第23話 アッシュ
「案内する気になった? ならないならお前の四肢を全て破壊していく。いいか? そのくらいじゃ人間は
「ま、待って!! 案内するっ、案内するっ、もうやめてっ、案内する!!」
ジャスパーは泣きじゃくりながらそう申し出てくる。まったく余計な手間は取らせないで欲しい。
「そ。じゃあ行こうか。あ、サトシ君とルーカスはここで待っててね。邪魔だから」
サトシ君とルーカスの拘束具を素手で破壊し、そう告げる。二人は黙って頷いた。
「あ、あとこれ。カズトから」
カズトから預かった回復ポーションを渡す。そして、僕はジャスパーの襟首を掴んで担ぎながら、サキの拉致された部屋まで案内させる。
「こ、ここです」
「そ」
扉を蹴破る。中には半裸の男が三人。そして床には──。
「……殺したの?」
イヤな慣れだ。スキルに頼らずとも床に転がっている人間が死んでるか生きているかが瞬時に分かってしまうのは。
「いいや。自分で舌を噛んで死んだ。ったく興ざめだよ。で、お前は誰だ?」
一番手前の黒髪の大人しそうな男が答える。
「ゴミに名乗る名前はないよ」
ジャスパーをドサリと捨て、黒髪の男まで一瞬で間合いを詰める。
「なん──」
これ以上呼吸をさせるのもムカつくので腹にワンパン。腸のほとんどが後ろに飛び散り、体の中からサヨナラした。
「テメェッ!!」
その奥にいた茶髪のライオンヘアーの男は両手十指にリングをつけており、その先には細い糸、繋がる先は
「あぁ、もう本当にうるさいな」
人形がチェーンソーを振り上げて襲い掛かってきたので、それを受け止め引き裂くようにバラバラにする。千切れた四肢から伸びる糸を手繰りよせ、男が宙に浮いてこちらへ飛んでくる。そこへ回し蹴り。男の顔はひしゃげながら壁にめり込む。ギリギリ頭と胴体は繋がってたが脳みそは散らばってしまっている。
「ハハハ、威勢がいいなクソガキ。俺はクリムゾンのリーダーでアッシュと言う。どうだ? 俺の部下にならねぇか?」
赤髪のムキムキ男がこの状況で堂々と勧誘してきた。頭が沸いてるのだろうか。
「よくこの状況でそんな頭沸いたこと言えたね。こっちは仲間殺されてんだぞ?」
「おいおい。言いがかりはやめてくれ。そいつは自殺したんだ。むしろこっちの方が多く仲間を殺されている」
床に転がるサキの身体にはボロ布が一枚雑に掛けられており、その下から見える身体に衣服は確認できない。
「自殺せざる得ない状況まで追い込んでおいて、よくそんなセリフが吐けたね」
「大人の遊びをちょっと教えてやっただけだ。それで死ぬなんざ、この女がバカなだけだ」
だけ? こいつは何を言ってるんだ? 吐き気がする。
「頭のおかしなヤツと喋るのはストレスが掛かるね。もういいよ。お前はそうだな、百回は死んでもらおうか」
「やってみろよ。お前が殺した奴らと俺は一味ちげぇぞ。クリムゾン召喚っ!!」
アッシュがそう叫ぶと炎を纏った巨大な狼が姿を現す。
「参考までに俺の理力は8000を越えている。8000越えの召喚獣。この世界最強のプレイヤーは俺──」
「お座りっ!!」
「「!?」」
いちいちご丁寧に理力を明かしてから戦闘するというルールでもあるのだろうか。バカらしくて聞くに堪えない。アッシュの言葉が終わるのを待たずにそう命令すると、アッシュとクリムゾンがピシリと固まる。
「遊んでやるからちょっと待ってろ。サキが壊れちゃ困る」
布を綺麗に掛け直し、体を抱き上げ、部屋の外へと歩き、静かに下ろす。
「サキ、遅くなってごめんね」
サキに一言謝り、先ほどの部屋へと戻る。
「いいよ。ほら、ワンコロ遊んでやるから、おいで」
「ッチ。スカしたガキだ。クリムゾンッ、ヤツを食い殺せッ!!」
アッシュの言葉にクリムゾンは静かに頷くと、視線を僕に合わせ、その太く強靭な四肢に
「グルァアア!!」
飛び掛かってきた。
「伏せ」
ワンコロの鼻先を掴み、そのまま地面へと叩きつけ、強制的に伏せの姿勢にさせる。床は砕け、牙の数本が折れて飛び散り、口元からは血しぶきが舞った。
「おい、ワンコロ。僕はまだ動物は好きみたいでね、キミをいたぶって殺すのは少し気が引けるんだ。だからここでそのまま大人しくしていてくれる?」
頭を押さえつけながら、知性を感じる深い瞳を見つめ、お願いをする。
「クゥン……」
クリムゾンの四肢から力が抜け、尻尾がペタンと床で丸まる。
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