第4話 迷い込んだ森で…。
最悪だよ…。まさかここまで運が悪いなんて…。
僕はプレートを見て、見習いがなぜ最弱の"はずれ職"と言われているかが分かった。
まずステータスが低すぎる…。
ステータス
攻撃力:G
魔力:G
防御力:G
素早さ:G
運:G
ステータス全部Gって…。Fなら聞いたことあるけどGって…。僕はゴキブリか何かなのか?
せめて攻撃力・魔力はもうちょいあってもよかったんじゃない…?。一応、ましなスキルはないかと専用スキルを確認してみた。
【
これ結構いいスキルだけど全ステータスGの僕にとっては雑魚スキルでしかないよ…。
はぁ、このまま旅をしないで終わるのかな…。アルマンの教会の手伝いも悪くないかもな。その内に僕の不運も消えたりして…。
そして専用スキルの他にもう1つ『固有スキル』と表示された項目が目に入った。
固有スキル
【鑑定眼】:エリア・冒険者・魔物・道具などの目に映ったものの詳細をすべて知ることができる。
【
【?】:まだ発動されていないため、表示できません。
固有スキル…。そういえば、あの神様、転生ボーナス与えるって言ってたな…。
【鑑定眼】は説明を受けたから表示されているのか。というかこの【
僕が捨てられたのも"はずれ職"になったのもこのスキルの不運が発動したからなの?
ん?なんか追伸って書いてある…。
追伸:無事転生できたかしら?あなたの不運をどうにかしようとしたんだけど、だめだったわ😜
本当あなたが初めてよ。女神の私でもどうしようも出来ないものなんて…。
だから少しでも軽減できるように半々の確率で発生する固有スキルに変えておいたから。何かと不便だろうけど頑張ってね♪ byハーティ
神様でも消すことの出来ないって僕の不運ってそんなにすごいの…?。
つまり僕の不運も含めて、実質3つ固有スキルもらってることになるのか…。
じゃあもう1つの表示されていない『?』はどんなスキルなんだろう…。気になるな…。
まずは女神から説明を受けていた【鑑定眼】のスキルを使ってみることにした。ちょうど僕の目の前にはエミリスがいる。
たしか説明には心の中で唱えると発動するって書いてあったな…。
(【鑑定眼】!)
エミリスを見て唱えると目の前に文字が表示される。
エミリス=ラインハルト
ステータス
攻撃力:E
魔力:A
防御力:E
素早さ:C
運:C
やっぱり
「ねぇ…。」
ステータスを見ているとエミリスが気づいて僕に近づいて来た。
「さっきから私のことジロジロ見てるけど何か用?」
「あっごめんなさい。なんでもないです…。」
僕の言葉を聞いてエミリスは
「ふーん、まぁ、見習いは見習いらしく頑張っておじいちゃんの仕事手伝ってあげてね♪私はその間、レベル上げしてくるから。」
と言って家に戻って行った。
なんか馬鹿にしている感じが気にいらないな…。いつかギャフンと言わせてやりたいよ…。
僕はエミリスが帰った後、アルマンにプレートを渡し、自身のステータスとスキルを確認してもらった(ちなみにアルマンには女神の追伸は見えていない)。
「うむ…お主のステータスだとフガイの森の魔物を倒すことはおろか、スライムを倒すことも難しいのう…。」
アルナ村のすぐ近くに「フガイの森」と呼ばれる森があり、冒険者はそこで魔物を倒し、レベル上げをするそうだ。
エミリスもそこでレベル上げをしたり、倒した魔物から出る素材を売って、お金を貯めている。なんでもほしいものがあるとか…。
ワンチャン、魔物を倒せればと思ってたけど、分かってた…。やっぱり無理だよね…。
次にアルマンはスキルの項目に目をやる。
「ッ!なんと!」
固有スキルを見つけると驚いていた。
「あの、どうしました?」
「あぁ、すまぬ。固有スキルがあることに驚いてしまってな…。」
…固有スキルって誰でも持ってるんじゃないのか?
