第22話:呪い前線異常アリ⑤
「……うん。薄々そんな気はしてたけど、あの子やっぱりろくでもない感じだったかぁ」
「わたしのせいじゃないけどすみません……!!」
「よーしよし、大丈夫だって。だから小鳥ちゃん、いざとなったら刺し違えてでも、みたいな悲壮な顔しないでちょうだい」
「断じてそのような事態は引き起こしませんが。我が名に懸けて」
「分かってるってば。旦那もその、飛ぶ鳥が
――さてと! キヴィを盛ってきた犯人捜しもしなきゃだけど、まずは聖女対策が先決ね。ちょっと付き合ってくれる?」
宥めたりツッコミを入れたりしてから、ラウラはさっと席を立った。つい先程までぐったりしていたとは思えない元気な様子に、主に治療を担当した理咲がホッとしたのは言うまでもない。
ちなみにだが、現王三傑としてのラウラの呼び名は『
「可愛すぎるから『姫』はやめて、って言ったんだけどね……陛下がどうしてもって聞かなくて……」
「え、そんなことないですよ? 雰囲気ピッタリでカッコいいよね、ポーちゃん」
「うんうん。ほらねラウちゃん、分かる人には分かるんだって」
「ええー、そう……? っと、着いたわね。ここよ」
揃って太鼓判を押す女子コンビに、微妙な表情で返した魔導師殿が足を止める。
階段をさらに登って、廊下をひたすら奥へ奥へと進んでいった、という場所だった。何度も角を曲がったので、現在地がどのあたりになるのか既に分からない。もし理咲ひとりで戻れと言われたら、その時点で迷子確定だろう。
廊下の突き当りからさらに細い通路が続いていて、その左右に槍を持った騎士が立っている。ラウラが軽く会釈すると、ぴったり揃った動作で敬礼を返してくれた。同じようにお辞儀をしつつ踏み入ったる宇都には、驚いたことに窓がひとつもない。魔法で灯りを点けていると思しきランプが、白っぽい光を床に投げかけていた。
「ご案じ召されるな。要人への襲撃を防ぐための作りゆえ、むしろ我々を護ってくれます。――ラウラ殿、自分はひとまずここで」
「ああ、そうなんで……って、ノルベルトさんはいっしょに行けないんです? なんで?」
「うっ、……い、いえ、何故と申しましょうか」
「こらそこ、頼りにされてあからさまに嬉しそうな顔しない!! 後で入れるから、ねっ」
いや、もはや条件反射で付いてくるものだと思っていただけなのだが。
とにかくちゃっちゃと仕切ったラウラは、通路の先にあった扉の左右に立つ女性騎士たちに挨拶して、中に入れてもらう。室内は薄暗く、奥の方に天井から下がった幕のようなものが見える。ぼんやりとだが、中に大きな台のようなものがあるのが分かる――と、思った時だった。
「……ラウラ? 戻ったのね、お帰りなさい」
まさにその幕の向こうから、細いけれど澄んだ優しい声が聞こえたのは。
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