第7話 犯人って一体誰なんだ?
僕たち三人は一気に怖くなって、思わず揃って肩を震わせた。やっぱり、幽霊がいないって分かっていても心の中では怖がっちゃうなぁ……。
それにしても、仮に幽霊がいたとして、一体どうして本の順番をバラバラにして行くんだろう。
それが面倒なのは、人間にとっても幽霊にとっても変わらないことのはずなのに。
きっとそうした方が都合がいいからやっているんだろうっていうのはわかるんだけど。その、理由がさっぱりわからないや。
「綾森さん、成宮さん。何か、わかりそうですか?」
秋野さんが僕たちの顔を交互に見ながらそうやって聞いてきた。だけど、さすがの僕もピンとこなかった。
う〜〜〜〜ん、すっごくモヤモヤするなぁ。なにか引っかかる気はしてるんだけど……。
「今はまだ、何も掴めてないな……」
「さっき、放課後は誰もこの図書室に来なかったって言ってたわよね?」
僕の言葉を途中で止めるようにして、沙知
が彩森さんに向かってそう尋ねた。
「……はい、そうです。あなた達の他には誰も、ここに来ていません」
「そう、それなら私、犯人が誰だか分かったわ」
「え?」
「ええ!? 沙知、本当なの?」」
秋野さんもびっくりしているし、僕は彼女よりもっとびっくりして沙知の顔を見つめた。でもいつもみたいに弱気な顔じゃなくて、真剣な顔つきだ。
もしかして本当に本当に、この謎が解けたのかな? 僕ですら、わからなくてお手上げだったこの謎を……。
「沙知、犯人って一体誰なんだ?」
僕は問いかける。沙知の大きくてくりっとした瞳が、さらに大きく見開かれてキラリと瞬いた。
「それは——秋野さん、あなたよっ!!」
「…………」
沙知はピシッと先まで伸ばした人差し指を秋野さんに向けて、そう言い放った。秋野さんはびっくりしたのか、目を見開いて押し黙っちゃったみたいだ。
「ちょ、ちょっと沙知? 何言ってるの?」
僕は慌てて彼女に問いかけたけど、彼女は何もおかしくないみたいな顔をして僕を見る。
「だって、それしかないじゃない。私たちの他に誰も来ていないって言ってるんだから、幽霊もいないはずでしょ? そしたらこの空間にいるのは、秋野さんだけになるわ」
「い、いや、そうかもしれないけど……!! じゃあ、秋野さんは一体どうしてそんなことをする必要があったのさ!?」
「さあ。それは本人に聞いてみないと分からないわ」
沙知は首を傾げて、再び秋野さんの方に向き直った。秋野さんはまだ、何も喋らずに固まったままでいる……。
と、思ったら。
「そういえば、探偵さんはどちらでしたか?」
秋野さんは急に表情をすっきりとさせて、そんなことを言った。どうして急に、そんなことを聞いてくるんだろう。
「一応、沙知が探偵だけど」
「なるほど、あなたが名探偵シャーロック・ホームズでしたか。見事な推理でした」
「み、見事? それってつまり、沙知の推理が当たってるってこと……?」
「だいたいはあっています。その本棚の順番をバラバラにしたのは、この私です」
僕たち二人は顔を見合わせる。一体どうしてそんなことを……って、僕たち二人とも心の中で思っていたはずだ。
「あなたたちが聞きたいのが動機であろうことは分かります。ですが少しややこしいので、順を追って話をさせてください」
秋野さんは少し改まって、そんなことを言うのだった。
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