ペットボトル

@end_game

ヤニ臭いホテルにて

私はトイレに座りながら、ちょうど半分ほどを飲んだペットボトルを見つめた。

この水はいま泊まっているこのヤニ臭いホテルのものだ。このホテルが憎い。あの中年ホテルマンは私を一瞥した後に、ホテルの空室チェックもせずに部屋を変えられませんと言い放った。まあいい。


そんなことを思い出しながら、このペットボトルの水は半分入っているのか半分空になっているのか、という下らない疑問が頭に浮かんだ。しかし、このペットボトルに入っているヤニ臭い空気も存在の価値という点では水と同じなのだと思う。水とヤニ臭い空気のどちらに存在としての価値があるかなんて、人間には決められない。人間が決められるのは、人間の生命にとってどちらの方が価値があるか、ということだ。


ということは、このヤニ臭い部屋で過ごす時間というのも、神が与えた境遇なのかもしれない。

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