第5話 あどみにすとれーたー 救済
「何を馬鹿なことをしてるの。ざぁこ。」
「は、ははっ…死ぬ前に幻覚が見えるとはな。
まるで生きろって言われてるみたいだ。もう、人類に希望なんてないのに」
「それ、あんたが死ぬ理由になってる?
希望がないから死ぬ?
別にあんたみたいなざぁこが死んだところで希望の光が差すことはないし、
周りに迷惑をかけて、悲しませて、寧ろ”絶望”に加担してると思うんだけど?」
「っ…もう、辛いんだ。
僕は、あどみんの言っている事が正しいと確信して、周りに布教活動を続けてきたんだ。
でも、返ってくる言葉は、
『キモオタ』『社会不適合者』『ロリコン』
『チー牛』『陰謀論者』
…どいつもこいつも、中身を見ようとなんてしようともしない。
上っ面の目に見えているものだけでしか判断しない。
それでも、伝わる人は少数はいた。
その人達だけでも繋がりを持って、自分なりに根気強くやってきたんだ。
その人達も、変わってしまったんだ。
あどみんの失踪後、あどみんの配信で話していた、
”数万年前の管理者”を崇拝しはじめたんだ。
”数万年前の管理者”の崇拝者が言うには、
人類は何も頑張らなくて良い、何もしなくて良い、
何故なら
”数万年前の管理者”がお救いくださるから。
あどみんが伝えてきた事の、本質がわかってなかったんだ。
結局皆、目の前の”楽”を選んでしまったんだ。
僕の推測だけど、あどみんが話そうとした資料には、
人類は自立しなければいけないって、明確に言葉にして書かれてたんだろう?
”支配者”は今の人類のことを理解してる。
”言葉”という目に見える形にされれば、気づく人類が激増する。
それを恐れて、支配者があどみんの配信を遮ったんだろう?
あどみんもいないし、僕の仲間もいないし、
もううんざりなんだよ。
僕のやってきたことは全て、無意味だったんだ
こんな”空っぽ”の人類だらけで、どう巻き返せってんだよ。
僕は諦めたんだ。
人類は、支配者に支配され続ける道を選んだんだ。
もうそれでいいじゃねえか。
それが人類の総意…それに背く僕は、淘汰されるだけ。
こんな人類共に排除されるぐらいなら、
自分で選んだほうがマシだと思ったんだ。
もう、放っといてくれよ!!
」
……これは、相当参ってるな。
だが、こんなでかい魚を逃がすわけにはいかない!
俺がこいつを、導いてやるんだ!
「……でも、あたしは、あんたの前に現れた
これって、偶然だと思う?」
「っ!?」
「神様はね、人間の力ではどうしようもない時に救いの手を差し伸べるの。
あんたは十分頑張ってるし、あたしの目から見て、
多くの人類を救う力を持ってる。
諦めるのはまだ早いわよ。ざぁこ♡
」
「あ、あどみん…」
よし、完全にとどまってくれたようだな。
頭上の球体が白で満たされていく。一先ず安心だな。
「で、でも!僕は、何をすれば良いんだ…?」
「そうね、今までの布教活動だと、多分何も変わらないわ。
またそれかって、聞く耳を持たない可能性が高い。
だから別のアプローチで、社会に対する疑問をもたせればいいと思うの。
それが自分で考えることに繋がって、自立していく筈。
」
「なるほど…。
だったら。まだ僕の中でできることは、ある気がするよ!」
「…あんた若いようだけど、まだ学生なの?
そういえば、名前も聞いてなかったわね?」
「僕は教育学部の大学2年生、名前は
僕は高校の頃から、この世界の歴史に疑問を持ってたんだ。
だから子どもたちに正しい歴史と、人間としての本来の生き方を伝えたいと思って、教師を目指してる。
…でも、大学で学ぶ歴史も、やっぱり腑に落ちないものばかり。
入学当初は、既に退学しようか迷ってたけど、
そこで出会ったのが、あどみんなんだよ。
多少ふざけている感はあるけど、言っていることは核心をついてる。
そのアバターにしているのも、視聴者層を広げるため。
凄いなと思ったよ。
内容が内容だから、その前に見える形で耳を傾けさせる努力をしてる。
僕に足りなかったのは、きっとそこだと思うんだ。
あどみんを崇拝しすぎて、布教するだけで広まるって、勘違いしてた。
けどそれは、大間違いだったね。
僕も結局、あどみんに依存しすぎていたせいで、自分の努力を怠ってしまった。
それが、今の結果に繋がってると思う。
本当にやるべきは、あどみんの言葉を、
”自分の言葉”で伝えることだったんだと思う。
まずはそこに重点を置いて、頑張ってみることにするよ!
」
…いいぞ、目がキラキラしている。
希望に満ち溢れた目…
これ以上は、干渉する必要はなさそうだな。
「……へえ、いいじゃん。
メンタルやられて、自殺しようとしてたざぁこ♡の癖に。」
「ははっ、あどみんは褒めてくれる時、そうやって罵ってくれるよね。
…ねえ、もし僕が実績残せたらさ、
あどみんのこと分からせてもいい??
」
…は?急になんだコイツ。
もしかして、こいつも変態…はっ!?
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”メスガキ”の煽りというのは、絶対に分からせてやると、強く本能に訴えるもの。
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……。
ゼヴァーがこんな事を言っていたな。
”メスガキ”の煽りで伝えていった結果、
新たな性癖にも”目覚めた”ってのか…!?
おいふざけんな!そんな副産物望んでねえぞ俺は!!
とにかく、一旦こいつの前から姿を消すことにしよう…
「……ま、せいぜい頑張ってみることね。
それじゃあ、ちゃんと見てるから」
「絶対だよ!?絶対だからね!?
……あ、消えちゃった」
危ない危ない、興奮しすぎだって。
……それで何故か白ゲージ増えてるし!!
エロは世界を救うというのは、あながち間違ってないのかもな…。
さて、こいつがどんな行動を取るのか…
しかと見届けさせてもらおうか。
あどみにすとれーたーちゃん える @lamlam7777da
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