第1章 あなたの為 ( 3 )

―遥か昔。古代ギリシャには6人の大神がいた。

 彼等は、皆それぞれが強大な能力を持っていた。ひとりは炎を操る能力、ひとりは水を操る能力…、そのどれもが、それひとつで世界の命運をも左右するほどの恐ろしさを備えていた。

 神聖期末。神の世の終わりを悟った神々は、己の能力をそれぞれ自分が認めた人間に譲ろうと考える。

「我こそが能力を受け継ぐに相応しい!」

 神の声を聞いた人間たちは、その偉大な力を我が物にすべく、大きく醜い抗争を始めた。


 壇上が明るくなった。薄汚れた白のウール布を身体に巻き付けた人たちが、袖からステージに駆け出てくる。いかにも古代ギリシャの平民という装いの彼等は、片手に剣を取り「やー!」と声を上げながら、人間の抗争の様を表現した。


―神々は人間達の争いを止めることなかった。それどころか「己の能力を継ぐに相応しい奇跡の人『奇人』は誰なのか」彼等の争いを、ひとつの「娯楽」として注目するようになる。


―水の神、ポセイドン!


 ザバーンッ。巨大スクリーンに激しい波の映像投影がなされる。それと同時に、ギリシャ建築を摸した大型の高台の上に、明らかに人とは違う、まさに「神」という風貌の男。ポセイドン…ならぬ、てみちゃんの推しの光希くんが凛と現れ、争い続ける人々を静かにジッと見下ろした。


―戦いの神アレス!アテナ、アポロン…


 オリンポスの6大神が高台の上に次々登場し、争う人々を見下ろす。下でボロボロに腰を折り戦う人々とは違い、彼等はひとりひとり特徴的な色合いの繊細な衣装を身に纏っている。その立ち姿、立ち位置や間合いまでも、全てが優美で芸術的である。


―そして、人々が特に欲して競い合う、天下無敵の強大な能力があった。全知全能にして、天候を司るオリンポスの主神!


 熱を帯びたナレーション。

 来る…!


 ピシャンッ!と、スクリーンに光る稲妻の演出が起きた後。並ぶ神々の、中心の空いた空間に、ひと際美しい男が悠々と登場した。

ゼウス。…ならぬ勇翔春くん、私の推し。


 わあ…っ!!

 喉元がキュッと締まり全身に熱が伝う。

 古代ギリシャならではの繊細な「美」が計算され尽くした、裾の長い衣装。それと白くて艶やかな長髪を翻し、彼は凛と舞台に立った。


「さあさ、誰が俺たちの『奇人』になってくれるんだい?」


 艶気を含んだ柔らかで低い声。すっと筋が通り先の尖った鼻、そして女性のように鮮やかな色を備えた控えめな唇が、白く透き通った肌に浮いている。美術館の一等地に飾られた彫刻のような美貌を放つ彼に、私の全身にゾワッと鳥肌が立ち、胸が激しく興奮する感覚を覚えた。この興奮も、胸の高鳴りも、一体どう納めれば良いのだろうか。


―舞台「奇神」!これは、人々が神の力を手に入れるまでの物語!



 舞台の幕間。化粧直しや物販などで席を立つ人達がいる中で、私とてみちゃんは2人して感動の涙を流していた。

「もう奇神ステ最高!大好き!」

「それな、私たちの推し最高!」

 ぺしゃっとなった瞳に浮かぶ涙をハンカチで拭っているてみちゃんに、完全同意だ。第一部でこれほど心を持っていかれるとは。舞台も推しも周りの演者も全てが偉大である。

「ゼウス様が冥界に閉じ込められたところ、本当ヒロイン過ぎて…!」

「あみ丸ちゃんの推し、マジでヒロインだったね!」

 死んでしまった主人公の人間に情が湧いてしまったゼウスは、彼を助ける為に危険を顧みず冥界に渡った。冥界で能力を使えず、非力な人間に成り下がってしまった彼は、冥府の王に捕えられてしまう。第二幕では、そんなゼウスを救うべく、他の神々と主人公が躍動するストーリー展開となる。

