第10話 限定とは

【おっさん】ケンちゃん食堂part3【ニシダ】


無名の探索者@自称ファン1号

 店行ってきたぞ!


無名の探索者

 どうだった?


無名の探索者@自称ファン1号

 ハイオークとミノタウロスのハンバーグ食ったんだが、激ウマだった。今まで食ったハンバーグの中で断トツ


無名の探索者

 限定200食にありつけるとは運がいいな


無名の探索者

 限定とは


無名の探索者

 200食から500食に変更されてたぞ


無名の探索者

 500てwww


無名の探索者@自称ファン1号

 いや、めちゃくちゃ客いたから、たぶん200じゃ全然足りんかったと思う


無名の探索者

 マジか


無名の探索者@自称ファン1号

 しかも1500円だぞ。毎日でも食いたい


無名の探索者

 1430円な


無名の探索者

 下層の魔物の肉なんてまず市場に出回らんからな


無名の探索者@自称ファン1号

 ただ理解できないことが色々あってな


無名の探索者

 詳しく


無名の探索者@自称ファン2号

 俺も行ってきた。11時過ぎだったけど、すでに大行列。50人くらい並んでたかな


無名の探索者

 ケンちゃん一人で切り盛りしてんだろ? 回らんやろ


無名の探索者@自称ファン2号

 それが並んで10分くらいで入れたんだ。回転率すごい。注文したら20秒くらいで料理来たし。……というか、気づいたときには目の前に料理が置かれてた


無名の探索者

 どういうこと?


無名の探索者@自称ファン1号

 マジそれなんよ。いつ置いたのかも分からん。そもそも注文は「その場で適当に叫んでください」って書いてるから、ほんとに叫んだだけ


無名の探索者

 は?


無名の探索者

 斬新すぎる注文方法で草


無名の探索者@自称ファン2号

 意地の悪い三人組の客が、同時に別々のメニュー叫んでたんだが、ちゃんとそれ通りに来たし。そろって真顔になってたな


無名の探索者

 支払いは?


無名の探索者@自称ファン2号

 現金のみ。お金をテーブルに置いたら、勝手に消える。お釣りがある場合はお釣りが置かれてる


無名の探索者

 もはや手品ショーじゃんwww 料理よりもそっちが気になって行きたくなってきた


無名の探索者

 ケンちゃん何人おるんや


無名の探索者@自称ファン1号

 厨房の中ちらっと見たら、ケンちゃんが10人くらいいるように見えたぞ


無名の探索者@自称ファン2号

 見えた見えた! 軽いホラーだったわw けど一番怖かったのは……


無名の探索者

 やばい怖い


無名の探索者

 え、それより怖いことあんの?


無名の探索者

 すでに恐怖で震え止まらんのやが


無名の探索者@自称ファン2号

 あの店、外から見るとこじんまりとした感じなのに、中に入るとめちゃくちゃ広いんだよ。おかしいなと思って店を出てからぐるっと建物の周りを見てみたけど、やっぱりあんなに広いはずがない


無名の探索者

 ひいいいいいいいいいいいいっ!


無名の探索者

 空間が歪んでる?


無名の探索者@自称ファン1号

 あー、言われてみたらそうかもしれん。店内のレイアウト、思い返すとなんか無理やり空間を押し広げたような感じだった


無名の探索者

 怖すぎて草


無名の探索者

 テレビで取材してみてほしい


無名の探索者

 放送事故になるだろw



   ◇ ◇ ◇



『それでは、ケンちゃん食堂の大繁盛を祝って、かんぱーい』

「かんぱーい」

『かんぱーい』

『ぱいかーん』


 河北の画面越しの音頭に合わせ、みんな一斉に手にした酒を掲げる。


 ダンジョン配信の大成功により俺の店が人気店になったことを、古くからの友人たちがリモートで祝ってくれていた。

 それぞれ離れたところに暮らしているため、なかなか直には会えないものの、こうして一緒に酒を飲めるのは幸せなことだった。


『まぁおれっちの的確なアドバイスのお陰だけどな』


 河北が早速、自分の手柄をアピールしてくる。

 否定はできないが、なんか癪だ。


『機材一式をあげたオレも割と貢献したと思うぞ』


 と、続いて東口。

 確かに機材は助かったけど。


『僕は陰ながら成功を祈っていたよ。きっとそれが通じたんだろうね。さすがに6割は言い過ぎかもしれないけど、5割は僕の功績と言っても過言じゃないはず』


 最後の一人、南野が横暴な主張をぶち込んできた。

 もちろんただの冗談なのでスルー一択である。


 ちなみにこの四人の中で唯一、南野だけが既婚者だ。

 しかも子供が5人もいるので、なかなか時間が取りづらいのだが、今日は俺のためにこの会に付き合ってくれていた。


「あ~、何にしても勝利の美酒は美味いな」


 客が殺到するようになってから早くも二週間ほどが経ったが、客足は未だ鈍るどころか増え続けていた。

 ハイオークとミノタウロスの肉はかなりの量のストックがあったのだが、すでに底をつきかけているほど。


 明日は定休日なので、ダンジョンに潜ってまた調達してこようと思っている。

 先日のイレギュラーで立飛ダンジョンは一時立ち入りが禁止されていたが、その原因が排除されたので、再び入れるようになったようだ。


『下層の魔物、グリフォンが上位種のブラックグリフォンに進化していたんだってな』

「ああ。それで下層の魔物が中層に逃げていたらしい」


 ダンジョンの魔物はごく稀に上位種へと進化することがあるのだが、今回はそれによって下層における縄張り争いに変化が生じ、中層にまで影響を与えていたようだ。


 そのブラックグリフォンを管理庁の依頼を受けたパーティが討伐したことで、現在は元の状態に落ち着いているという。


 お酒を煽りながらそんな話をしていると、不意に河北が訊いてきた。


『ところでケンちゃん、次の配信はいつやるんだ?』

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