第4章:将来への不安と絆の試練(大学3年)

 時が流れ、気がつけば私は大学3年生になっていた。環境学部での学びを深めるにつれ、私の中で新たな目標が芽生え始めていた。海外の大学院で環境問題について更に深く学びたい。そんな思いが日に日に強くなっていった。


 図書館の一角で留学関連の資料を眺めながら、私は深い溜息をついた。留学への憧れは強くなる一方だったが、それと同時に大きな不安も抱えていた。


(美月と陽菜と、もっと離れることになる……この絆は、本当に保てるのかな……)


 そんな思いが、私の心を重く覆っていた。留学準備を進めながらも、踏み出す勇気が出せずにいた。


 ある日、美月からビデオ通話の誘いがあった。画面越しに映る美月の姿は、以前にも増して?術家らしい雰囲気を醸し出していた。


「琴音、最近どう? 何か悩んでることがあるんじゃないかって気がしてね」


 美月の鋭い直感に、私は少し驚いた。


「実は……留学を考えているの」


 私が告白すると、美月は驚いた様子だった。しかし、すぐに優しい笑顔を浮かべた。


「すごいわ! 琴音らしい選択ね。でも、何か迷いがあるの?」


 美月の問いかけに、私は躊躇いながらも本音を話した。


「うん……2人と離れるのが怖いの。この絆が……薄れてしまうんじゃないかって……」


 私の言葉に、美月は真剣な表情で応えた。


「琴音、私たちの絆はそんな簡単には崩れないわ。むしろ、それぞれが自分の道を歩むことで、もっと強くなるはずよ」


 その言葉に、私は涙が込み上げてきた。


 数日後、今度は陽菜とビデオ通話をした。陽菜はスポーツトレーナーとしての道を歩み始めており、その姿はより一層たくましく見えた。


 美月との会話で勇気づけられた私は、陽菜にも留学の話を打ち明けた。


「琴音、それは素晴らしいことじゃないか!」


 陽菜は満面の笑みで私を励ましてくれた。


「でも、私たちのことを心配しているんだろう?大丈夫だよ。距離が離れても、私たちはいつもつながっているんだから」


 2人の言葉に背中を押され、私は留学への準備を本格的に始めることにした。しかし、その過程で新たな不安も生まれていった。


 言語の壁、文化の違い、そして何より、自分が本当にやっていけるのかという自信のなさ。それらの不安が、時として私を押しつぶしそうになった。


 そんなある日、突然母親の冷たい声が頭の中で響いた。


「あんたなんか、海外になんて行けるわけないでしょ。失敗して帰ってくるに決まってるわよ」


 その瞬間、私は激しいパニック発作に襲われた。

 息が苦しくなり、体が震え始める。

 必死に美月と陽菜に電話をかけた。


「琴音!? 大丈夫? 深呼吸して」

「落ち着いて。私たちがついているから」


 グループ通話で2人の声を聞きながら、私はゆっくりと落ち着きを取り戻していった。


「琴音、あなたは十分強い。これまでの経験が、あなたを成長させてきたのよ」

「そうだよ。過去はあなたを定義するものじゃない。これからどう生きるかが大切なんだ」


 2人の言葉に、私は深く勇気づけられた。


 夏の終わり、3人は久しぶりに対面で再会する機会を得た。互いの姿を見た瞬間、私たちは言葉もなく抱き合った。


 その夜、満天の星空の下で3人は語り合った。それぞれの夢、不安、そして未来への希望。美月は自分の芸術性を極める決意を、陽菜は人々の健康に貢献する夢を語った。


 そして私は、環境問題に取り組むグローバルリーダーになりたいという思いを打ち明けた。


「私ね、いつかは国連で働きたいの。世界中の人々と協力して、地球の未来を守りたい」


 その言葉に、美月と陽菜は満面の笑みを浮かべた。


「琴音なら、きっとできるよ」

「そうね。あなたの優しさと知性なら、世界を変えられるわ」


 2人の言葉に、私は涙が止まらなくなった。長年の自己否定から解放され、初めて自分の可能性を信じられるようになった気がした。


 その夜、3人で抱き合いながら眠りについた。明日からまた別々の道を歩むことになる。でも、もう怖くはなかった。


 翌朝、別れ際に3人は固く誓い合った。


「それぞれの夢を追いかけよう」

「でも、この絆は永遠に」

「そして、もっと素敵な大人の女性になって再会しよう」


 新たな決意を胸に、私は留学への道を歩み始めた。不安はまだあったが、それ以上に大きな希望が心を満たしていた。美月と陽菜という大切な存在があり、そして自分自身を信じる力を得た。


 飛行機に乗り込む直前、私は深呼吸をした。


(大丈夫。私には乗り越える力がある……美月と陽菜だってついていてくれる……!)


 そう心に誓いながら、新たな冒険への一歩を踏み出した。未知の世界が私を待っていた。

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