ペテンタイムマシン
ボウガ
第1話
ある科学者が、研究がうまくいかないのでうなだれて、ついに占いやら、呪いやらに手を出した、未来の自分が見たらどう思うか。などと不安に思いながらも、今日は“当たる”と噂される占い師のもとへやってきた。
「あんたの夢、かなえてやろうか?」
そういうと占い師は、一枚の紙をさしだした。それは占い師がもつには不可解なほど緻密な設計図や、数式の書かれた資料だった。
それを研究室にもちかえり、研究すると、研究も実験もうまく進む。男はその占い師に依存しはじめた。しかし、占い師は確かにこうすればいいとかああすればいいとか、この後数週間後どんな事件がおこるとか、そういうことを当てたりするが、もう一つ奇妙なのは、科学に対して異常なほど、自分に肩を並べるほど詳しく、専門分野も一致していることだ。不思議な女性だ。これだけ知識を持ちながら、占いなどというものをしているなんて。
しかし、彼は感謝していた。オカルトに頼らなければいけないほど疲弊していた。というのも、女性関係のみならず、彼は友達がすくなかった。あるとき、数少ない友達に彼女のことを話すと、一緒にあそびにいくのはどうかと提案された。その通りにすると、占い師は思ったより乗り気で、それから二人はプライベートでもよく合うようになった。そのころすでに占い師の手を借りずとも、自分の能力だけでタイムマシンを完成させられるようになった彼は、それでも困難を超える方法を教えてくれる彼女に感謝していた。もし自分ひとりでやっていたら、たどり着けなかった答えの数々、それが完成せずとも、彼女に一生かけても恩を返そうとおもった。その思いを消して絶やしてはいけないと。
あるとき、ため息の多くなった占い師、そんな彼女のもとに彼から連絡があった。今まで連絡を何か月もほっておいたのに、その文章はあの時親しくなってからあまりにも変わらない様子だった。
彼らはディナーをした。なにやら科学者の男はもぞもぞしている。食事が終わるとき、近くにいた店員があつまってきて、突然店内BGMが流れる。そして彼がひざまずくと、指輪をさしだされた。
「プロポーズ!?」
彼女が驚くと、彼は言った。
「まだ手さえつないでいないんだ、いつになってもかまわない、とりあえず結婚を前提ということでお付き合いをしてくれないか」
これまでのよそよそしさがウソだったように、素直な愛をささやき、素敵なディナーがおわると、場所を移動する。部外者が厳重に立ち入り禁止とされている研究所である。浮かれた気分で研究所のセキュリティをやぶりやがて、占い師を研究室に招待すると、タイムマシンのある場所へ案内し、またあとでこようと自室へと誘った。
熱い夜をすごしたあとに、仮眠用ソファで彼はいいはなった。
「君は気づかなかっただろうけど」
しかし、占い師は彼の口を塞いだ。
「サプライズでしょ?知ってる、このドアをあけて、早く“タイムマシン”をみにいきましょう」
科学者は、あきれながらも彼女をうけいれた。もしかしたら彼女はこの研究所と関係があるかもしれない、そう思っていた、きいたことがあった。服をきながら、思い出したことをはなす。
「この研究所に以前つとめていた優秀な若い女性が姿を消したと、タイムマシンにのって。それがきみだろ?」
「ええ、そうかもしれない、でもそうじゃないかも」
曖昧な返事を流して、彼女とともにタイムマシンの前へ。
覆われたシートをはがし、彼女にタイムマシンを披露する。彼女は、わかっていたはずなのに泣いて喜んだ。
そして、彼にだきついた。かと思いきや、男は腹部に固いものがあたっていることにきづいた。それが気になり手を伸ばす。
「ナイフか?」
いや、それは銃口だった。
「よしてくれ!!」
といおうとした。だが彼は、話しながらすでに目線をおろしそれが意味のない抵抗だときづいていた。消音装置のついた銃は、すでに何発もの弾丸を発射していた。彼は血を流してその場に倒れた。彼を見下ろしながら、占い師はいった。
「先ほどの話……ええ、そうね、“彼女”こそ私、けれど私は元の世界へ戻れない、過去の世界の私を殺した影響かしら……でもあなたが悪いのよ、その原因をつくったのはあなた、正常な歴史でも、私がいなければタイムマシンがつくれなかったのに、あなたはこの10年後、私と関係のないモデルの女と突然結婚するのだから」
ペテンタイムマシン ボウガ @yumieimaru
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