「ラスト知ってるけど、知ってるけど2部どうなるの!」

「ポセイドンのあのシーンどうなるかなー」

「きゃー分かる!私死んじゃうかも!」

 一部の感想と、これから始まる第二部に対する期待で、特に推しの見せ場が待っているてみちゃんは発狂寸前だった。私も冥界で捕まってしまったヒロイン同然のゼウスの行く末を想い、またボロボロと涙を落とす。

「もう本当、春くん美しすぎる…!」

 まだ推しが目の前のステージにいたという実感が無い。それは多分、日常とはかけ離れた世界観と、それを限界まで追求したクオリティの高い舞台だからだろう。

「うちわ持てる?」

「分かんない、けど頑張って持つ!」

 舞台という夢が一向に醒める気配はないが、確かにこれは目の前で起こっている事。それを自覚させてくれるのが、舞台の最後にあるライブパートである。

「やばーい、今の顔推しに見せられなーい」

「私も直そー!」

 足元に置いてある痛バッグの中をガサガサ探り、コンパクトサイズの手鏡を出して化粧直しを始める。頭の中は「あれほど美しい推しが、この後私の横を通るかもしれない」でいっぱいだ。推しの視界に入るかもしれないと思うと、出来るだけ顔を直しておきたい。そうしてる間に、15分の休憩はすぐ終わる。

「わーん、もうちょっと直したいのに!」

「トイレ行って直せばよかった!」

 アナウンスが流れて、ホールを出ていた人たちが一斉に戻ってくる。休憩時間を勿体なく過ごした後悔を抱きつつ、私たちはワタワタ化粧道具をバッグにしまう。

 そのタイミングで劇場全体が暗転し、舞台の第二部が幕を上げた。



「ポセイドン〜!全然力が使えないよ助けてよ〜!」

「ええい!それを承知で冥界に落ちたんだろ、このバカ!寄るな!」

 ナヨナヨと身体をくねらせ、ゼウスがポセイドンに縋り付く。え、今の春くん可愛すぎない?


「冥界ごと地上に引き摺り出して、俺の雷でボカーン!よし、作戦はこれで行こう!」

「全知全能無いとポンコツだな」

「はいそこー!聞こえてますけど!」

 ビシィッと冥界から脱出する作戦を決めるゼウスに、周りから総ツッコミが入るシーン。あははっと笑いながら、弄られてる姿と普段の春くんが重なってキュンとなる。


「ふははは!人間!よくぞ救ってくれた、ここから先は全て俺に任せろ!」

 最後の戦いのシーン。先ほどのお茶目な姿とは打って変わり、神の風格を感じさせる、威厳ある演技に変わる。

 高台に立つゼウスの足元に白いスモークが出てきて、まるで彼が雲の上にいるかのような演出をする。いよいよクライマックスだ。

 ゼウスは、道中で取り戻した自分の身長ほどの長い杖を天に掲げ、杖先にビリビリと稲妻を集める。そして…

「雷鳴よ轟け!神風雷鳴斬しんぷうらいめいざん!」

 杖を勢いよく振り下ろした瞬間、世界が眩い白一色に染まった。それは同時に、この戦いのストーリーに終止符が打たれたことを私たちに教えてくれた。



 ゼウスが必殺技を打ち、戦いが終わったシーン以降は正直記憶が曖昧だ。

 確か、主人公とその周りの人たちがいつもの日常に戻り、また戦いに明け暮れる日々が続いていくのだった…、とかそんな感じだったと思う。

 こんな前方の席に座りながら舞台に集中出来ていない事を申し訳なく思うが、当時の私はまともに観劇をできる状態じゃなかったのだ。

 ああやばい、むり、むりむり緊張する!

