第2章:深まる絆と進路の岐路(高校3年)

 時が流れ、気がつけば高校3年生。美月、琴音、そして私。3人の関係はますます深まっていったけれど、同時に将来への不安も大きくなっていった。


 夏の終わり、私は重大な決断を迫られていた。地元の大学からスポーツ推薦の話をもらったのだ。嬉しい反面、美月と琴音と離れ離れになる可能性に胸が締め付けられた。


 ある日、思い切って2人に打ち明けることにした。


「私、地元の大学からスポーツ推薦の話をもらったの」


 言葉を発した瞬間、美月と琴音の表情が変わるのを見て、私の中で雛が騒ぎ始めた。


(やっぱり言うんじゃなかった。2人を失うかもしれない)


 必死に雛を抑え込みながら、私は続けた。


「でも、まだ何も決めてないんだ。ただ……この機会を逃すのは、もったいないかなって……」


 美月と琴音は黙って聞いてくれた。その沈黙が、逆に私を不安にさせた。


 すると、琴音が静かに言った。


「陽菜、あなたの夢を追いかけるべきよ」


 美月もうなずいて、「私たちの友情は、距離が離れても変わらないはず」と付け加えた。


 その言葉に、私の中の雛も少しずつ落ち着いていった。でも、まだ不安は消えなかった。


 その後の日々、私は悩み続けた。スポーツの道を極めるべきか、それとも2人と一緒の大学に行くべきか。雛が出てこないか心配しながら、毎日を過ごした。


 卒業式の日、美月が3つのブレスレットを取り出した時、私は思わず涙ぐんでしまった。


「これがあれば、どんなに離れていても、私たちはつながっている」


 美月の言葉に、私の中の不安が少しずつ溶けていくのを感じた。


 卒業式の夜、美月の家の薄暗い部屋で、私たち3人は最後の時間を過ごそうとしていた。窓から差し込む月明かりが、私たちの姿を優しく照らしている。空気は期待と不安、そして別れの切なさで満ちていた。


 私は小さく深呼吸をした。その音が静寂を破り、美月と琴音の視線が私に向けられた。私の中で、いつものように雛が動き始めるのを感じた。しかし、以前とは少し違う。激しく暴れるのではなく、ゆっくりと目覚めるような感覚だった。


(今夜は、最後かもしれない……)


 その思いが、私の胸を締め付けた。しかし同時に、美月と琴音の存在が、不思議な安心感をもたらしてくれた。


 私たちは互いの服に手をかけ、ゆっくりと脱がせていった。肌が露わになるたびに、私の鼓動は早くなった。雛の存在も強くなっていったが、以前のような恐怖や抵抗は感じなかった。


 美月の体は、月明かりに照らされてより一層柔らかく見えた。琴音のしなやかな肢体は、まるで彫刻のような美しさを放っていた。2人の姿に見とれながら、私は自分の中の雛がどう反応するか、恐る恐る確認した。


 驚いたことに、雛は激しく暴れるのではなく、むしろ興味深そうに2人を観察しているようだった。その反応に、私は少し戸惑いを覚えた。


 3人は互いの体を丁寧に、そして愛おしむように触れ始めた。私の指先が美月の滑らかな肌を撫でると、美月は小さくため息をついた。琴音の唇が私の首筋に触れ、その感触に私は身震いした。


 以前なら、こんな刺激的な状況で雛が暴走することを恐れていただろう。しかし今夜は違った。雛の存在を感じながらも、それを受け入れ、むしろ一緒に楽しもうとしている自分がいた。


「陽菜、大丈夫?」美月が優しく尋ねた。

「何か様子が違うみたい」琴音も心配そうに付け加えた。


 私は小さく微笑んだ。


「うん、大丈夫。むしろ、すごく……いい感じ」


 その言葉に、2人は安心したように微笑み返してくれた。


 愛撫が進むにつれ、部屋の温度が上がっていくのを感じた。美月の柔らかな胸が私の背中に押し当てられ、琴音のしなやかな脚が私の腰に絡みついた。その感触に、私の中の雛も歓喜の声を上げているようだった。


 私は静かに深呼吸をし、美月の首筋に唇を寄せた。彼女の肌から立ち上る甘い香りが、私の鼻腔をくすぐる。その香りを深く吸い込むと、私の中で何かが目覚めるような感覚がした。それは雛の気配。でも、もう怖くはない。


 美月の首筋にそっとキスをすると、彼女の体が小さく震えるのを感じた。その反応に、私の胸の奥で何かが熱く燃え上がる。雛の存在が強くなってきているのを感じるが、もはやそれは私自身であり、恐れる必要はないのだと理解していた。


 唇を美月の首筋から離し、今度は琴音に注目する。彼女の耳たぶに軽くキスをし、そっと歯を立てる。琴音が小さく息を呑む音が聞こえ、その反応を楽しんだ。以前の私なら、こんな大胆な行動は決して取れなかっただろう。全て雛の仕業だと恐れ、自分を抑え込もうとしていただろう。


 しかし今は違う。雛の存在を感じながらも、それが私自身の一部であることを受け入れている。雛の大胆さと私の優しさが混ざり合い、新しい形の愛情表現となって現れているのだ。


 琴音の耳たぶから顎のラインへと唇を這わせていく。その滑らかな肌の感触に、私の中の欲望がさらに高まっていく。雛の存在が強くなるにつれ、私の動きはより大胆になっていった。


