第9話 入団面接
「随分と手入れされた綺麗な庭だね」
「えぇ、素敵でしょ? あれが私たちのアジト。カイ、くれぐれも変な気は起こさないようにね」
「ん? あぁ、もちろん」
車が止まり、巨大な屋敷へと案内される。思ったよりも豪華なアジトだ。一体何キルポイントで買ったのだろうか。それとも勝手に居付いているだけなのだろうか。
「姐さん、おかえりっスぅ! サトシ君もルーカス君もお疲れお疲れっスぅ!」
屋敷の玄関にいたのはチャラチャラした赤髪ピアス青年だった。
「お、スカウトされた人っスねぇ~。俺っちカズトって言うっス! よろしくっス! その真っ白な髪と赤い瞳超イカスっすねぇ。アルビノってヤツっスか? バリかっけぇっスねぇ」
「うん、そう。ありがと。僕はカイ。よろしくね」
殺され続けたストレスと怒りでこうなりましたってわざわざ言うのもめんどくさいからアルビノってことにしておく。僕はカズトから差し出された右手を握り返しながら挨拶を交わす。
「カズト、ボスは今いる?」
「いるっスよ~」
「そ、ありがと。行きましょ」
「ってらっさーい」
ニコニコと笑顔で手を振ってきたので、手を振り返しながら屋敷の中へと進む。
「彼はあれが素なのかな?」
「さぁ? でも私が知る限り朝から晩まであのテンションね。ウザい時もあるけど救われる時もあるわ。それにカズトは色々優秀よ」
「色々って?」
「……入団できたら教えるわ」
「ふーん。おわっ」
階段を上がり、暫く歩くとスーツ姿でスキンヘッドの屈強な黒人男性がアサルトライフルを装備して廊下に立っていた。
「ねぇ、サキ。僕分かっちゃった。あれがボスでしょ?」
コソっとサキに耳打ちする。
「違うわよ。ボスのボディーガードのビリーよ」
「まじぃ? 迫力すごいね。てかスーツなんか手に入るんだ。何ポイントだろ」
「10よ」
「えぇー、あの服着るためだけにあのイカつい銃で十人も殺したの? 鬼畜だねぇ」
「あんた本当に何も知らないのね。消費キルポイントじゃなくて累計されていく純粋なキル数に応じたユニークキルポイントがあって、あれは後者」
「へー。なるほどね。でも結局同じどころか、純粋に十人殺さなきゃ手に入らないならもっと鬼畜じゃん。ま、見た目がゴチャゴチャしてる人は成績上位者ってことは分かったよ」
「……スーツのために人を殺したわけじゃないってこと。あーもう無駄口はやめて。ビリー、スカウトしてきた人間を連れてきたからボスに会わせて」
「……」
ビリーは無言で頷くと扉をノックし、中に入っていく。数瞬して、扉が開かれた。入室許可が下りたようだ。
「おぉー」
中は屋敷の当主部屋ですと言わんばかりに意匠の凝った部屋で家具一つ一つが高そうだ。その最奥に白のコートをマントのようにたなびかせた金髪ロン毛のイケメン君が執務机に座っていた。
「やぁ、サキ、サトシ、ルーカスおかえり。初めまして新入り君。ボクがこの団のリーダーのハルと言う」
三人は頭を下げ、ハルに畏まった挨拶を返す。たった二ヶ月でこんな
「どうも、カイって言います。スカウトされて来ました。僕をハルさんの団に入れて下さい」
笑顔でハキハキと面接に臨む僕。
「いくつか質問に答えてくれるかな?」
「もちろん」
「キミはスパイかい?」
「違うね」
「では、この団を壊すつもりは?」
「ないよ」
「裏切るつもりはあるかい?」
「今のところないね」
「フフ、正直だね。じゃあ最後の質問だ。人を殺せるかい?」
「イージーだね」
「うん、合格。彼を正式にこのグリフィンの一員に迎えよう。よろしくカイ」
面接は僅か一分で終わった。結果は合格らしい。人の生き死にが関わるこの世界で、随分と呆気なさすぎる面接だ。
「すごいね、簡単に僕を信じたけど大丈夫? まぁ嘘はついていないからいいんだけどさ」
「あぁ、ボクのスキルの一つに嘘発見器みたいな能力があるのさ。こんな世界で組織を作るにはもってこいのスキルでね。反乱分子は紛れ込ませないし、すぐに排除できる」
「へー。それはすごく便利だね」
それが本当なら確かに組織作りは安心だろう。しかし、団長の嘘を見抜ける人はいるのかな。
「フフ。こんな世界だ。自分以外に保険や保証なんてものはない。だからと言って一人で生き抜くにはあまりにも過酷だ。では自分の運命を誰にBETするか。ボクはどうやら
僕の内心に対する答えのようだ。
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