【ヤチホコ】と【スサノオ】
「……晴さん、【ヤチホコ】と【スサノオ】って?」
「はい、【ヤヲヨロズ】には、領地を治める【スサノオ】様がいらっしゃいます。その方に仕える【ヤチホコ】様と呼ばれる武将達が存在し、そして、その武将の下につき、前線で戦う者達を【サルタ】といいます。わたし達は、戦いませんが身分は【サルタ】と同じなんです」
なんと時代錯誤な身分制度。
まぁ時代錯誤なんて、前の世界と比べるのはおかしいけど、そういうことが、レイメイの言っていた、生きていくのも大変ってことなのかな……
「では、税というか、納める物はどうするのです」
「【税】で大丈夫ですよ。職種によっても異なりますが、金銭やお米ですね」
「なるほど……」
年貢だな、完全に……となると俺も自分らしい職業を見つけなければならないな。だがどうしよう、働いたことが、いっさい無いので、どうやってお金を稼ぐかが分からない。
サポートは?サポートはどうした、助けてレイメイさん……。
「それで、晴さんが住んでいる【クロズミ領】という領地は、税収厳しい?」
「他の領地もさほど変わらないと思います。ですが今は街が大変で……原因不明の体調不良が街中で流行っていて、【税】の徴収までに良くなればいいんですが……せっかく、旭さんも【クロズミ領】に来てくれたのに……おもてなしも、あまり出来ないかもしれません」
「そんなのは、全然いいよ。……だけど大変だね、家族とか大丈夫?」
「父が少し咳をしてますが、今のところ大丈夫そうです。ひどい方は嘔吐に下痢などと、辛そうです。亡くなる方も……」
「――え?それはひどい……」
咳、嘔吐、下痢かぁ……亡くなるほどひどいって、コロナか?インフルエンザ?とにかく気をつけないといけないな。
「ですが、まもなく心配も無くなります。スサノオ様である【黒住玄徳】様が何かしらの対策を立ててくれるそうなので」
「へぇ、黒住……玄徳!?」
旭は、急に立ち止まった。え?玄徳って……。
「――どうかされました?」
振り返る
玄徳先生は、
クロズミ領の【スサノオ】……黒住玄徳には会う必要があるかもしれない。
旭は、「なんでもない」と晴に告げると、笑顔をつくり再び歩き出した。
旭は、隣を歩く
着物のような服を着ているのが新鮮だ。すごくオシャレに見えるけど、これが【ヤヲヨロズ】では当たり前なのか?
よく似合っている……そんなことを思いながら……思い出しながら、見てしまう。
しかし……和服だと夏祭りを思い出すなぁ……
♦︎♢♦︎♢♦︎♢
「あっちゃん、お待たせ!」
「……うん?全然待ってないよ。今来たところ」
「ふふ、定番のセリフだね」
「じゃあ……花火が始まるまで少し歩く?」
「ぶぅ、ほかに言うことないの?」
「晴のほうこそ、定番のセリフだね。浴衣とても似合ってる。可愛いよ」
「かっ可愛いなんて……そこまで求めてなかったのに……あ……ありがとう」
「いや、そんなに照れられたら、こっちまで恥ずかしくなるんだけど……」
「でも、良かったぁ。あっちゃんが一緒に来てくれて、花火見たかったけど、一人じゃね……」
「……友達出来ないのか?」
「高校生活始まったばかりだよ!これから、これから!」
「もう4か月くらい経ってるぞ。大丈夫か?」
「あっちゃんが、わたしとクラス違うのがいけないだよ〜」
「それは、俺のせいじゃないだろ。イジメとかなら先生に相談しようか?」
「ううん、違うんだよ。言ってなかったけど、入学してすぐに告白されたの」
「――え?マジで……」
「あれ?もしかして動揺してる?」
「なっなっ……ぜっぜっ……全然、どっ動揺してないし」
「あっちゃん……信じられないくらい動揺してる……。それで、もちろん断ったの。よく知らない人だし、そしたら……次の日から、クラスの子に話しかけても、よそよそしいというか、無視まではいかないんだけどね。移動教室とかも一人になっちゃった」
「そいつが嫌がらせしてるってこと?」
「それが原因かどうか、わかんないけど……」
「そいつの名前は?」
「……あっちゃん、何もしないよね」
「しないよ。晴が困るようなことは絶対しない」
「ホントに?約束出来る?」
「ああ、しない。約束だ」
「名前はね……
「……カゲヌマ建設の。たしか一人息子だったよね」
「はい!この話はおしまい。今日はせっかくの夏祭りなんだよ。楽しもう〜!」
「そうだな、晴のストレス発散に付き合ってやるか」
「へへへ、よろしく〜!……あっ!もうこんな時間?場所取りしないと始まっちゃうよ!急いで、あっちゃん!」
「ちょっ、ちょっと……やめて、腕を組むとか恥ずかしい!せめて手をつないで……」
「ふふふ、手はまた今度ね!」
「――!勘弁してくれ」
♦︎♢♦︎♢♦︎♢
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