第21話 救出ミッション
「団長、何かな?」
「あぁ、実はね、サキたちがクリムゾンの連中に捕まった。助け出しに行ってほしい」
「クリムゾン。あぁ、暴走族みたいなチームだね。ようやく外に出られるね。いいよ、場所は?」
「あぁ。カズトが案内してくれる」
団長の言葉でカズトが扉の影から出てくる。
「俺っち特製の発信機をメンバーには持たせてるから追跡できるっス。行くっスよ!」
「ふーん。おっけー。行こうか。攫われたのはどのくらい前?」
「あぁ、カズトがサキからルインを貰ったのが15分前。その後音信不通だ。GPSの移動速度を見るにバイクでの移動だろう」
「……生きてるの?」
「ルインから名前が消えてないからね、三人とも生きてるよ。それにクリムゾンはその場で殺すことは少ない。アジトへ持ち帰って
「なるほど。良い趣味だ。じゃあ急がないとね」
「あぁ、頼むよ」
僕とカズトは団長の部屋を後にする。
「カイ君はバイク運転できるっスか?」
「あぁ、イージーだね」
「へー。頼もしいっス。じゃあ俺っちがGPSでナビするんで、運転は任せたっス」
「了解」
とは言ったものの、バイクの乗り方など知らなかった。この世界に来る前も乗ったことがないと感じる。
「で、カズト。操作方法を一応教えてくれる?」
「え……。っと、これがブレーキで、ここがアクセルで、これがクラッチで、これがシフトっス。大丈夫っスか?」
「あぁ、安心して。僕は死んでも生き返るから」
「……あの、俺っちが後ろにいること忘れないで欲しいっス」
アクセル、ブレーキ、クラッチ、シフト。記憶からぼんやり浮かんでくる。クラッチを握って、シフトを入れてアクセル全開という漫画か何かから得られた知識を引っ張り出せた。
「思い出せた。行くよ」
「……OKっス」
その言葉と同時にクラッチを握り、シフトを一速へ入れ、アクセルを全開にしながらクラッチをパッと離す。バイクは前輪が思い切り浮き上がり、そのまま走り始めた。
「ギャアァアアっス!!」
「ひゃっはー!!」
そのままガチャガチャクラッチやシフトをいじりながら、常にアクセル全開で進む。
「右っスぅ!!」
カズトは涙声でナビしてくれる。
「おーけー。急ぐ」
「ぎにゃぁぁあっス!!」
こうして、前輪が浮いている時間の方が長いような運転を経て、山のふもとへと到着する。
「ここっスね」
「ふーん。じゃあちょっと全滅させてくるから待っててね」
「え、あ、了解っス」
「誰か来たら隠れておいてね」
カズトが頷いてから僕は山が切り取られたような部分の洞窟へと入っていく。これじゃ暴走族というより盗賊や山賊のアジトだ。
岩肌むき出しのトンネルの中には松明の灯りが続いている。と思ったら、洞窟内に真っ赤な回転灯が付き始め、けたたましい警報音が鳴り響く。
「インターホンいらずだね。おーい、僕の仲間返してくれませんかー」
見つかったのは間違いなく僕なので、大声で交渉してみる。返ってきたのはバイクの音だ。
「お、来た来た」
バイクが数台奥からやってきた。柄の悪いパンク野郎どもがサブマシンガン片手に近づいてくる。
「前輪が地面についてるね。僕より運転は下手そうだ。おーい。キミたち、僕の仲間が三人連れてかれたんだけど──」
言い終わる前に数人のサブマシンガンから銃弾の雨が降らされる。
「あれー。団長、その場で殺すことは少ないって言ってなかったっけ? 一言も喋らずに撃ち殺しに来るとか……。野蛮だね」
体は既に再生し終わっている。ダメージは1もない。僕は近くの岩肌を殴り、手ごろな石を持つとポンポンと手の平で軽く感触を確かめ、投げた──。
「ひぎゃっ」
ヘルメットをしていなかった男は首から上が弾け飛んだ。
「はい、当たり。次」
「みぎゅあ」
二台目のライダーは胸に大きな空洞が空いて絶命した。
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