 クライマックスを過ぎて物語が終わるということは、お目当てのライブパートが近いという事。つまり、もうすぐ春くん達がアイドルのように歌って踊って、私たちのいる客席に降りてくるという事だ。

 もしも横を通ったら?そしてうちわに気付いてファンサービスまでしてくれたら?

 そんな妄想が頭の中いっぱいに広がっていて、視線は舞台の方を向きつつ自分の世界に入り浸っていた。

 そして、舞台が暗転して、これまでの世界観を覆すようにギラギラとした無数のレーザー演出が始まる。流れ始めた曲の曲調は今時のJ-POPという感じで、勢いあるものだ。

それが始まると、私は周りの観客に合わせて、バッグからペンライトを取り出し白い灯を灯した。まるでアイドルのライブのような世界観、ライブパートの始まりである。


 本編中にもミュージカルみたく劇中歌を歌う場面は結構あった。だがそれらは全部ストーリーに関係のあるもので、私たち観客に向けたものではない。だが、今からは違う。

「よお、人間達ー!盛り上がってるかー!」

 ギラギラしたゼウスの声が勢いよくホール内に響き渡り、それに続いてオリンポス6大神が登場した。本編の衣装とは違う。軍服をアレンジして、そこにポップなモチーフを施したアイドル衣装をみんな身に纏っている。かっちりした襟に、フランジの付いた肩章で制服感を出しつつ、胸のネクタイはそれぞれのイメージカラーで、個々の衣装に差を付けていた。ゼウスはもちろん白色。

「俺たちの歌がみんなに届きますように!」

「きゃー!ゼウス様ー!」

 レスポンスの歓声に、私の感情全てが乗っかる。だって、あまりにもかっこ良過ぎるのだ。他の神様たちも勿論かっこいいが、特にゼウス様はずば抜けていた。

『夜の瞬き、胸の奥、溢れてくる想いを教えて』

 1曲目。歌いながら、さらりと長髪を翻し軽やかなターンを決めると、次の瞬間にはキレのある動きで踊る。演劇で2時間以上動いた後とは思えぬ大胆なダンス。かと思えば、歌声は透き通るように透明で柔らかく、全身で私たちを魅了してくる。

『君だけを見つめてる、どんな未来だって、紡いでいこうよ』

「ぎゃー!」

 サビの最後、絶妙なタイミングでウインクを決めた彼に、私を含め客席から黄色い歓声が飛ぶ。ファンサービスが手厚い春くんならやりそうな事であり、且つ、お茶目で女たらしなゼウスというキャラクターならやりそうな事だ。解釈の一致である。

 あっという間に1曲目が終わり、2曲目に移る。前回の時と同じなら、これと次の曲は客降り演出があるはずだ。私はバッグに逆さで突っ込まれている応援うちわの持ち手を握った。

『人間達、今からそっちに行くからねー!』

 イントロの時にポセイドンが叫ぶ。来た!

 一斉に神様たちが、キラキラした歌詞を歌い上げながら、ステージから降りてきた。客席のあちこちで絶叫にも近い悲鳴が上がる。

「きゃー!ポセイドーン!」

 ステージに1人残ったポセイドンにうちわを向けて、てみちゃんが黄色い悲鳴を上げている。ゼウス…春くんはと言うと、私たちと反対の下手側の席を回っていた。私は、時々自分の横を通る他のキャストによそ見をしつつも、うちわとペンライトを持ちながら春くんを目で追い続けた。

 あ、春くんハート飛ばしてる。羨ましい。

 雷撃ってる!いいなあ、羨ましい。

 羨ましい、羨ましい、羨ましい!遠くで春くんが誰かに手厚いファンサービスをする度、それが自分に向けられたものではないというもどかしさと、強い妬み、そして僅かな自己嫌悪が心に入ってくる。

「わああ、あみ丸ちゃん!来たよ!」

「ひえええ!どうしよう!」

 客席の中ほど、ステージと水平になっている太い通路を通って、遂に春くんが私たちの座る下手側の縦通路にやってきた。パニック寸前な私と同じくらい、てみちゃんも取り乱している。

 客席に向かって歌いながら、通路を優雅に降りてくる姿は、まさに王子様。こんな神々しい人がいるのか。口許が隠れるくらいまでうちわを掲げ、息を呑み春くんをジッと見つめ続ける。

 お願い、こっちに気付いて!私を見て、春くん!

