7.
このまま終わってもいいかと思っていた祥也は客を見送っていた時、オーナーが口を開いた。
「匡君、よくここに来ては久須君の話をしてくるんですよ。久須君が自分の料理を食べてくれない、本当は身なりを整えればモテるのにやろうとしなくてもったいないとか。確かに、久須君がこのように男前になるとは、何年も一緒に仕事をしてきたというのに、私も見落としてましたねぇ」
そう言って、まじまじと見てくる。
今日も出勤してきた際、いつもよりも見てくるなとは思ったが、やはり気になっていたのか。
それよりも匡が何故、わざわざここまで来てそのような話をべらべらと話しているのか。
夏祭りがあるからと勝手にシフトを変えた時から変だと思っていたが、なるほどこういうことだったのか。
「⋯⋯すみません、迷惑をかけてしまって」
「いいんですよ。匡君もついでにと言って、毎回何かと買ってくれるので、ウィンウィンです」
「はぁ⋯⋯そうですか⋯⋯」
結果としてこの店の利益の一部になってくれているのなら、いい⋯⋯のか?
「そういえば、この最近匡君を見かけませんね。バイトか部活か忙しいんですか?」
「それは⋯⋯」
母親とも思いたくない人に半ば無理やり連れて行かれたから、その後のことは知らない。そもそも、勝手に人の家に上がり込んできたただ血の繋がっている程度の間柄であるから、アレが普段何をしているのか知らない。
何も知らない。知ろうとしない。
「⋯⋯まぁ、そんな感じです」
「学生さんは忙しいですね。ですが、今しか味わえない楽しみがあっていいですね」
「⋯⋯そうですね」
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