そしてこの事態を速やかに神さまに言伝ことづてするよう、主導者のカササギに指示を出した。


その直後のことーー天の川の畔に、なつかしい顔が舞い降りた。



アルタイルとベガである。


まさしく銀河の中天で煌めくアルタイルは、薄紫色の、刺繍のうつくしいスリーブを振り 乱して嘆いた。


「なんということだ、やっとこの日が訪れたというのに・・・!

 おお、最愛のベガよ。この声がきこえるかい? これでは、きみのぬくもりを感じることもできない!」


川をはさんだ西岸で、ベガも眩暈がするようにふらふらと額に手をやる。宙にたゆたう被帛(ショール)が、かのじょのからだを支えてくれている。


「どうして運命はわれわれの仲を引き裂くのでしょうか。この日のために、わたしたちは身を粉にして働いたというのに。

 ああ、アルタイル・・・あなたの声がきこえます。わたしの声もきこえますか? 目に見える距離にいながら、手を触れることもできない。

 ただ愛し合っているわたしたちに、どうしてこれほど陰惨いんさんなことができるのでしょう。辛くて苦しくて、胸に穴が空きそうです。これほど切ないおもいをするのなら、死んだほうがいいのです」


そうして声にならない声で泣きはじめてしまう。


顔を覆う指のあいだから涙がポタッポタッと垂れ、それは氾濫した天の川に混じって流されることで、きらびやかな光の筋になるのだった。


ベガの涙を見た瞬間、デネブは心の中で決断するーーじつは、かれは生涯でいちどだけ、白鳥になることができるのだった。


それは神さまから授かったちから・・・とてもおおきな姿で、氾濫した天の川のうえで羽をひろげたら、橋の代わりになるだろう。



瞼をとじて合掌の構えをとる。そして、ゆっくり、ゆっくりと精神を集中させるーーすると、みるみるうちに燦然さんぜんとかがやく光の帯がどこからともなくあらわれ、デネブのからだを包みはじめた。それは人間のかたちをしたお日さまのように、この銀河でいちばんあたりを照らす、希望の光だった。



デネブは揺るがない心で叫ぶ。


「わが名はデネブ。神よ、ここに宣言する!         ぼくを白鳥とするがいい!」


「デネブさま! いけません、それだけは・・・っ」


カササギたちは金切り声をあげる。かれがこれから行おうとしていることの結末を知っていたから。

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