第2話 あんたを癒してあげるんだから
(マンションの階段を登る音)
(玄関のチャイムを鳴らす)
(しばらくして、扉を開く音)
「はーい! あっやっと来た。もう待ってたんだからね。ちゃんと買ってきてくれた?」
(頷く主人公)
「それにしても遅かったわね。何かあった?」
(話す主人公)
「えっ? 女の人に道を聞かれて話してた。すごく可愛い子だった? むぅ」不機嫌になる
(最後小声になる)
「べっつに、なんでもないわよ。ただムカムカしただけだし」
「連絡先交換してないでしょうね?」
(主人公頷く)
「……ならいいけど、私の断りなく女の子と会っていたら許さないんだからね!」
(いっぱい頷く主人公)
「ならよし。じゃあ、早速つくりましょうか」
*
(お皿をテーブルに置く音)
(椅子に座る音(目の前に座る千歳))
「それじゃあ、あんたが引越してきたお祝いに……」
(手を叩く音)
「引越しそばをいただきます!」
(箸を持つ千歳)
「ふぅふぅ、うん美味しい! やっぱりあんたが作る料理って美味しいわね。蕎麦の茹で加減は完璧だし、天ぷらサクサクだし」
「何、キョトーンとした顔して。えっ? 素直に褒めるから驚いた? 別にいいじゃない、だって本当に美味しかったんだもん。それに久しぶりに食べられて嬉しかったし」
(頬をかく主人公)
「な、何照れてるのよ。本当のことでしょ? 昔からあんたの料理、本当に美味しかったから……小さい頃、よく何か作ってって駄々こねたわよね」
(頷く主人公)
「まぁ、最初はあんたに嫉妬してたのよ? 私よりも上手だったから」
「何でって? ……そんなの決まってるじゃない」
(千歳、立ち上がって主人公の隣に座る)
(主人公の服を引っ張る)
「……それは、私があんたに作ってあげたかったからよ。あんたのお嫁さんになりたかったから」
「て、照れた? ふふっ顔を真っ赤にしちゃって。かわいい」
「ん? キャラが違いすぎる? それはそうでしょ、あんたと別れて6年も経ってるのよ。私だって変わるわよ……ツンツンしたままじゃいられないの。もう、あんたと離れたくないし」
「……ぁっ、さ、さすがに自分で言ってて恥ずかしくなっちゃった。顔熱い。もう、どうしてくれんの! あんたのせいなんだから!」
(主人公を軽く叩く千歳)
「そうよ、あんたが悪い! まったく……さっそば食べましょ」
(お皿を持ち上げる音)
(お皿をテーブルに置く音)
「えっなんで隣の席に座ったままなのかって? いいじゃない。幼馴染なんだから減るもんじゃないでしょ! ふぅふぅ、んっ!あっ」
(少し間を置いてから)
「あれ? あんた全然食べてないじゃない。どうかしたの?」
(事情を話す主人公)
「……そう、辞めてから食欲がないの。少しでも食べなきゃダメよ」
「ほらっ海老の天ぷらだけでも食べなさい。あんたの料理は美味しいんだから。ほら、あーん」
(首を横に振る主人公)
「恥ずかしいって? だって私がこうやらないと食べないでしょ。ほっほら、あーん」
(覚悟を決めて天ぷらを食べる主人公)
「美味しいでしょ? 食べ物は生きるための力をくれるんだから食べなきゃダメよ。まだまたいくわよ、はい、あーん」
「ん、よし。ちゃんと食べれてえらいじゃない。いい子、いい子」
*
「……なんやかんやいって全部食べたわね」
「ううん、気にしなくていいのよ。あんたが食べてくれてよかったって思ったし」
(少し間を空けてから)
「……ねぇ、やっぱりまだ辞めた時の傷は癒えない?」
(少ししてから頷く主人公)
「そうよね。そう簡単には癒えないわよね」
(時計の針の音が聞こえる)
「……決めた。私あんたと暮らしている間、あんたの傷を癒す」
「何を言い出すのかって? だって、あんたには夢に向かって頑張ってもらいたいんだもん!」
「だから、あんたが次に立ち向かえるように、私頑張る」
「あんたは気にせず夢を追いかけて。大丈夫、あんたには私がついてるんだからね」
「そのためにも、あんたをたっくさん甘やかすんだから。ふふっ覚悟してよね?」
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