第5話 この行為には、ちゃんと訳があるのよ


(床を歩く音)


「おはよう。昨日はちゃんと眠れた?」


(頷く主人公)

(主人公の前の席に座る千歳)


「関心関心。私が注意した日からちゃんと寝ているみたいね。寝ていないようならいろんな策を練ろうと思ってたのに」


「どんな作戦なのかって? ふふっそれは秘密。いつかあんたに仕掛けるその日までね」


「悪い顔してるって? さて、なんのことでしょうねー。あっ、そうだ。今日は帰りが遅くなるからご飯は用意しなくて大丈夫よ」


「えっ? 最近帰りが遅いけど大丈夫かって? 大丈夫よ。残業続きで嫌になっちゃうけど、あんたっていう癒しが家にはいるから頑張れちゃうのよ」


「ふふっ確かにお互い様ね。あんたも癒されて、私も癒されているならウィンウィンな関係になれているわね」


「……本当に昔とはまるっきり関係が変わったわ。昔なんて私が一方的にあんたに当たって、あんたがそれを受け止めるって感じの関係だったからね」


「例えるなら私がピッチャーで、あんたがキャッチャーみたいなそんな関係」


「あんたが私の言葉を受け止めてくれるのは嬉しかったけど、やっぱりこのままじゃダメだって思ったの」


「どちらか一方が上とか下とかじゃなくて、対等じゃなきゃダメだなって」


(千歳、緊張気味に聞く)


「……どうかしら? 今は対等になれたと思う?」


(主人公、頷く)


「! そ、そっか。よかった。また私の一方的だったらどうしようって思ってたの。すごく嬉しい!」


「はぁ〜本当に今年はいい事尽くめね。あんたと再会できたし、あんたと同居生活始められたし、あんたと対等な関係になれたし……それからそれから」


(身を乗り出す千歳)


「えっ? 全部俺のことなのって。当たり前じゃない!!」


「大切な幼馴染であり、友人であり、親友であり、そして、私の大切な……」


(スマホのアラームが鳴る)

(イスから立ち上がる千歳)


「あっ行けない! 会社に行かなくちゃ。今日は大切な会議があるの!!」


(床を走る千歳)


「スーツ着てるし、カバンの準備もばっちり、身だしなみも整ってるし、大丈夫ね! 唯一の心残りは朝ごはんを食べ損ねたことかしら」


(千歳、玄関前まで走り、止まる)


「あっしまった。まだ、忘れ物があったわ。ちょっとこっちに来てくれない?」


(床を歩く音)


「ふふっありがとう。えいっ」


(衣服が擦れる音)


「驚いた? けど、ちゃんと訳があるのよ。私ね、今、大事な会議の前にストレス感じちゃってるの」


(衣服が擦れる音)


「こうやってハグするとね、ストレスが減るんだって聞いたの。だから、この行為にはちゃんと訳があるのよ?」


「んっ充電完了。なんだか、今日もいい日になるって気がしてきたわ。これもあんたのおかげね」


(千歳、主人公から離れる)

(千歳、ヒールを履く)


「それじゃあ行ってくるわね、"私の大切な人''」



(扉を閉める音)



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