第6話 何処に逃げる?
線路上にいる人々をかき分け、四ノ宮たちは走りに走った。
高架橋駅を下り、迫る津波を回避できるよう垂直避難を呼びかける。
「早く高架橋駅に駆け上がるんだ!」
「高いところに上れ!津波が来るぞー!」
数分後、海が町中に出現した。
それは静かに音もなく…。
「四ノ宮さん、
美豆倶胝の言う方向に四ノ宮が目を向けると、小学生くらいの女の子が自分より幼い男の子を庇うように抱き抱え、座り込んでいる姿があった。
津波は、まだ目線に入ってきていない。
「美豆倶胝、急ぐぞ!」
「はい!」
四ノ宮たちは子供達が座り込むバス停に向かって全力疾走する。
女の子がそれに気づくと叫んだ。
「助けて!津波が!津波が!」
四ノ宮は、その言葉にも同様せず助けに走る足を緩めない。
美豆倶胝が、女の子の叫ぶ方向に歩を緩めながら振り返ると、高層ビルの真後ろに同じ高さの水の壁が見えた。
その瞬間、美豆倶胝は死を覚悟した。
それでも防災のプロとして人命を救う気持ちにブレはない。
四ノ宮が子供達のもとに辿り着き、美豆倶胝もそれに続いた。
無情にも津波から逃げて高架線路に上がる余裕はない。
「四ノ宮さん、もう間に合わない!」
「美豆倶胝、男の子を抱き抱えて彼処まで走れ!」
四ノ宮が指し示したのは地下だった。
都市再生緊急整備地域の新潟県は都心地域開発ガイドラインによりオフィスビルが立ち並ぶ都市へと様変わりした。
ビルとビルの間には地下街があり、地上とのコンタクトも容易となっている。
「・・・」
美豆倶胝は、津波に飲み込まれてしまうと思ったが、四ノ宮の経験則を信じた。
四ノ宮は、明らかに男の子より体の大きい女の子を軽々と抱き抱え、男の子を抱えた美豆倶胝と共に地下街入口へと走った。
「四ノ宮さん!地下が水没したら我々は一巻の終わりですよね。」
美豆倶胝は、四ノ宮の考えを信じながらも状況的にその思考に納得できないでいる。
「ああ、地下街は冠水するだろうな。だが、あそこだけは浸水しない。いや、そう思いたい。」
「あそこって?」
迫り来る津波の轟音が大きくなり、美豆倶胝の質問はかき消された。
地下に入った四人は足元に水が溜まっていることに気付いた。
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