第19話 サトシ視点①
──その数時間前に遡る。
「はい、じゃあ今日は
サキが俺とルーカスの部屋で地図を広げ、ハイドプレイヤーの多い地域を指さす。最近はブリーフィング中も冗談を言い合うこともなく、淡々とした感じだ。
「あいよ。それはそうと、最近サキピリピリしてね? あー、その、アレの日か?」
「は? サトシ殺すわよ?」
その冷たい眼差しと今にもウィンドブレイドを撃ってきそうな雰囲気に俺は両手を上げて降参する。
「サトシの空気と女心の読めなさはブレないな」
「うるせぇ」
このチームを組んでからは大体こうだ。俺がサキにちょっかいをかける。サキが笑いながら怒る。ルーカスが冷ややかにツッコむ。だが、
「で、マジなとこ、どしたんよ。チームワークが大事ってんなら、今のサキには少し話しかけずれぇよ」
俺は今度はマジなトーンで聞いてみる。
「……ナーバスになってるだけよ。カイの見たでしょ」
「あぁ」
ゾンビとの戦いもそうだが、死体使いの時のデカブツとのやり合い。異常だった。俺たちはスキルを得て、ナイフも銃も訓練して強くなった。だが、人間の延長線上だ。あんなバケモノ同士のやり合い見たことがない。
「この先、生き残ってくる中にはカイと同じくらい、それ以上に強い人がゴロゴロいるかも知れないって考えるとね……」
その後の言葉は飲み込んだようだが、恐ろしいとか怖いとかが続くのだろう。
「サキの言ってることは正しいな。カイが現時点で飛び抜けてナンバーワンプレイヤーである確率と、それ以上がいる確率を普通に考えてみれば、
「……へッ。別に今はそうかも知れねぇけど、スキルが覚醒することがあるって話しじゃねぇか。新入りはハッタリか知らないが、理力が相当高ぇ。俺たちも理力を上げてスキルが覚醒すれば、バケモノの仲間入りだ」
「……そのためには殺さなきゃいけないのよ。あと何人、何十人、何百人?」
スキルの覚醒条件は知らないが、理力の上がり方は二通りだ。そのスキルを訓練してあげるか、スキルでプレイヤーをキルするか。上がり方の差は圧倒的に違う。どちらが上かは言うまでもない。
「それに私たちはなるべくなら殺さないためにこの組織に入っている。全員が同じ方向を向いて、協力しあえば殺す必要のないゲームなんだから」
「その通りだ。結束してフェーズ6を乗り切ればいいだけだ。生きるための最低限のキルポイントさえあれば、それ以上殺す必要などない」
サキとルーカスは揃って俺を非難してくるかのようだ。
「別に俺は強くなるためにプレイヤー狩りをしようなんて言ってるつもりはねぇ。言葉の綾だ」
「……そうね。変なこと言ってごめんなさい」
サキは随分とネガティブ思考になっているようだ。
「いいさ、ほら行こうぜ」
「えぇ」
俺に続いて、サキがノロノロと立ち上がる。
「んな、暗い顔すんなって!」
元気づけるためにも俺はサキのケツをバシンと引っ叩いた。
「……サトシ? 死にたいの?」
「うわっ、ちょ、待て。スキルはマジで死ぬ!! ルーカス助けてくれっ!!」
「ハァ……。バカやってないで任務に行くぞ」
ルーカスは無視して部屋を出ていく。
「よし、そうだな。車に乗り込め!」
俺は急いで駆け出し、ルーカスを追い越して車へと向かう。
「ハァ……。もう、エロ猿サトシのゴミクソバカ」
「ちょ……、言い過ぎじゃね?」
後ろから聞こえてきたサキの言葉はかなりのオーバーキルだ。
「なに」
「っと。さぁ、車に乗り込むぞっと」
そして俺たち三人はぎこちないながらも前までの雰囲気を少しだけ取り戻し、任務へと向かった。
「ビルエリアか」
目的地に着いた。高層ビルが固まっているフェーズ2の外縁エリアだ。基本的に中心に行けば行くほど好戦的なプレイヤーが多い。外縁はその逆。戦いたくないものが身を潜めているエリアだ。
「おい、サトシ気を付けろよ。ハイドとは言え、フェーズ2に入ってもう一週間以上経ってる。生きているということはキルポイントを持っているということだ」
「わーってるよ」
無駄な戦闘はしないが、遭遇すれば好戦的なプレイヤーもいるだろう。まぁそんなプレイヤーに俺たちは会ったことはないのだが。
「隊列組んで。前衛サトシ。中衛私、後衛ルーカス」
「「おう」」
サキに言われた通り、右手にハンドガン、左手にナイフを構え、ビルへと入る。まずは入口。ざっと見た感じ人の気配もしないし、罠もなさそうだ。カズトお手製のインカムで話す。
『入口クリア』
『『了解』』
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