第13話:ああ、素晴らしき妖生④



 だいたい護衛くらいしか、とは言うが、それを可能な限り隊長自身がやっているのだ。その上職務でどうしても無理、というときは、副隊長を務めるアベルだとか、今日も一緒にいてくれたロイだとかを専属として置いて行ってくれたりする。トップ2のどちらかが高確率で護衛を務めるとか、どう考えてもおかしいのでは。

 あれこれ考えて視線が泳いでいる理咲を見かねたか、にこにこと見守っていた医官さんが助け舟を出してくれた。ぽん、と軽く手を打って、

 「あ、そーだ。ノルさん、今日ってラウちゃんが帰ってくる日じゃなかったっけ? もう着いたかなぁ」

 「ええ、そうですな。予定通りであれば、四半刻程前には陛下に帰参のご挨拶をなさっているかと」

 「じゃあそろそろ顔出してだいじょーぶかな? よかったねリサちゃん」

 「え? ……えっと、あの、ラウちゃんて?」

 「あれ、話してなかったっけ?? ごめんごめん!

 ほら、精油っていうのが欲しい、て言ってたじゃない。ラウちゃん宮廷魔導師で、ついでに錬金術がいっちばん得意だから、きっと助けてくれるかなって」

 「ほんとですか!?」

 願ってもないことを教えらえて、条件反射でぱっと顔が輝いた。理咲が小説で学んだ知識から行くと、錬金術は『モノを作る』ことに特化した魔法だ。アロマテラピーに使う精油は消耗品だし、空気や日光によってどんどん劣化していくから、新しく作ることが出来るならとてもありがたい。

 「うんうん。ラウちゃん面倒見が良いから、ボクが紹介したよーって言えばすぐ話聞いてくれるよ。

 というわけでノルさん、あとお願い!!」

 「承った。ではリサ殿、早速参りましょう」

 「へっ!? いやあの、良いですよ! だってまだ勤務時間中じゃ」

 「いえ、リサ殿の功績はすでに殿下方もご存じゆえ。ご用命の際には可能な限り優先するように、との許可を頂いております」

 (何ですとー!?!)

 だから何も問題ありません、と、鋭い目元を和ませて言い切るノルベルトである。いったい誰がそんな報告したんですか、そして何でそんなに嬉しそうなんですか!!

 いともあっさり押し切られてしまい、がっくり肩を落とした理咲に、壁際で大人しく口をつぐんでいたロイが同情のまなざしを送っていた。


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