7.リンパマッサージ


「寝る前にリンパマッサージをすることで、睡眠の質が高まるんだよ。余分な水分や疲労物質が排出されるから、むくみまで改善されるんだよー」


(夏休みのまた別の日。久寝の部屋にて)

(ベッドに飛び込み、うつ伏せになる久寝)


「説明終わり! 早速マッサージして〜。何となくでいいからさ」


(グッと親指を立てて自身の背中を指す久寝)

(続いてベッドに乗り、久寝に跨った)


「痛く、しないでね……気持ちぃくらいにしてね」


「あぅっ……そうそう、ちょうどそのくら、い……──」



(時計の針が進む音)

(30分後、アラームの音が鳴る)



「──んぁ、あれ……おはよぉ……マッサージしたのぉ?」


「すぐ寝落ちした? いやいやそんなまさか〜」


「……っすぅー、記憶、ないや。えぇ!? 何で起こしてくれなかったの!?」


「ね〜ぇ〜、もう一回して? マッサージ〜」


「また寝ないよ! まぁ、オチは見えてるけど。君は枕だけじゃなくてマッサージ機にもなれちゃうなんて最強だね」


「そんな能力あったらさ……私が寝てる間、えっちなことし放題だね。いくら恋人同士だからといってね〜」


「……そういうのは起きてる時にしてほしいし……」


「え? 寝顔が子供みたいでそんな気起きない、だってー!? むぅー! 何よそれー!」


「そういうところ!? どういうところ!?」


「だって仕方ないよ。君といると安心しちゃって眠くなるんだもん!」


「あ、じゃあ逆にさ、私が君をマッサージしてあげようか! いつも勉強で疲れてるでしょ? たまには君が寝ちゃいなよ〜」


「ほら、うつ伏せになって」


(ベッドが軋む音)


「よぉ〜し、まずは背中からね」


「……お、結構硬いねー。結構力入れないと深いとこまでは、いか、ないよねっ!」


(布団をタップする音)


「やっ……ちょっと暴れないの!」


「君は真面目だから、いつも背中に力入ってる。もっとリラックスリラックス〜。君といると私も安心するように、君も私の前ではもっと力を抜いて欲しいな」



「はいオッケー。次は肩だね。あぁっ、ちょっと硬くしないでよっ! 力入れてたら意味ないでしょ。じゃあいくよ」


「そんなに痛い? あんまり力入れてないよ。力抜こうと考えすぎて余計に力入ってるよ。うーん……あ、そうだ」


「えいっ」


(久寝もそのまま覆い被さるようにうつ伏せになり、身体がぴったりとくっつく。さっきよりも距離が近くなり、彼女の姿は見えないまま耳元で声が聞こえる)


「──どう? 私のこと身体で感じて……。実は夏休み前から変わったことがあるんだ。それが何か、当てるのに集中してよ」



「ぶー時間切れ。正解は……大きくなったんだ、サイズ」


「どことは言わないよ〜。このまま妄想に集中してな〜? じゃあ、このままマッサージしていきますね〜」


「あれ、もっと硬くなってない? なになに〜、もうえっちだな君は〜」


「ほんともうー……ん〜、ごめん、もうちょっとだけギュッとしていい?」


(久寝は再びうつ伏せの相手に背中から抱きつく)


「やっぱり安心する……」


「ここ最近さ、夜も眠れるようになってきたんだ。君がいなくても、君を想うだけで」


「もはや君は心の枕までになったんだよ! まぁ、冗談はさておき」


「……けどね、また段々と眠れなくなってるんだ」


「ううん。君のせいなわけないよ。これは私のわがまま。ドキドキと会いたいなって思いがグルグルでさ」


「あー、私もう君のことが大好きなんだなって。どんどんその気持ちが大きくなっていく」


「その、今夜さ、そのぉ……誰も帰って来ないんだ。もし、その、良かったら夜も一緒にお昼寝しようよ。責任、私も取る準備できてるから」


「えへへ……照れるねこれは!」


(久寝はガバッと起きた)


「昼寝部夜間実習だねっ」


「んんー、あー、とりあえず次は腰をマッサージしてあげる」


「んっんっ、んー!」


(再びベッドをタップする音)


「やっぱ君は硬いねー。もう、これは勉強だけじゃなくてマッサージも追加で毎日してあげないとだね♪」

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