第5話 この行為には、ちゃんと訳があるのよ
*
(床を歩く音)
「おはよう。昨日はちゃんと眠れた?」
(頷く主人公)
(主人公の前の席に座る千歳)
「関心関心。私が注意した日からちゃんと寝ているみたいね。寝ていないようならいろんな策を練ろうと思ってたのに」
「どんな作戦なのかって? ふふっそれは秘密。いつかあんたに仕掛けるその日までね」
「悪い顔してるって? さて、なんのことでしょうねー。あっ、そうだ。今日は帰りが遅くなるからご飯は用意しなくて大丈夫よ」
「えっ? 最近帰りが遅いけど大丈夫かって? 大丈夫よ。残業続きで嫌になっちゃうけど、あんたっていう癒しが家にはいるから頑張れちゃうのよ」
「ふふっ確かにお互い様ね。あんたも癒されて、私も癒されているならウィンウィンな関係になれているわね」
「……本当に昔とはまるっきり関係が変わったわ。昔なんて私が一方的にあんたに当たって、あんたがそれを受け止めるって感じの関係だったからね」
「例えるなら私がピッチャーで、あんたがキャッチャーみたいなそんな関係」
「あんたが私の言葉を受け止めてくれるのは嬉しかったけど、やっぱりこのままじゃダメだって思ったの」
「どちらか一方が上とか下とかじゃなくて、対等じゃなきゃダメだなって」
(千歳、緊張気味に聞く)
「……どうかしら? 今は対等になれたと思う?」
(主人公、頷く)
「! そ、そっか。よかった。また私の一方的だったらどうしようって思ってたの。すごく嬉しい!」
「はぁ〜本当に今年はいい事尽くめね。あんたと再会できたし、あんたと同居生活始められたし、あんたと対等な関係になれたし……それからそれから」
(身を乗り出す千歳)
「えっ? 全部俺のことなのって。当たり前じゃない!!」
「大切な幼馴染であり、友人であり、親友であり、そして、私の大切な……」
(スマホのアラームが鳴る)
(イスから立ち上がる千歳)
「あっ行けない! 会社に行かなくちゃ。今日は大切な会議があるの!!」
(床を走る千歳)
「スーツ着てるし、カバンの準備もばっちり、身だしなみも整ってるし、大丈夫ね! 唯一の心残りは朝ごはんを食べ損ねたことかしら」
(千歳、玄関前まで走り、止まる)
「あっしまった。まだ、忘れ物があったわ。ちょっとこっちに来てくれない?」
(床を歩く音)
「ふふっありがとう。えいっ」
(衣服が擦れる音)
「驚いた? けど、ちゃんと訳があるのよ。私ね、今、大事な会議の前にストレス感じちゃってるの」
(衣服が擦れる音)
「こうやってハグするとね、ストレスが減るんだって聞いたの。だから、この行為にはちゃんと訳があるのよ?」
「んっ充電完了。なんだか、今日もいい日になるって気がしてきたわ。これもあんたのおかげね」
(千歳、主人公から離れる)
(千歳、ヒールを履く)
「それじゃあ行ってくるわね、"私の大切な人''」
(扉を閉める音)
*
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます