第35話 管理者
『おい、眩しいな』
「眩しいですね」
『えぇ、眩しいです』
カオス、ベルさん、ラベッジから抗議の声。
「ガハハハ。目が潰れちまったわ。酒かけても治らねぇよなぁ?」
「いや、もしかしたら治るかもだから師匠、僕がかけてあげるね」
師匠にいたっては目から煙が出ているので酒をぶっかけておく。ちなみに僕も目が焼き切れたけど復元してから上を見ないように気を付けている。
「うぎゃぁああ、バカ弟子やめろぉぉ。染みっ──ない、だと?」
「ッチ」
「おい、弟子。舌打ちしなかった? ねぇ、今舌打ちしなかった?」
「気のせいじゃないかな?」
目が潰れる前に見えた球体は、直径十メートルほどの白色の光球だった。その真下には聖剣を掲げた執行者が浮かんでいた。恐らく今なお絶対零度の眼で見下しているだろう。
「滅びろ。『
そして挨拶もなしに光球が放たれた。それは軋むような音を立て、圧縮されながらゆっくりと近付いてくる。
「カイ。まずはご挨拶だそうだ。丁重にもてなしてあげなさい」
「あいあいさー。『
目を絶えず復元しながら死を纏った槍を構え、狙いを定める。あの程度であれば
「貫けっと」
投擲。光速に近い黒い閃光を纏った槍は圧縮された光球を綺麗さっぱり霧散させ、
「うむ。弟子一号上出来だ」
「ハァ!? アンタクソ雑魚だったじゃ──」
「その節はどうも」
500年振りの本物のメリルだ。その節は大変お世話になったので、感謝と親しみを込めて、知覚する隙間もなく頭と体を切り離し、一瞬で燃やし尽くす。
『クク、おいババア。逃げるなら見逃してやってもいいぞ?』
『つい先日尻尾を巻いて逃げたくせによくもまぁいけしゃあしゃあと言えたもんだねぇ。クラトス、
500年越しに使徒の名前が判明した。クラトスと言うらしい。聖剣をグッと握りしめるとクラトスが一瞬で詰めてくる。
『ババアよぉ、加齢臭がひでぇから離れてくんねぇかなぁ?』
『小便臭いのが移っちまう前にへし折ってやるさね』
「クラトスさん、久しぶりだね。ちょっと見ない間に喋れなくなっちゃったのかな?」
「黙れ。貴様の存在自体が不愉快だ。人間如きが理を統べようなど叛逆でしかない」
「何言ってるか良く分からないけど、まるでキミは人間じゃないみたいだね?」
「……」
「沈黙は肯定、と。じゃあ一体キミは何者なのかな?」
一撃一撃、理を捻じ切ろうとするように聖剣が振るわれる。師匠と会う前であれば最初の一撃で消し飛んでただろうに、今はソレが見える。
「ねぇー、ねぇってばー。聞こえてますかー? もしもーし」
「……」
それから随分と無言で斬り合って、数えきれないほど死んだが、殺し切られてはいない。その間もあれやこれや話しかけているが全部無視だ。
「都合が悪くなると黙るのってホントやめて欲しいんだけど? それにみんな秘密にしすぎだと思うんだよねー。いい加減ストレスで髪が黒くなりそうだよ」
カオス、ラベッジ然り、師匠然り、クラトス然り、何か知ってそうな連中は大事なところをいつもボカす。そのストレスを乗せた一撃をクラトスにぶつけてみる。
「ッチ」
クラトスの頬に一筋の傷がついた。その傷口からは……赤い血液が。
「ふーん。血は赤いんだね。人間と一緒なわけだ」
「もういい。
例にもれずクラトスの沸点も低いみたいだ。あるいは、人間と同じと言われたことが余程クリティカルだったのか。
「カカ。おいおい、執行者さん。お前さん如きがこの世界を壊す? それこそ寝言は寝て言うんだな。それにタイムオーバーだ。現れるぞ」
師匠がスマホを見ながらクラトスにそう告げる。僕のスマホからもアナウンスが流れた。
『フェーズ6となりました。残った顔ぶれはいつも通り──おや、そうでもないね。カイ君は今回、ここまで残れたんだね。おめでとう。さぁ、お待ちかねカイ君のブッ殺したい運営──管理者の登場だよ』
「フフ、皆様今回もご苦労様です」
「……聖女?」
「はい。聖女ですよー」
現れたのは目を閉じたままの褐色の聖女であった。
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