未知の旅へ

「銃、欲しいね」


「もう、持たないんじゃなかったの?」




 宿の一階に位置するお食事処でパンを口に含みながら、私は言った。

  

 深雪は顔を上げずに、ただ淡々とパンにかじりつきながら私の話を聞いた。




「ここには、人以外の脅威があちこちに存在する。もちろん人も、日本とは比べ物にならないほど脅威になり得る」


「だから、武力を持つの?」


「何でだろうね、怖いんだ。どれだけ人を傷つけまいと振舞っても、結局自分の身が一番可愛いんだ」


 


 落ち込む私。

 

 それを見て深雪は席から立ち、私の方に歩み寄ってきた。




「大丈夫、責めてるわけじゃない。私は、心結が戦う姿をもう一度見たい」


「私は、もう一度銃を手に取っても大丈夫かな」


「心結のやりたいようにすればいい」


「そっか、ありがと」




 最後のひとかけらを頬張り、立ち上がる。

 



「よしっ、そうと決まれば出発するか!」


「うん」




 私たちはこれから、鍛冶が盛んな街へ移動する。


 そこで、今私が手に持っている設計図に書かれてあるものを作ってもらう。


 そこに書かれてあるのは紛れもなく、拳銃と銃弾だ。


 覚悟は決めた。


 私はもう一度立ち上がり、戦う。


 この世界を生き抜くために。


 


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