 時間が経つにつれ、3人の動きは激しさを増していった。美月の手が私の背中を撫で、琴音の唇が私の鎖骨に触れる。その感触のすべてが、私の感覚を研ぎ澄ませていく。


 汗ばんだ肌と肌が擦れ合う音が部屋に満ちる。その音が、さらに私たちの興奮を高めていく。美月の甘い嬌声、琴音の抑えた吐息、そして私自身の声。それらが混ざり合い、官能的な旋律を奏でていた。


 その中で、私は雛の存在をより強く感じた。しかし、それはもはや恐怖ではなかった。むしろ、この瞬間をより深く、より強く感じさせてくれるものだった。雛の存在が、私の感覚を研ぎ澄まし、美月と琴音との触れ合いをより鮮明に、より強烈に感じさせる。


 私の手が美月の腰に回り、琴音の唇が私の胸元に触れる。その瞬間、雛の存在がさらに強くなり、私の中で何かが弾けるような感覚があった。しかし、それは恐ろしいものではなく、むしろ興奮を増幅させるものだった。


 雛の荒々しさと私の優しさが混ざり合い、より複雑で深い愛情表現となって現れる。時に激しく美月の体を抱きしめ、時に優しく琴音の頬を撫でる。その振れ幅の大きさに、美月と琴音は戸惑いながらも、深く魅了されているのが分かった。


 私の中で雛が目覚めるたび、その動きはより大胆に、より情熱的になる。しかし、それは決して制御不能な暴走ではない。雛の存在が、3人の愛の行為により深い次元をもたらしているのだ。


 美月の柔らかな肌、琴音のしなやかな体。それらに触れるたびに、私の中で新たな感覚が目覚めていく。雛の存在を通して、私はより深く、より鋭く、2人の存在を感じ取ることができた。


 喘ぎ声が部屋に満ちていく。その音が、さらに私たちの興奮を高めていく。3人の体が絡み合い、まるで一つの生き物のように波打つ。その中で、私と雛の存在が完全に調和し、美月と琴音との絆の中に溶け込んでいくのを感じた。


 この瞬間、私は完全に自由になれた気がした。雛の存在を恐れるのではなく、それを受け入れ、さらには活かすことで、より深い愛を表現できるようになったのだ。


 美月と琴音の温もり、彼女たちの香り、肌の感触。それらすべてが、雛の存在によってより鮮明に、より強烈に感じられる。この感覚は、まるで人生で初めて本当の意味で「生きている」と感じているかのようだった。


 月明かりに照らされた部屋の中で、3人の体が一つとなって動く。その姿は、まるで古代の祭壇に捧げられた生贄のようでもあり、同時に至高の芸術作品のようでもあった。


 私は美月の唇を求め、深く口づけた。そして琴音の首筋に顔を埋め、その香りを胸いっぱいに吸い込む。雛の存在が私の中で踊るように、私たち3人の体も踊るように動いていく。


 この瞬間、私たちは新たな次元の愛を見出したのだった。それは、言葉では表現できない、魂の深部で感じる永遠の絆。美月、琴音、そして雛を含めた私。4つの魂が交わる、特別な愛の形だった。


「美月……琴音……」


 私の声が震える。それは快感のためだけでなく、2人との絆を強く感じたからだった。


「陽菜……」

「陽菜……」


 2人の声が重なる。その瞬間、私の中で何かが溶けていくような感覚があった。雛の存在が、私自身と完全に一体化したような気がした。


 絶頂が近づくにつれ、私たちの動きは更に激しくなった。私の中の雛も、その興奮に呼応するように存在感を増していく。しかし、それはもはや恐れるべきものではなかった。むしろ、この瞬間をより深く、より強く感じさせてくれるものだった。


 そして、ついにその瞬間が訪れた。


「あっ……!」


 3人の声が重なり、同時に絶頂を迎えた。その瞬間、私の中で雛が完全に溶け込んでいくのを感じた。それは、まるで長年の葛藤が解消されたかのような、深い解放感だった。


 余韻に浸りながら、3人は強く抱き合った。美月の柔らかな髪が私の頬をくすぐり、琴音の温かい吐息が首筋を撫でる。


「陽菜、今日はなんだか違ったわね」美月がそっと囁いた。

「うん、すごく……自由になったみたい」琴音も優しく付け加えた。


 私は小さく笑った。


「うん、私も感じた。今までずっと抑えてきた何かが、やっと解放されたような……」


 2人は優しく微笑み、私をさらに強く抱きしめてくれた。


 窓から差し込む月明かりが、3人の姿を柔らかく包み込んでいる。その光の中で、私は初めて自分の全てを受け入れられたような気がした。雛ももう、恐れるべき存在ではない。それは私の一部であり、美月と琴音との絆によって受け入れられ、調和された存在なのだと。


 これから3人はそれぞれの道を歩んでいく。別れの寂しさはあるけれど、今はそれ以上に、新たな一歩を踏み出す期待に胸が膨らんでいた。


 私たちはそのまま眠りについた。互いの温もりを感じながら、最後の夜を過ごす。それは別れの夜であると同時に、新たな始まりの夜でもあった。雛の存在も含めて、全ての自分を受け入れられた私。そして、それを受け入れてくれた美月と琴音。この絆があれば、どんな困難も乗り越えられる。そう信じて、私は穏やかな眠りに落ちていった。


 翌朝、目覚めた私たちは、これから始まる新しい人生への期待と不安を胸に、最後の朝食を共にした。別れ際、私は2人に強く抱きついた。


「必ず、また会おう」

「そして、もっと素敵な大人の女性になって」

「私たちの絆を、もっと強くするために」


 3人で誓い合った言葉に、私の中の雛も静かにうなずいているようだった。これからの道のりは決して平坦ではないだろう。でも、この絆さえあれば、きっと乗り越えられる。そう信じて、私は新しい一歩を踏み出す準備をした。

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