第23話 サファイアドレイクとの戦闘

 「いけ!」


 老人の命令でブルードレイクたちが僕に向かって襲いかかってきた。

 僕は短剣を真横に一閃した。


『クリティカルヒット!』


 今度は真横に切れ目が入り、ブルードレイクたちは真っ二つに切り裂かれた。

 大きな音とともにブルードレイクが倒れる。

 か細い声を出し、ブルードレイクたちは息絶えた。


「…。おい嘘だろ?」


 その光景を見て戦士ウォーリアーの男は呆気にとられていた。


「ちょっとワーク…。」


 エミリスは呆れていた。


「ふん!じゃがこれならどうじゃ!」


 そう言うと老人は残っていたサファイアドレイクに指示をだした。


「次はあの女のおなごと男を喰い殺せ!ガキはその後じゃ!」


 …なんか僕だけ言い方ひどくない?…じゃなかった!


 僕はサファイアドレイクがエミリスに攻撃するのを阻止した。そして短剣でサファイアドレイクを切りつけた。


『クリティカルヒット!』


 僕の攻撃は当たったが、希少種プレマだけあって鱗に傷をつけただけで本体にはダメージが入っていなかった。


「やっぱり1匹を相手するのがやっとか…。」


 その間に残りの2匹がエミリスたちに向かって襲いかかる。


「ッ!エミリス危ない!」


 僕はエミリスに向かって叫んだ。戦士ウォーリアーの男はサファイアドレイクを見て腰を抜かしていて完全に戦意喪失していた。

 そんな様子を見てエミリスはため息をついた。


「大丈夫。私はアルマンの孫よ?こんな魔物に勝てないんじゃ立派な冒険者になれないわ!」


 そう言ってエミリスは杖を構えて詠唱を始めた。


「"数多の氷塊よ…。凍てつく氷の刃となりて敵を貫き続けよ!"」


 エミリスの頭上にたくさんの氷の刃が出現した。


「【氷刃一斉連撃アイシクルブレードバースト】!」


 エミリスが放った氷の刃がサファイアドレイクたちの身体を貫通していとも簡単に倒していった。


「…。」


 戦士ウォーリアーの男は言葉が出ず、ただ立ち尽くしていた。

 それを見ていた僕は


「うん!心配しなくてよかった!さぁ僕も1匹は倒さないと…。」


 と安心して向きなおって目の前の敵に集中することにした。

 サファイアドレイクは大きく口を開け、僕に向かって炎の息を吐いた。


「"見真似ペースト発動!"【スピド】!」


 僕はすぐさま自分に【スピド】をかけて間一髪で炎を避ける。


「あっぶな…。」


 そして素早く間合いに近づき、サファイアドレイクの身体の一部分に狙いを定めて何度も切りつけた。


『クリティカルヒット!』

『クリティカルヒット!』

『クリティカルヒット!』


 そう…同じ場所に攻撃し続ければたとえどんなに固い鱗でもいつかは砕ける。

 そして予想通り鱗が砕け、サファイアドレイクの皮膚が見えた。

 僕は短剣を持ち替え、


「くらえぇ!」


 そう叫んでサファイアドレイクの身体に短剣を突き刺した。


『クリティカルヒット!』


 サファイアドレイクが雄叫びを上げる。僕は構わず、持っていた短剣を力いっぱいに切り上げた。


『クリティカルヒット!』


 サファイアドレイクの身体は大きく裂けて、そのまま倒れた。


 召喚されたブルードレイクとサファイアドレイクを倒し、残るは老人だけになった。


「さぁどうしますか…。まだやるんだったら僕たちは戦いますけど…?」


 老人はやれやれと言った感じで杖を持ち直した。


「ふん…。どうやらわしはぬしらの強さを見誤ったようじゃな…。じゃがぬしら…まさかわしがこれだけしか呼べんと思っておるのか?」

「なんですって…?」


 老人は杖を天に掲げた。


「ぬしらがてこずっていたサファイアドレイクを今度は10…いや、20匹呼んでやろう!」


 老人の目の前に魔法陣が出現した。


「ワーク、どうしよう…。20匹を相手って魔力が持たないよ…。」


 エミリスが自信なさげに僕の方を見て言った。


「いや…。僕もさすがに…。」


 僕は首を横に振った。


 20は無理だよ…。さすがに死ぬって…。


「もうだめだ…。俺たちは逃げれないんだ。」


 そう言って戦士ウォーリアーの男も頭を抱えて絶望した。


「ハッ!せいぜい、ぬしが連れてきたあの2人のように喰われぬよう逃げ惑うことじゃな…。さぁ来るのー」

「…やめて。」


 老人が召喚しようと瞬間、老人の目の前に突然女の子が現れた。


 えっ?どこから出てきたの…あの子?


 驚いている僕たちを無視して老人は少女に向かって話し始める。


「なんじゃ?わしの邪魔をするのかヨーキよ…。今いいところなんじゃが…。」

「それくらいにしないと。ダヴァン、あなたの目的は達成したはず…。」


 あの人、ダヴァンって言うのか…。


 ダヴァンと呼ばれた老人は少女に反論した。


「じゃが、やつらはどうする?見られたからには消さんといかんじゃろ。」

「リューマが帰って来いと言っても?」

「…ッ!」


 その言葉に老人は動揺していた。そして少し考えた後、


「…分かったわい。それじゃここを去るとするかの…。」

「よかった。それじゃあ転送門ゲートを開く。」


 そう言うと少女の目の前に転送門ゲートが現れた。老人が転送門ゲートに入る前に僕たちを見る。


「命拾いしたなぬしら。じゃが次に会った時は手加減せんからな…。」


 そう言うと老人は転送門ゲートの中に入っていった。そして今度は少女が僕を見て、


「また会いましょう…ワーク。」


 とニッコリ微笑み、転送門ゲートの中に入っていった。


 あの子、なんで僕の名前を…?


 とりあえず、難を逃れた僕たちは戦士ウォーリアーの男を連れてギルドに戻ったのだった。



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