エピローグ:8年目の春 - 新たな挑戦と深まる絆

 美月、琴音、そして私が初めて出会ってから8年が経過した春のこと。私たちの人生は、予想もしなかった方向へと進化を遂げていた。


 私は、障がい者スポーツの分野で革命を起こしていた。新しいトレーニング方法とリハビリテーション技術を開発し、多くの人々に希望をもたらしていた。さらに、義足や車椅子の新しいデザインにも携わり、機能性と美しさを兼ね備えた製品を世に送り出していた。


「限界を決めつけないこと。それが私の信念です」


 国際会議でスピーチをする時、かつての雛の存在を思い出した。今では、その激しさが私の情熱となり、多くの人々を勇気づける力になっていた。


 美月、琴音、そして私。3人の活動領域は大きく異なっていたが、私たちはある共通のプロジェクトに取り組んでいた。それは、さまざまな形の「愛」を表現し、社会に問いかける芸術祭の開催だった。


 私は、パフォーマンスアートを担当した。かつての雛の激しさを、美しい動きに昇華させ、観客の心を揺さぶる。美月のVRと自然を融合したインスタレーション、琴音の環境音楽。3人の作品が織りなす空間は、訪れる人々に強烈な印象を与えた。


 芸術祭の最終日、私たちは密かに用意していたサプライズを披露した。それは、8年間の歩みを表現した総合芸術作品だった。


 VR空間に投影された美月の絵画が、私の踊りによって生命を吹き込まれ、琴音の音楽がその世界に彩りを添える。観客は、3人の魂が融合した瞬間を目の当たりにし、深い感動に包まれた。


 パフォーマンスが終わると、会場は静寂に包まれた後、大きな拍手が沸き起こった。その瞬間、私の中で雛が喜びに震えるのを感じた。


 その夜、3人は芸術祭の打ち上げパーティーを抜け出し、静かな丘の上に腰を下ろした。満天の星空の下、私は懐かしそうに言った。


「あの頃は、こんな未来が待っているなんて想像もしなかったね」


 美月と琴音は優しく微笑んだ。


 私は空を見上げながら呟いた。


「これからどんな冒険が待っているんだろう」


 琴音が答えた。「それは、私たち次第よ」


 美月も付け加えた。「3人一緒なら、どんな未来でも乗り越えられる気がする」


 3人で抱き合いながら、私たちは新たな誓いを立てた。


「もっと自由に」

「もっと大胆に」

「そして、もっと愛し合うことを恐れずに」


 春の夜風が私たちの髪をなびかせる中、私は心の中で雛に語りかけた。


(ねえ、雛。私たちはもう一人じゃない。これからも一緒に、もっと素敵な未来を作っていこう)


 雛は静かにうなずいているようだった。もはや雛は恐れるべき存在ではなく、私の大切な一部。美月と琴音との絆と共に、私を支える力となっていた。


 満天の星空の下、3人の影が重なり合う。8年の時を経て、私たちの絆はより強く、より深いものになっていた。そして、これからもその絆は成長し続けるだろう。


 新しい朝を迎える準備をしながら、私たちの心は希望に満ちていた。どんな困難が待ち受けていようとも、3人で乗り越えていける。そう信じて、私たちは新たな冒険への一歩を踏み出そうとしていた。

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