 そう強く念じた時。私の奥側に笑顔を振り撒いていた春くんの視線が、ぐいっと手前に曲がり、その延長線上にいた私とパッと目が合った。

 えっ?

 うちわに「ゼウス」と書かれていることに気付いた彼は、ニコッと微笑む。そのままグイグイとこちらに近付いてきて、歌いながら私の顔に目を向ける。そして、

『ねえ、キミの全部、奪っちゃってもいいかな?』

 それは、私のほんの目先での出来事。春くんは、私の顔を覗き込みながらウインクを決めると、次にジグザグと空中に稲妻を描くジェスチャーをした。雷を撃つファンサだ。

 えええ!

「ぎゃあああ!」

 心と口が同時に絶叫した。今の、私に向けてやったよね?そう実感したと同時に、キャパシティの限界値を超えた興奮と、上昇した体温の熱に見舞われて、私は乱れ狂った。

「うあっ、ぐす」

 一瞬の硬直。からのぶわっと大粒の涙が溢れてきた。せっかく目の前に春くんがいるのに、その姿がぼんやり滲んでしまう。

 春くんからファンサを貰ってしまった。嬉しい、嬉しすぎる!今だけは、今この瞬間だけは、春くんは他の同担とか誰のものでもない、私だけのものだ。私がトップオタクなんだ!

 大きな喜び、圧倒的な優越感、満たされる支配欲。それ以外にも色々な感情が渦巻いて、私は気付けば号泣していた。

「うわあああん」

 もう後はどうとでもなれくらいの気持ちで、ボロボロと涙が落ちて止まらない、ぐしゃぐしゃの顔を伏せた。今日来た目的は果たしたのだ、もう悔いはひとつもない。

「あみ丸ちゃん!」

 その時、てみちゃんが慌ただしく私の背中をバシバシと叩く。ごめん、てみちゃん。私はもう燃え尽きたんだ。

「あみ丸ちゃん!顔上げて!お願い!」

 何だろう。彼女のあまりの慌てぶりを不自然に感じた私は、恐る恐るゆっくり顔を上げた。

 え、どうして?

 春くんが目の前にしゃがんでいた。私より少し目線の低い位置から私を見上げている。顔と顔の距離は僅か十数センチ。彼は少し困った色を含めながらも、柔らかく私に微笑んでいた。ふわっと甘い匂いがする。

 一体何が起こってるの?

 ちょうど曲の間奏だから、目の前でこんな事が起きてるなんて気付かなかった。

 私と目が合った春くんは、綺麗な曲線を描いた二重にキラキラした瞳をくしゃっと細める。そしてマイクを一瞬だけ外し、私に聞こえるようにひと言。

「大丈夫?」



 翌日の夕方。私は自宅のワンルームマンションで、ベッド上に横になり、昨日の春くんからのファンサを思い出しては悶えていた。

「あああ!好きすぎるよう!」

 思い返すたびに胸がドキドキして、アドレナリンが体内でどんどん分泌されている事を感じる。

『熱が全然冷めない。春くん好き過ぎる!』

『あんなの好きになっても仕方ないじゃん』

 スマホを見ながら、私はとして、昂って抑えが効かないこの感情を、止めどなくSNSに投稿していた。

 昨日の舞台のことは、あれ以降なにも覚えていない。確かに観劇はしていたのだが、記憶がそこでプッツリ途切れていた。そもそも、あの公演自体、本当に現実で起きていた事だったのだろうか。

