第18話 お留守番
「まるでゲームだね」
「そういうこと。このスキルや理力というのも実にゲームのような言葉だ。キルポイントとフェーズの進行もそう考えると辻褄が合う。プレイヤーが一人減ればリソースがその分空く。フェーズが進めば世界は縮小し、他に回すリソースが増える。そのリソースの中で残ったプレイヤーはより仮想世界へ介入しやすくなる。理力の向上だ」
団長の言ってることは今のところそれっぽい。
「じゃあもし、この世界がゲームの中だとして、僕たちはバーチャルな存在ってことかな?」
「そこが難しいね。世界は仮想。そこに干渉するスキルも仮想。でもボクたち自身はバーチャルではないと思ってしまっている。記憶が混濁した中でも過去の地球での時間はあまりにもリアルだ」
「そうだねー。感覚的にはその延長線上にある感じだね。それにもしヤツらがゲームだと思い込ませたいがためにそんな風にしていたとしたらまんまと引っかかるのはムカつくかな」
「フフ、違いない。とまぁ、結局考えても分からないというのが今のところの結論さ。何にせよ、確かなのは、この虫カゴの中で這いずり回るのを上から見下ろされているということだけだ」
団長は上をスッと指さしながらそんなことを言う。
「実に不愉快だね。引きずり下ろして一万回は殺したいね」
僕は小さく笑う。
「ハハ。もしくは
『這い上がって』という団長の言葉──僕ももとよりそのつもりだ。わざわざ毒虫のいるカゴに手を突っ込んでくるバカはいない。であれば、この毒壺から這い上がって刺し殺すまでだ。
「うん。僕はこの悪趣味なゲームで勝ち残るよ」
「あぁ、ボクもそのつもりだ。そして、この団全員が生き残れることを願うばかりだね。というわけでカイ、これからもよろしく頼むよ」
「おーけー。ま、僕はなんだか嫌われものっぽいけどね。でも団長はなんでこの話しを僕に?」
「そうだね。キミを繋ぎとめておきたいからかな。ボク自身含め、この団は弱者の集まりだ。皆が皆、弱さを補うために固まっている。だが、キミは違う。明らかに強い。気分一つで出ていくことも、あるいはこの団を殲滅することだって出来るだろう」
「……随分と買いかぶってくれるんだね」
「フフ。これでも団長だからね。心配性なくらいで丁度良いんだよ。これからも極力この世界のこと、上の連中のことが分かったらキミに提供しよう」
「ありがとう」
「いいさ。では、キミの個室にはビリーが案内しよう」
「おーけー。じゃあ失礼するよ」
「あぁ」
団長の部屋を後にする。廊下にはビリーが立っていた。イカついアサルトライフルとスーツがよく似合っている。
「ビリー。それ似合ってるね」
「……」
無視だ。そしてビリーはそのまま無言で歩いていく。部屋に案内してくれるのだろうか。それともサトシ君みたいに、生意気な新人は指導してやるっていうタイプの人間だろうか。
「あ」
立ち止まっていたらビリーが振り返って手招きしてくる。
「はいはい」
トトトと駆け寄り、ビリーについていくと普通に僕が使う個室に案内してくれただけだった。
「ビリー、ありがとう」
「……」
ビリーは無言で親指をグッと立てた。僕も負けじと親指をグッと立てた。ビリーは多分シャイなんだろう。うんうん。
「さて……」
こじんまりしているが、清潔な部屋、シーツの敷かれたベッドにボスンとダイブする。
「ゲームね……」
先ほどの団長との話しを思い返しながら、首をさする。
「ま、団長の言う通り考えても答えは出ない、か。正解は上に聞くこととしよう。おやすみなさーい」
そして、朝になり、夜になった。
「いやー、まさか、僕の役割がお留守番だなんてねぇ」
この日、一日は屋敷の中でウロウロしているだけだった。何か有事の際に駆け付けれるよう準備万端で備えておくのが僕の任務らしい。
「団長本気っぽいね」
僕は部屋で寝転がりながら昨日団長が言っていた僕を繋ぎ留めておきたいという言葉を思い出す。つまりこれは軟禁だ。
「ま、しばらくは我慢してようかな。こんな世界だから何かはきっと起きるでしょ」
こうして、僕は数日間を屋敷の中で過ごす。何日目か、ようやく事件は起きてくれたようで団長に呼び出された。が、この事件は僕にとって少しばかり苦い事件となる。
「団長、何かな?」
「あぁ、実はね──」
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