Ⅲ
果てしなく広い宇宙の、とある一点。ちいさな渦がまわりの空間を歪めている。
たとえ二千光年の距離だろうと、ワープホールなら瞬きの速さで行けるーー迷うことなく飛び込むデネブ。
その瞬間、眼を焼きつけるような光の照りかえしに気を失いかける。
(くっ、いつまでたってもこの時空間酔いというやつは厄介だ。でもすぐに慣れたぞ。
やれやれ、しかし、天の川に行くのは相当ぶりだなぁ、地球のように変わったりしてるだろうか)
そう期待に胸をふくらませたのもつかの間、天の川銀河に到着したとたん、思わず目を疑う光景がひろがっていた。
雨の影響で天の川が氾濫していたのだ!
いつもなら静寂のとばりに包まれた幻想的な運河を、まるでふたりの逢瀬を阻もうとばかりに激流の滝となってゴゴゴウ、ゴゴゴウと流れていく。
「ど、どうしよう。こんなに水かさが増したら、橋を架けることができない!」
とそこへ、水色がかった透明のカササギたちが慌てたようすで集まってきた。
主導者らしき1羽のカササギが、代表となって口を開く。
「これはデネブさま、申し訳ございません。わたくしどもが橋を運んできたときには、この催涙雨で溢れておりまして。
どうにかしようにも、われわれは恋することしか能のない、仮初めの生き物です。毒にも薬にもならぬ
すべての責任はわたくしにあります、いかなる処罰もお受けします」
そうして話をしている途中から、肩をぷるぷるさせて泣きはじめてしまった。それを見て、まわりにいた仲間のカササギたちも哀しみに暮れてしまうのだった。
茫然としていたデネブだったが、かれらの涙を見て、表情を和らげる。
「おまえたちは何も悪くないよ。これほどの雨を降りやませるのは、神さまにだって容易ではないだろうよ。
ここまでよくがんばってくれた。ありがとう。おまえたちは
あとは任せておくれ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます