9.
手を繋いでいる小さな相手が様子を窺うような顔をしているのが視界の端でちらちらと見える。
オーナーの方はあれ以降話題にならず、一方的な気まずさはあったが、誤魔化すことはできたが、まだこっちの問題は片付いていないことを自覚させられる。
「⋯⋯ごめん。俺、ジルヴァに気を使わせているよな。⋯⋯それに、オーナーにも。いい大人なのに、小さいお前の見本にもなれてない」
だから、ジルヴァの方へ顔は向けているが、目線を逸らして、まるで独り言のように言った。
どんな話をすればこの場を紛らわすことができるのか。どう考えても結局口に出したのは、返すのに困るような言葉で。案の定、こんなことを言われて、ジルヴァは戸惑っているような反応をしていた。
ほんの少しでも気の利いた言葉でも言えないものか。
自分が嫌になると、現実逃避するように顔すらも背けようとした時だった。
「そんなことはありません! こうやってぼくのことをきにしてくれました! オーナーさんが、しょーやさまのことをきにしてくれているように!」
繋いでいる手もぎゅっと握りしめて、しっぽを逆立てさせ、力強く言う言葉は子狼なりの精一杯の励ましだと気づいた時、耳をぴんと立てたその頭を撫でていた。
ありがとう、という言葉と共に。
瞬間、緊張が解れたかのように隠しきれない照れ笑いを見せた。
本当に素直な反応を見せる。
やや目を細めて笑っているような顔をした。
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