が熱くなっていくにつれて、恐ろしい剣幕の母が叩いたのだと分かった。

痛い。


「アンタがあの子の名前を気安く呼ぶんじゃないわよッ!」


耳鳴りのように嫌な声でそれから酷く罵る言葉を捲し立てていた。


痛い。


震える手で叩かれた頬に触れる。

その耳障りのような罵声が遠く聞こえてきた時、もう片手に触れていたものに気づき、引き戻される。

気づいた時には、しゃがんで繋いでいたジルヴァのことを覆い被さるように抱きしめた。

これ以上、ジルヴァにはこんな汚い言葉を聞かせたくないと、より抱き込む。


「⋯⋯ほら、何してんの、行くわよ」

「⋯⋯」


どこへ、とつい言ってしまいそうになった。

また余計なことを言うと、いつ終わるか分からない罵声をまた浴びることになる。

小さく返事をした後、立ち上がりながら、「⋯⋯ジルヴァ、悪いがまだいてくれないか」と言うと、不安げな顔を見せつつも、小さく頷いた。

自分がいないと帰るのも困難であるから、ジルヴァには選択肢はない。

酷なことをさせていると、さっさと先に行く親とも思いたくない人の後をとぼとぼと歩いた。

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