第10話 入団
「そ。じゃあ僕もBETしとくよ。よろしく団長」
「あぁ、よろしくカイ。さて、丁度いい。サキたちのチームで面倒を見てやってくれないか?」
「はい」
団長の言葉にサキは表情を変えずに即了承する。ちなみに僕の思い込みかも知れないがサトシ君は表情こそ変えなかったが不満そうな雰囲気だ。
「うん、じゃあ下がっていいよ」
「はい。ほら、カイ行くわよ」
「あぁ、じゃ団長、失礼するよ」
こうして僕は散歩の結果、グリフィン団という組織に所属することになった。ここで二ヶ月ほど情報を集めながらのんびりと過ごそうと思う。
「おい、新入り」
団長の部屋を出てから暫く歩くとサトシ君がピタリと止まって、こちらを振り返って声を掛けてきた。なんだろうか。
「いいか、分かってるだろうが、ここは組織だ。上下関係が存在する。ハルさんから直接ポストが与えられた者。功績を上げた者。強いヤツ。加入した時期。上下を決める要因はいくつかあるが、少なくともお前は一番下だ。この意味が分かるな?」
「んー。ちょっと分かんないかな。もう少し単刀直入に言ってくれる?」
「そういう態度だよ。調子に乗んなって言ってるんだ。ボスに対する喋り方もなっちゃいねぇ」
サトシ君は僕の襟首を掴んで持ち上げてくる。
「ねぇ、サトシ君。きっとキミは僕が気に食わなくてしょうがないんだろうね。でも、実は僕も僕でキミにイライラさせられっぱなしなんだよねぇ。どうする?
「あ゛ん? てめっ──」
「はい、そこまで」
サキとルーカスによって僕たちは引き離された。
「ハァ……。サトシはややこしくなるから黙っていて。カイ、サトシの言うことも一理ある。特にボスに対しての部分はね。そしてアナタたち二人の関係性はチームとして問題あり。ルーカスどうしたらいいと思う?」
「協力作業。二人でミッションを達成することによって信頼が芽生えるかも知れない」
「わーお、ルーカスナイスッ。それ採用。というわけでサトシとカイは二人で任務ね。でも喧嘩し始めちゃったら困るからルーカスもついていってあげて」
「……了解」
初めてルーカスが嫌そうな顔をした。さて、なんだか話しがまとまったみたいだ。どうやら僕とサトシ君はこれから一緒に任務に行って仲良しこよしにならなきゃいけないっぽい。
「確か、この団は協調性がある人がスカウトされているんだよね。僕は大丈夫よ? 協調性が服を着て歩いているようなものだし。カリカリしっぱなしで人に悪態をつき続けてるサトシ君は大丈夫かな?」
「はい、カイ煽らないのー。あなたもそういうところガキっぽいわね」
む。確かに言われてみればガキっぽい。なんだかこの二ヶ月を経て、感情を抑圧することが減ってしまった気がする。思うがままに、何にも縛られず、誰の顔色を窺うわけでもなく生きる。あれ?
「あ、僕協調性ないかも」
「って、なにそれ、変なこと言い出さないでよ。お願いだから協調性は持ってよね」
「あぁ。善処するよ」
しないけどね。
「もういい。俺はコイツと仲良くする気はねぇ。でもボスが入団を許可したなら一員とは認める。あとたった二ヶ月我慢すればいいだけだ。普通に任務に行くぞ」
「あら、サトシのがちょっとだけ大人ね」
「あぁ、ビックリだ」
「うるせー。お前らも茶化すんじゃねぇ」
どうやらこれで仲良しミッションの流れはなくなったようだ。
「で、僕は入団早々何の任務に行くの? スカウト?」
時間は昼過ぎ。グータラしているわけにはいかないだろうから通常の任務はあるはずだ。
「そうね。私たちの班はスカウトがメインだけど、それ以外もちょいちょいあるわね。まずはブリーフィングしましょうか。チームワークが一番大事だからね」
僕とサトシ君を交互に見ながらそんな言葉を言われると僕も苦笑いだ。
「そうだな。俺とサトシの部屋に集まろうか」
「そうね。あ、カイの部屋どうしよう。サトシたちの部屋に転がりこむでいい?」
「「……」」
サトシ君とルーカス沈黙。もしかしなくても僕って邪魔?
「あ、そう。あなたたちが引き取らないなら、私の部屋で引き取るけど?」
「……ッチ。いい。こっちで引き取る」
「……おい、サトシ、同居人である俺には相談なしか?」
「おい、新入り。お前は床に雑魚寝だ。団に貢献すれば部屋を貰える。馬車馬の如く働いて早く出ていけ」
「おい、サトシ。だから同居人の俺のことは無視か?」
「……」
無視らしい。サトシ君、分かりやすくていいな。一周回ってちょっと好ましく思えてきたかも。
「はいはい。センパイの言うことはよーく聞きますよ。さっさと出ていくからそれまではよろしく」
こうして、僕たちはサトシ君とルーカスの部屋もとい僕も含む三人部屋でブリーフィングを行うこととなった。
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