第2話 戦況報告

(瀬良君、あなたが回想に沈む前に、ちょっと、戦況を報告しておくわ)


 秘密結社〈天鴉アマガラス〉の開発した世界最高峰の量子コンピュータ実装の人工知能〈SAKURA〉が瀬良の脳にダイレクトに話しかける。

 6G通信による脳神経ダイレクト接続で、瀬良は人工知能〈SAKURA〉と直接、会話できる。ある種のテレパシーのようなものである。


(日本の滅亡を防ぐための【闇ルート】と【光ルート】の二つの戦略のうち、【闇ルート】の未来選択肢は量子コンピュータによるシュミレーションにより、『全滅』と判明しました。簡単に言えば、宿敵である英国国立大衆洗脳機関〈タートルズ〉メンバーの暗殺戦作戦です。いわゆる、クローン、アンドロイド、人工知能などによる代替案によって、暗殺自体が無意味化しました)


(…そうなのか。やはり無理筋だったか)


 瀬良は予想はしていたのだが、思わずため息をつく。

 量子コンピュータはビッグデータの超並列処理により、現実の物理空間で起こる出来事をシュミレーションして、瞬時に未来予測を行うことができる。

 理論上は『未来に起こる出来事を全て言い当てる』ことができるのだが、その精度は収集したビックデータの質と量に左右される。


(やはり、【光ルート】である、人類というか、日本人の脱洗脳作戦という不可能に近い正攻法しか手段はないようです)


(暗殺とか安易な手段では、やっぱり、無理なのか。でも、日本人の脱洗脳自体が不可能ではなかったのか?)

 

(大東亜戦争、あちらの言葉では第二次世界大戦において、旧帝国陸軍は海軍の裏切りによりハワイの真珠湾攻撃を敢行し、米国が参戦して敗北しました。米国占領軍であるGHQは『日本人が二度と戦争を起こせない、アジアの民族の解放など出来ない』ように、日本人のマスコミ洗脳を行い、現在のような事態に至ってます。当時、アジアは日本とタイ王国以外は欧米の植民地でしたが、『大東亜アジア開放戦争』により、ほとんどの国が独立国なりましたね)


(日本人は現在、言わば、仮想現実の電脳洗脳世界〈マトリックス〉を観ていて、現実の世界を観れない構造になってるのか)


(マスコミ洗脳と人口の97%が利用してる検索エンジン、SNS規制などを行うだけで、『それはネットの陰謀論だ』という魔法の言葉マジックワードを唱えれば、コスパ重視の現代人は簡単に思考停止に陥り、洗脳である事に気づく者はいない。あなたのように疑い深い、一部の奇人変人というか、異端者を除けばw)

 

 そう、二十歳の時にネコネコ動画にアップした、ネットの都市伝説考察動画『コンビに弁当は本当に腐らないのか?』がたまたまヒットしてしまい、食品添加物、農薬問題、そして、古代の魔法文明の遺産である『Ochyusha』問題の動画もヒットして、魔法医師達が『Ochyusha』の巨大な嘘に気づいてしまったのが、『陰謀論者』と呼ばれる異端者増加のきっかけだった。


 突然、起こったように見えた、『Ochyusha』による人類殲滅、日本人絶滅計画阻止の戦いに、俺は巻き込まれて行くことになった。

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日本のOchyusha戦争で60万人が戦死してる事を陰謀論者だけが知っている 坂崎文明 @s_f

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