陽菜

プロローグ:陽菜の告白

 皆さん、こんにちは。

 私の名前は陽菜。

 これから私の物語を語るにあたって、まず皆さんに知っておいてほしいことがあります。


 私は二重人格者です。


 この言葉を聞いて、戸惑う方もいるかもしれません。正直、私自身もこの事実を受け入れるまでに長い時間がかかりました。


 私の中には、「雛」という別の人格が存在します。雛は私とは全く異なる性格を持っています。荒々しく、時に攻撃的で、でも同時に私を守ろうとする強さも持っています。


 幼い頃から、何か「違う」という感覚はありました。時々、気がつくと知らない場所にいたり、自分の記憶にない行動をしていたりすることがありました。周りの人から「さっきまでの陽菜ちゃんと全然違う」と言われることもありました。でも、その時は自分が二重人格だとは思いもしませんでした。


 雛の存在に気づいたのは、中学生の頃でした。運動会の練習中、突然意識が切り替わり、気がつくと驚くほどの速さで走っていたのです。その時の感覚は今でも鮮明に覚えています。自分の体なのに、自分の意思ではないように動く。それは恐ろしくもあり、同時に不思議な体験でした。


 高校に入学してからは、状況はさらに複雑になりました。美月と琴音との出会い。3人の関係の変化。そんな中で、雛の存在は私をより一層苦しめることになりました。


 雛は特に、スポーツの試合の時のようにアドレナリンが出るような場面でよく現れます。私が抑えている感情を、雛が代わりに表現するのです。時には、それが周りの人を驚かせたり、傷つけたりすることもありました。


 私は必死に雛を抑え込もうとしました。でも、それは逆効果でした。抑え込めば込むほど、雛は暴れたくなるようでした。そんな悪循環の中で、私は苦しみ続けていました。


 特に、美月と琴音との関係が深まるにつれ、私の中での葛藤も強くなっていきました。大切な2人を傷つけてしまうのではないか。雛が暴走して、取り返しのつかないことをしてしまうのではないか。そんな恐怖が、私を苦しめ続けたのです。


 彼女たちの無条件の愛は、私と雛の関係も変えていきました。雛は私の敵ではない。むしろ、私を守るために生まれた存在なのかもしれない。そう考えるようになったのです。


 今では、雛と私は共存することを学びました。時には雛が前面に出て、私を守ってくれることもあります。また、雛が私の感情を代弁することで、本当の気持ちを表現できることもあります。


 もちろん、まだ完璧とは言えません。時々、コントロールを失うこともあります。でも、美月と琴音の支えがあれば、きっと乗り越えられる。そう信じています。


 これから語る物語は、私と雛、そして美月、琴音との愛の物語です。それは決して平坦な道のりではありません。葛藤あり、挫折あり、そして喜びあり。でも、その全てが私たちを今の姿に導いてくれました。


 皆さんには、偏見を持たずにこの物語を読んでいただきたいと思います。二重人格者の生活は、想像以上に複雑で難しいものです。でも、それでも愛し、愛される価値はあるのだということを、この物語を通じて感じ取っていただければ幸いです。


 そして、もし同じように苦しんでいる方がいらっしゃれば、この物語があなたの希望になれば嬉しいです。あなたは一人じゃない。必ず、あなたを受け入れてくれる人がいる。そう信じてください。


 さあ、私たちの物語の幕を開けましょう。二重人格者の私と雛、そしてかけがえのない存在である美月と琴音。4人の複雑で美しい関係性が、今ここに始まります。


 これからの章で、私たちがどのように出会い、困難を乗り越え、そして愛を育んでいったのか。その全てをお伝えしていきたいと思います。


 皆さんと一緒に、この旅路を歩めることを楽しみにしています。

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