第7話 命拾い
「次ふざけたことを抜かしたら撃つ。質問の続きだ、何人殺した」
茶髪坊主君だ。
「んー。ゼロかな」
キルポイント入ってないし、殺したとは言えないだろう。回数だったら一万だけど。
「本当かしら。これから食事も取れなくなるけど、どうするつもり?」
「さぁ? なんとかなるでしょ」
「ふざけるな」
茶髪坊主君はカリカリしているようで銃をこちらにチャキチャキと構え直して威嚇してくる。多分お腹が空いているのだろう。今手持ちの食料はカロリーメイト一箱だけだ。渡したら余計怒りそうだけど。
「カロリーメイト食べる?」
「……ふざけるのはやめて。サトシも落ち着いて」
コメカミに青筋を立てて今にもトリガーを引きそうな茶髪坊主君はサトシ君と言うらしい。
「おーけー。あと、何の保証にもならないだろうけど、別に僕は嘘をつく理由もないとだけ言っておこう」
「……このゲームについてどう思う?」
僕の言葉を無視して金髪君が聞いてきた。
「うーん。一言では言い表しづらいかな。判断材料が少ないのと非現実的すぎてね。だから当面の目的は主催者に会うことかな」
「主催者に会うには生き残り続けなければいけないが? そのために誰かを殺すつもりか?」
金髪君は青い瞳で僕の顔をジッと覗き込むように聞いてくる。
「別に積極的に殺しはしないつもり。けどま、殺しにきたヤツは当然殺し返すし、あとはその時の気分かな」
「ハッ。何がつもりだ! 何が気分だ! 今日からのメシはどうするって言うんだ! ただでさえ無料の食事はギリギリだった! そんな状態で誰か殺しに来るのを待ってたら先に餓死するぞ!」
「サトシ君はやかましいなぁ。別に。僕のスキルはお腹が空かないスキルだから問題ない」
「え、そんなしょうも──あ、いえ、そう。サバイバルに特化したスキルなのかしら」
この女、ひとのスキルをしょうもないと言おうとしたぞ。確かにそれだけだったらしょうもないスキルかも知れないが。
「ま、そんなとこ。ついでにお風呂も入らなくていいし」
と言うのも僕の身体は脂や汗、垢に排泄物などが極端に減ったというより、なくなった。つまり代謝がない。まるで死人だ。
「「「……」」」
そんなことを知る由もない三人は残念なもの、というかばっちぃものを見るような目つきで見てくる。
「体が汚れないスキルなんだ」
「ハァ……、あなたこの状況でよくそんな余裕な態度でいられるわね」
ここまで三人はハンドガンを下ろさず、僕にずっと向け続けたままだ。結構重いから疲れそうなのに頑張っている。
「でも、逆にキミたち三人は小綺麗だね。シャワールームパスを持っているってことかな?」
「……えぇ、持っているわ。言い訳はしない。私たちは人を殺している」
「「……」」
サトシ君も金髪君も押し黙っている。殺人鬼がいかにも僕たちはまともですって高説垂れていたと思うと反吐が出る。
「ま、どうでもいいけどね。それで質問は終わり?」
僕がそう聞くと金髪君が口を開く。
「最後の質問だ。俺たちはある派閥に入っていて、フェーズ6まで生き残る計画に参加している。役割はスカウトマンだ。優秀かつ有能かつ協調性のあるヤツをスカウトし、そうでなければ分かるな?」
「ふーん、協調性ね、サトシ君よく入れてもらえたね」
「…………」
「サトシ。無視よ」
サトシ君発砲三秒前って感じ。さて、どうしたものか。僕の答えはこうだ。
「でも、そうだなぁ、是非仲間に入れて欲しいな」
ニコリと笑ってお願いをする。情報も得たいし、暇つぶしでもある。
「俺は反対だ」
やっぱりねサトシ君。
「俺はどちらとも言えないな。こいつは良く言えば余裕があり過ぎるし、悪く言えば緊張感がない。信用がならないな」
「そうね。私もルーカスと似たような印象ね。でも
「なるほど、そうだな、その条件で良いと思う。サトシは?」
「……」
サトシ君、無言の承認。まったくこの三人は何様で品定めなんかしてくれてるのだろうか。おっと、イライラしてつい三人とも殺そうとしてしまった。深呼吸深呼吸。
「じゃあスマホを開いて、前に伸ばして。反対の手はまっすぐ上にあげておいて」
「はいはい」
僕はキルポイントのページをスマホに表示し、手を前に伸ばす。銃を構えながら慎重にルーカスが確認しにくる。
「……0だな」
「嘘つきじゃないでしょ?」
「……人を殺すこともできないチキンだろ」
「サトシッ!!」
「……チッ」
うーん。今のは危なかった。黒髪ちゃんがサトシ君を叱らなかったら殺してしまったところだ。いや、生き返せるんだしサトシ君一度くらい殺っちゃうかぁ? あ、でもそうなると仲間に入れてもらえなくなっちゃうし。うーん、サトシ君命拾い!
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