第4章:将来への不安と絆の試練(大学3年)
時が流れ、気づけば大学3年生。私は地元の大学でスポーツ科学を学びながら、オリンピック出場を目指すか、一般企業に就職するかの岐路に立たされていた。
練習に励む日々の中で、私の中の雛は以前ほど暴れなくなっていた。しかし、将来への不安が募るたびに、その存在を強く感じるようになっていた。
(私、本当にオリンピックを目指していいのかな。でも、普通のOLになるのも何か違う気がして……)
そんな思いを抱えながら、ある日私は琴音に電話で相談した。
「私、本当にこのままオリンピックを目指していいのかな。でも、普通に仕事をするのもなんか違う気がして……」
琴音は静かに聞いてくれた。その優しさに、私の中の雛も少し落ち着いたような気がした。
夏の終わり、3人は久しぶりに会う機会を得た。再会した時、私は明るく声をかけた。
「ねえ、みんな元気にしてた?」
しかし、その笑顔には少し強張りがあった。美月は黙ったまま、遠くを見つめていた。琴音は何か言いたげな表情を浮かべていた。
そして、琴音が静かに切り出した。
「私ね、留学を考えているの」
その言葉に、私の中の雛が激しく騒ぎ始めた。
(みんな、それぞれの道を歩み始めるんだ。私だけ取り残されるのかな)
必死に雛を抑えつつ、私も自分の悩みを打ち明けた。
「実は私もこのままオリンピックを目指すか迷ってるんだ」
美月も、自分の芸術表現の行き詰まりと、3人の関係が自分を縛っているのではないかという不安を語った。
その夜、3人は例年のように一緒に過ごすことはなかった。それぞれが自分の部屋に戻り、一人で夜を過ごした。私は一人きりになって、初めて雛の声をはっきりと聞いた気がした。
(みんな離れていってしまう。でも、それが正しい道なのかもしれない)
翌日、3人は再び集まった。昨日の重苦しい雰囲気とは打って変わって、それぞれが決意に満ちた表情を浮かべていた。
「私たちの関係は特別だけど、だからこそ、お互いの成長を邪魔しちゃいけないと思う」
琴音の言葉に、私も強くうなずいた。
「うん、それぞれが自分の道を歩むことで、もっと素敵な大人の女性になれるはず」
その瞬間、私の中の雛が静かに頷くのを感じた。
3人は立ち上がり、互いに向き合って強く抱き合った。その抱擁の中で、私は雛の存在を完全に受け入れた気がした。
「離れ離れになっても、このブレスレットがあれば、2人といつもつながってる気がする」
私の頬を涙が伝う。しかし、それは寂しさの涙ではなく、新たな決意への涙だった。
これからの道のりは決して平坦ではないだろう。しかし、3人は確信していた。このブレスレットが、そしてその中に込められた想いが、どんな困難も乗り越える力を与えてくれると。
そして私は、雛の存在も含めて自分自身を受け入れ、新たな挑戦に向かう準備ができたのだった。
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