第12話 初任務
何か三人とも絶句してしまっている。どうしたというのだろうか。まさかみんな八桁以上で、四桁でイキってることに呆れられちゃった……?
「……ハァ、まず、いきなり変なことしないで。心臓に悪いでしょ。あと、四桁は本当なの? 私たちはどれだけ頑張っても二桁のままよ」
おっと、逆だったようだ。初期値がどれくらいで二ヶ月頑張っていくつ上がったのかが気になる。これは三桁とか言っといた方がめんどくさくなかったかな。
「うん。でも三桁は超えてる。これホント」
というわけで訂正してみた。処世術処世術。
「ハァ。変な見栄張らないでよね。でも三桁でもすごいわね」
「あんまり自覚はなかったけどね。サキたちの二桁って平均的なのかな?」
「そうね、いわゆる標準プレイヤーくらいじゃない? あまりスキルの内容や数値は人には言わないから私たちも正確には知らないわよ。なんとなくの会話から雰囲気で察する感じ。現段階では三桁に到達していない人が多いって印象」
「ふーん。なるほどね。で、二人の能力は?」
「俺は『マシーナリー』だ。付与干渉型だな。俺が操作する機械ものは性能が上がるな。銃とか車もだ。逆にナイフとかには効果はない」
「触るだけで性能が上がるって無茶苦茶だね」
「いや、さっきのカイの方が無茶苦茶だからね?」
サキにツッコまれた。まぁ確かに。そして、最後にサトシ君を見る。
「俺のは自己干渉型だな。『格闘術』、ナイフとハンドガンを持っても発動できるが、それ以上の長物はダメだ」
「へー。面白そう。訓練とか付き合ってくれるかい?」
「……痛みがないなら丁度いいな。サンドバックにしてやるよ」
これはラッキーだ。サキの言う通り僕のスキルは攻撃力に直結するものがない。自身で戦いの技術を身に着けるか、ひたすら強い武器を装備し続けるか、だ。当然、テクニック+武器の両方の択を僕は取りたい。
「はいはい。訓練は任務が終わってからね。基本的に陽が落ちる18時までは任務時間になってるから把握しておいてね。サボりはペナルティがあるから気を付けて」
「はーい」
「よろしい。カイはハンドガンの使い方はどう?」
「慣れてるよ」
「……そ」
「じゃあ戦闘時の陣形は前衛サトシ、中衛に私とカイ、後衛にルーカスね」
「おーけー」
別に僕はどこでもいい。殺そうと思ったヤツを殺すだけだ。逆に言えば別に殺したくない相手だったら殺さないかも知れない。
「あ、一応確認なんだけどキルポイントって殺した人にしか入らないでしょ? 何かルールはあるの? 順番とか」
「……ないわよ」
「そう。了解」
「カイ、疑問なんだがお前はキルポイントが0だろう? 実際に人を殺すとなると
ルーカスが真剣な顔でそんなことを聞いてきた。さて、どうしたものか。この二ヶ月で一万回殺されて、一万回殺し返したなんて言ったら絶対引かれちゃうしなぁ。僕が
「さぁ? こんなスキルだからかな。死という感覚が麻痺してしまっているのかも知れない。あるいは体が死体のように、心まで死んでいるのかも。ハハ、そうだね、そっちの方がしっくり来る」
でまかせに言った言葉だが妙にしっくりくる。一万回死んだ時に僕の心は死んでしまったのだ。
「もういいわ。ブリーフィングはおしまい。今日は巡回に出ましょう。目的地は……サトシ、地図。ん、ありがと。ここねフェーズ2エリアのGここら辺にしましょう。じゃあ十分後に車で。はい、解散」
サキは伝え終わるとそそくさと部屋を出ていってしまった。男三人だけが残る。
「何か準備するものってある?」
「特にないな。自分の装備って言っても初期のサバイバルナイフとハンドガンだけだろうから、それくらいか」
「だね」
そしてそれ以降は会話もなくなり、僕たち三人は早めに車に向かうのであった。
「お待たせ。さぁ行きましょう」
時間丁度にサキがやってきて車に乗り込む。座る位置はここに来た時と同じだ。
「そう言えばこの団以外にも派閥ってあるの?」
「あるわよ。大小さまざまね。タチが悪いところは『クリムゾン』っていうチームね。暴走族みたいにバイクを乗り回してやりたい放題ね。女性にとっても最低最悪なチーム」
サキは心底軽蔑しているようだ。
「……あと、他には変わったところだと宗教じみたチームもあるわね。聖女が現れたとかで信者が信者を呼んでかなり大きい集団になっているわ。好戦的じゃないのが救いだけど、風の噂によるとかなり異様な雰囲気だとか、この世界を神の試練だとか、神による選別だとかね」
「へー。たった二ヶ月で色々な集団が形成されたんだね」
「あとはソロプレイヤーでも気を付けなきゃいけないのは何人かいるわね。
「アハハハハ、すごい! バトロワデスゲームにゾンビまで入ってるんだ。映画化したらB級なのは間違いないね」
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