 ただ、終演後に、周りの数人の人達から「おめでとうございます!」と声を掛けて貰ったこと。

 それから、帰りにてみちゃんが、

「私バッチリ見てたから!あの瞬間は完全に彼氏と彼女だった!」

 と、友人のもどかしい恋の現場に立ち会ってしまったかのごとく大興奮していたのだけは、よく覚えている。一連の光景をどうにか映像化して、DVDか何かに焼いて私にくれないだろうか。

 とにかく、あの公演の中で私が1番春くんに構ってもらえた事実が、私のオタクとしての自信と誇りを高める。それに、あんな手厚いファンサービスを私にしてくれた事で、春くんへの好きがより一層大きく増した。


「やば、そろそろ起きなきゃ」

 時計を確認して、朝から興奮しっぱなしの身体をいい加減起こした私は、ベッドを降りて洗面所に向かった。そして歯磨きをしながら、部屋中を見渡してまた幸せを感じる。

 はあ、好きだなあ。

 この部屋は、輝く宝石がいっぱい詰まった宝箱だ。

 壁にはたくさんの春くんのポスターが貼られていて、無駄にたくさん置いてある棚には、春くんが過去に出演した舞台やイベントのアクリルスタンド、その他グッズがいっぱい並んでいる。また、立て掛けたコルクボードには、缶バッジやブロマイドがいっぱいに飾られている。そして、小物は大体春くんが好きなオレンジ色で揃えているので、部屋中どこでも春くんを感じられた。

 私はポスターの春くんと見つめ合いながら歯磨きを終えると、今度は着替えをする。今日はゼウスの白でも、春くんのオレンジでもない。黒くて丈が短めのワンピースを選んだ。

 そしてローテーブルに置いた鏡と向かい合って、次は化粧を始めるべく、ぱっつんの前髪をクリップでくくった。

 化粧水を肌にはじいてから、丁寧に化粧下地を付ける。そしてブラシでファンデーションを顔全体に広げ、コンシーラーとフェイスパウダーでベースメイクを仕上げた。

 次にアイメイク。今日は春くんを感じたいから、オレンジと暖色系のアイシャドウを重ねる。私は丸顔だから、できるだけシャープな印象に。ブラウンのアイライナーを引いたあと、ビューラーでまつ毛をくいっと上げて、マスカラを塗る。アイメイクのポイントはアイブロウを最後にすること。そして最後に、オレンジのチークを入れて、オレンジのリップを付け、仕上げに化粧ミストを顔にかけて今日の私は完成だ。

 よし、出掛けよう。

「行ってきます、春くん」

 鏡で全身を見て身なりを整えると、私は外に出た。



 平日18時頃の北千住駅は、人で溢れかえっていた。そもそも乗降者数の多い駅だが、この時間帯は特に多い。

 私はJR改札を出ると、エスカレーターで列を作る人達を横目に階段を降りて、西口のペデストリアンデッキの駅前広場に出た。大勢の人が行き交っている。

 正面のビルには大型モニタ、そして右手には大きな商業施設がある。私は、この施設には時々足を運んでいる。というのも、この施設の最上階は劇場になっていて、時々2.5次元舞台が催されているためである。

 だが、今日の私はその施設と真反対の方向へ歩みを進めた。

 広場のエスカレーターを下ると、目の前にひしめき合うように酒場が立ち並ぶ、飲み屋横丁(通称飲み横)が現れた。

「さてと」

 私は飲み横へ足を踏み入れる直前、すうっと軽く深呼吸をした。

 脳裏に浮かぶ昨日の春くんの姿が、私に勇気とモチベーションをくれる。大丈夫、私は春くんに愛されている人だし、春くんの為なら何だってできる。そう気合いを入れた。


 私頑張って来るからね。待ってて、春くん。


 飲んでいる人たちや、客引きの声がガヤガヤと耳に入って来てノイズに感じる。車1台分くらいの、狭くて人でいっぱいの道を歩きながら、私は今日の目的地へ向かった。

 足取りは重く、不安でいっぱいだった。

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