第7話 嫉妬してくれたの?

「はい、本日はありがとうございました」


(歩き出す千歳、ヒールの音がする)

(千歳に近づく主人公)


「えっ? あんた、どうしてここに?」


「もしかして、迎えにきてくれたの?」


(頷く主人公)


「! ふふっすごく嬉しいわ。ありがとう」


(千歳、主人公の腕に抱きつく)


「はぁ〜、あんたの顔を見たら疲れが吹き飛んでったわ」


「えっ? 腕に抱きつくな。会社の人が見てるぞって? いいの見せびらかしちゃえば。だって、私とアンタの関係なんだから」


(衣服が擦れる音)


「さっき私が話していた人は同僚よ。一緒に残業していたの」


「そうねー。たしかし、よく一緒になるわね」


「ん? 拗ねた顔してるけど、どうしたの? まさか……えいっ」


(主人公の頬っぺたを指でつつく千歳)


「もしかして、嫉妬? 私が他の男の人と居たから」


(主人公、先を歩く)

(引き留める千歳)


「あっちょっと待ちなさいよ! もぅ、図星だからって先に行かないでよ」


「違うじゃない! 声震えてるわよ」


(たじろぐ主人公)


「ちゃんと話を最後まで聞きなさい。結論、同僚とは何もありません。ただ仲のいい同僚ってだけなの」


「えっ? 相手が私に好意を抱いてるんじゃないかって? それはないわね。あっちには大切な奥さんと娘さんが居て、雑談の9割が家族のノロケなんだから。私はそれを聞いて、羨ましいなって思ってるだけ」


「だから本当に同僚とは何もないのよ……それに、私には大切な人がいるんだからね」


(千歳、主人公の手を握る)


「ふふっ手を繋ぐのは、久しぶりね。幼稚園以来かしら? このまま歩いて帰りましょ?」



(手を繋ぎながら歩く千歳と主人公)


「小さいからしか手を繋いだことがないから、あんたの手がこんなにあったかいなんて知らなかった。私の手は冷たいでしょ?」


「冷たくてちょうどいい? あんたらしい回答ね」


「私もとっても気持ちいいわ。温かくて、とても安心する」


(少し間を置いてから)


「……ねぇ、私、今すごくドキドキしているわ。なんでか分かる?」


「きっと、あんたと手を繋いでいるからね」


「……昔ね、あんたとずっと手を繋ぎたいって思ってた。2人で帰る帰り道、並んで歩いてるから何度も手が当たって、それだけでドギマギしたの」


「でも、あんたは私と違って気にしてなくって、すごく腹が立ったのを覚えているわ。なんで、私ばっかりドキドキしないといけないのよってね」


「あの時は手を繋いでいなくてもすごくドキドキしたけど、今はそれ以上かもしれない。顔熱いし、ドキドキして心臓が壊れそう」


(千歳、隣を歩く主人公の方を向く)


「あんたは……同じみたいね。だって耳まで真っ赤になっているから」


「嬉しいわ。私を少しら意識してるってことでしょ? いっぱい意識しちゃっていいのよ?」


「だから、一緒にたくさんのドキドキを経験しましょ? あんたとなら大歓迎よ」



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