第3話 ねっ、だからもう一度撫でてもいいかしら?
(包丁で野菜を切る音)
(扉の鍵を開け、扉を開ける)
「ただいまー! はぁ〜〜っすごく良い匂い」
(床を歩く音)
「ふふっ、誰かにおかえりって言われるのとっても新鮮だから、凄く嬉しい」
(台所にいる主人公の横に並ぶ千歳)
「ねぇ、今日のご飯は何? へぇ〜カレーかぁ。すごく美味しそう」
「味見していい? ありがとう。あーん。ん〜〜っ美味しい」
「コクがあって、それでいてちょうどいい辛さ」
「ってかあんた、あーんに対して抵抗なくなってきたわね」
「えっ誰かさんのせい? さて、何のことやら」
「あっお皿出すの手伝うわ。それくらいさせてよ。ふふっ」
「ん? どうして嬉しそうに笑ってるのかって? それは、内緒よ」
「いつか教えてあげるわ! いつか。ほら、席について……今日もあーんってしてあげるから」
*
(蛇口を閉める音)
(床を歩く音)
「ごちそうさまでした。うん、今日のご飯もすごく美味しかったわ」
(主人公、マグカップを千歳に渡す)
「ハーブティー? ありがとう。あんたって凄く気が効くわね。隣どうぞ」
(ソファーに座った千歳が、空いたソファーの椅子を叩く)
(主人公、隣に座る)
「ふふっあんたに家事を任せて正解だったわ」
「部屋は常にキレイだし、料理は美味しいし、日用品も補充してくれるし……とんでもなく有能な家政婦を雇ってしまったかもしれないわ」
(ソファが軋む音)
(マグカップをテーブルに置く)
「あんたが来てから、なんだかまたもな生活をようやく出来たって気がする」
(主人公、頷く)
「こらっ前の話を持ち出さないでよ。たしかにあんたが来る前は悲惨だったけどさ」
「部屋中散らかってたって? う〜〜っ。は、恥ずかしいからやめてよ」
(隣にいる主人公の体を叩く千歳)
「……けどこうしてあんたが来てくれたから、助かってる。ありがとうね」
「もぅ、そこは黙んないでよね。こっちまで恥ずかしくなっちゃうんだから」
(少し間があいてから)
「……ねぇ、ちょっと頭を下げてよ」
(言われた通り、頭を下げる主人公)
(主人公の頭に手を伸ばす千歳。頭を撫でる)
「よしよし、えらいえらい」
「何をやってるのかって? 頭を撫でてるのよ。今日も家政婦の仕事を頑張ってくれたから」
(慌てて離れる主人公)
「あっ離れないでよ。これはあんたのためなんだから」
「ほらっあんたを甘やかすって言ったでしょ? 私が仕事に行ってた分、うんと甘やかさないと。ほらっジッとして」
(近づいてくる千歳)
「んっ髪の毛サラサラ。すごく触り心地がいいわね」
「すんすん。ふふっここまで近いとあんたの匂いまでする。私、この匂い好きだな」
(さらに顔を寄せる千歳)
(千歳、囁くように話す)
「よしよし、いい子、いい子。今日もお疲れ様。家事をしてくれてありがとうね」
「いい子いい子。よしよし」
(少し間が空いてから)
「えっ私の方が疲れてるから申し訳ないって? そんなことないわ。家事だって同じくらい大変なのよ? それに、あんたを癒すついでに私も癒されてるの」
(手を離す千歳)
「ということだから、気にしないで。私がしたいだけなんだから」
「ねっ、だからもう一度撫でてもいいかしら?」
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