第15話 死体使い登場
数分で電話は終わった。サキは途中驚いた顔になっていたが、一体団長は何を言ったのかな。
「……ボスからの指示よ。カイに死体使いを殺しに行かせろとのこと。私たちにはそれを
「……分かった」
「……ッチ」
「おぉー、団長ありがとー」
まさかの団長の後押しに感謝だ。
「じゃ、すぐにでも行こう。移動されていたら厄介だ」
「あ、ちょっ。もうっ! ルーカス追って!」
「あぁ」
僕は駆け出した。そのあとをルーカスたちは車で追ってくる。
「キルポ、キルポ、シャワー、シャワー、ふーく、ふーく♪」
ゾンビと繋がったコードの先は見えなかったが、方向さえ分かればあとはなんとかなるだろう。それから1㎞ほど走っただろうか。一見すれば普通の家に見える
「ここだね」
僕が止まったのを確認して、サキたちも車から降りてきた。
「……こんなところに? 臭いは……、そのするけど、家からかどうかは分からないわね」
臭くて悪かったね。
「じゃあ、行ってみよう。みんなは安全なところから見ててね」
「そうさせてもらう」
ルーカスはクールメンだね。
「お邪魔しまーす」
扉を開けようとするが、鍵が掛かっていた。
「……お邪魔しまーす!」
仕方ないので蹴破る。ドアは真っ二つに割れながら吹っ飛んでいった。
「さーて、どこかな。んー。ここが怪しいな」
がらんどうのリビング。この家に似つかわしくないペルシャ絨毯と大理石のテーブル。
「ぽいっ、ぽいっと」
テーブルを放り投げ、絨毯をめくる。そこには鍵付きの地下への扉。一応開けてみる。ガコガコという音だけで開かない。
「死体使いは用心深いようだね。まったく」
地下への扉を思いっきり踏み抜く。ズドンという音とともに扉が落下した。
「お邪魔しまーす」
そして人ひとり通るのがやっとな石の螺旋階段を下りていく、下りていく。
「死体使いさーん。いますかー? いたら返事してくださーい」
長い階段が終わった。地下はかなり広そうだ。声が何重にも反響する。そんな時、近くに気配を感じた。
「キミ、死体使いさん?」
「ウヴァァッ。ウヴァウヴァ!!」
「うーん。ハズレ。薄暗くて見えにくいんだよなぁ」
最低限の灯りのみで地下の全容は見えない。なにやら扉がいくつもあり、その扉のそこかしこからゾンビが出てきているようだ。
「死体使いは映画の見過ぎだね」
それはアメコミ映画のヴィランのアジトを模倣しているかのような雰囲気だ。嫌いではない。
「はい、はい、はい、はい」
ルーカスが言っていたことは概ね合っていた。先ほど外で倒したゾンビたちより強い気はするし、数も多い。だが、やはりその差は誤差でしかない。
「このゾンビ叩きをクリアしたら出てきてくれるのかな?」
もう汚れてしまっているので、開き直ってゾンビに特攻していく。あらかた倒し切ったのだろうか、ゾンビの勢いが減ってきた。
パチパチパチパチパチ。
ゾンビが切れたところで薄暗い地下に拍手の音が木霊する。サキたちではない。となればようやくお出ましなわけだ。
「キミ、すごいねぇ」
拍手とともに出てきたのは白衣を着た痩せ細った男で、長くボサボサの黒髪と相まってザ・研究者という出で立ちだ。
「死体使いさんかな?」
「ふむ。そう呼ばれているね。キミは何者だい?」
「しがない一プレイヤーなんだけど、実はキミのところのゾンビと遊んでいたら汚れちゃってね。シャワーを浴びるためにキルポイントが必要なんだ」
「……ふむ。なるほど。キルポイントを使い切ってしまったという認識で合ってるだろうか?」
「うんにゃ。今までゼロポイントだったんだ」
ここで初めて死体使いが驚いた表情になる。
「オォー、ジーザスッ。キルポイントゼロ? 何の冗談かね? キミのゾンビの壊し方のこなれた風を見るに
「ま、そこら辺は企業秘密ってことで。で、申し訳ないんだけど殺すね」
問答はここら辺にして、殺そうと思ったところで死体使いは右手を目の前に上げ、待ったを掛けてくる。そしてそのまま人差し指だけを立てると横に振り──。
「ノンノンノン。それはナンセンスだ。空気を読みたまえ。この場面、私が何の策もなしに飛び出してくるわけがないだろう? なんせ私はゾンビを使わなければナイフと銃で人を殺すことしかできない一般人だからね。というわけで登場早々で申し訳ないのだが、切り札を切らせてもらってもいいかな? 私が作った最高の作品──アルティメットジャイアントゾンビを」
アルティメットジャイアントゾンビ、だと?
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