「あの…固有スキルってそんなに珍しいものなんですか?」
僕は質問してみた。
「うむ。固有スキルは1000人に1人しかもらえない特別なものなのじゃ。それを3つも持っているとは…運がいいのやら悪いのやら…。」
おいおい...あの女神は特別にとか言ってたけど、なんてものを持たせてるんだよ…。
アルマンはプレートを僕に返してくれた。
「じゃが、どのみち、見習いであるお主は魔物を倒す前にやられてしまうのじゃがな…。」
ですよね…。
「そうじゃ。仕事を始める前にこれを渡しておこう。」
そう言って、アルマンは僕にペンダントを渡した。そのペンダントは小さな楕円形で透き通るように綺麗な石が嵌め込まれていた。
「これは?」
「それはお主が持っていた紙の中に入っていたものじゃ。丁寧に布に包まれていた。多分お主の両親の物じゃろう。大事に持っておくのじゃぞ。」
僕はペンダントをポケットの中に入れた。
その後、僕はアルマンの仕事の手伝いをした。仕事の内容は主に教会内の掃除、祈祷、村の人の相談や雑用など様々だ。
ついでにアルマンの提案で非常時に使えるかもしれないということでアルマンの治癒魔法【ヒール】を僕の【
アルマンは村の人に僕を紹介する時に見習いであることは伝えたが、固有スキルのことは伝えなかった。
最初は僕の
でも、はずれ職の見習いと言うこともあってか…。
「見習いなんてかわいそう…。あんなに小さいのに…。」
「しかし、アルマンさんはなんであんな子を拾ったんだ?」
「しっ!声が大きい。あの子に聞こえるわ。」
と一部の村人からの陰口に僕は嫌気が差していた。その様子に気づいたアルマンが、
「ワークよ、気にするでない。」
と僕の肩に手を置いて慰めてくれた。
「お主はまだいい方だ。この世界では生まれて来たことによって忌み嫌われ、国を追放されるやつもおる。そしてその者が行き着く先は…奴隷になって死ぬまでこき使われる地獄のような人生だけじゃ…。」
そう続けて説明してくれたアルマンの顔は優しく微笑んでいたが目の奥は笑っていなかった。
1日の仕事を終えた僕たちは家に帰る。夕食は昨日よりはマシになっていたがエミリスの嫌がらせは続いているのか他のに比べて量が少なかった。
僕は夕食を食べ終えると部屋に戻り、ベッドの組み立て作業に入った。組み立てるのに時間がかかり、完成した時には村の明かりも消え、真っ暗になっていた。
「もうこんな時間、早く寝ないと…明日も早いし…。」
僕はベッドに入る前にペンダントを取りだそうとポケットに手を入れる。
「…あれ?」
…がいくら探してもペンダントは見つからなかった。
「もしかして...落とした!?どうしよう…。」
帰りの道中で落としたのかもしれない。そう思い、僕は家を出て来た道を戻りながら探した。
一生懸命探していると月明かりに照らされて輝く物を見つけた。
「あっあった。」
僕はペンダントを手に伸ばした。
シュッ
瞬間、ペンダントが目の前から消えた。
「あれ?」
辺りを見回すとペンダントを白い何かが咥えていた。
うさぎだ…。
白いうさぎはペンダント咥えたまま、走り出した。
「ッ!…待て!」
僕は急いでうさぎを追いかけた。うさぎは村の柵を飛び越える。
僕は必死で追いかけ柵をよじ登ろうとしたが立ち止まる。
アルマンからは外に出てはダメだと強く言われている。だがあのペンダントは僕が捨てられた時に持っていた唯一の形見だ。このままなくすわけにはいかない。
…えぇい!もうどうにでもなれ!
僕は柵を乗り越えてうさぎを追いかけた。
ある程度走ったところでうさぎが突然止まり、口に咥えていたペンダントを地面に置いた。そしてうさぎは何かに怯えるように森の奥へ逃げて行った。
「よかった…。」
僕はペンダントを手に取りポケットにしまった。そして来た道を帰ろうとした時に…。
グルルル…。
獣の唸り声が近くで聞こえた。僕は恐る恐る声のする方を見る。
いつからいたのか…。いや、大きすぎて見えなかったのか、僕の身長よりも何十倍もある巨大な熊がよだれを垂らしながら唸り声をあげ、僕を見下ろしていた。
(かっ【鑑定眼】!)
僕は体を震わせながらも鑑定眼で目の前にいるそいつを確認した。僕の目の前に「キラーベア」と表示される。
キラーベアと表示されて僕はアルマンが仕事中に話してくれた内容を思い出していた。
『特にこの森で危険なのはキラーベアに遭遇することじゃ。やつは気性が荒く、すぐ襲ってくる。冒険者数人でやっと倒せる相手じゃ。エミリスにもあいつに遭遇したら必ず逃げるように言っている。まぁお主が間違って森の外にでなければ大丈夫じゃろう…。』
目の前にはアルマンが話していたキラーベア…。
あっこれ…終わった…?
ーーーーーー
○魔物
キラーベア...体長10メートル以上ある熊型の魔物。気性が荒く、獲物を見つけるとすぐに襲いかかる。普段はフガイの森の奥に生息しているが、たまに獲物を探しに森の入り口にいることがある。討伐レベル60
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