Episode 5 食材採集クエスト
―聖界のとある庭園にて―
ぽつぽつぽつ...
雨が降り始めた。
「あーせっかく良いところなのに!」
「中に入ろう、セーラ」
頭に当たる雨が強くなるのを感じながら、セーラと家の中に入った。
「少し濡れてしまったな。セーラ、お風呂に入ると良い。蛇口をひねればお湯が出る」
「お風呂!良いわね!マルタ様もいっしょに入りましょう!」
「いや、私はセーラの後で...」
「いっしょに入るの!」
やれやれ、セーラはいつもこうだ。
自分勝手、
まぁ私も昔はこんなだったような気がするから、ミーシャは大変だっただろう。
そんなこんなで今、私はセーラを後ろから抱くようにして、湯船に浸かっている。
「マルタ様、それで森に着いた後はどうなったの?」
「ここで話すのか?のぼせてしまうぞ?」
「いーいーのっ!」
頭の中で
―――――――――――
さて...最初は万層玉ねぎを採りにいったのだが、普段市場に並ぶものしか見ていなかった私はその大きさに度肝を抜かれた。
「ミーシャ...これって...」
「はい、マルタ様。万層玉ねぎです」
「玉ねぎって...これ。高さ何メートルよ!」
「およそ5メートルくらいかと。中心部に行くほど甘みが強く、その甘みを狙ってくる外敵から身を守るために万の層を形成するのです」
「美味しい部分は何層くらいなの?」
「そうですね...市場に並ぶのが15センチほどですから30層ほどでしょうか」
「なるほど。そこまでの9,970層は剥かないといけないってことね」
「そうですね。諦めますか?」
「何を!私が諦めるわけないでしょ!あのルークとかいう騎士に『もっとマシな課題を持ってこい』って言ってやるんだから!」
ここから玉ねぎを傷つけ無いように素手で皮を剥き始めるのだが、結果として2日もかかってしまった。
一日中、玉ねぎに向き合うのは涙が止まらなくなり難しいので、夜は夜鳴き
「はーっ!やっと剥けた!」
「お疲れ様でした、マルタ様。これで食材は2つ集まりましたね」
「ミーシャ、このままだと食材集めに時間がかかって腐ってしまうわ。どうしよう...」
「城の食料庫に転送致しましょう。たしかにこのままでは全ての食材が集まるのに2週間ほどかかりそうですから」
そう言って、ミーシャが
「主よ。万物、その存在を
目の前で食材が白い光(光の綿毛みたいな)に包まれて消えた。
「びっくりした。あなた、奇跡が使えるのね。初めて見たわ」
「私は騎士王様の使用人でございますゆえ、簡単なものは一通り
「ふーん、今度教えてよ」
「それは私の業務ではございませんので」
「何よ、けち」
そんなことを繰り返して聖樹の樹液、深層じゃが芋、レイピア人参、
残りは精霊の泉の水とそこに生息する深林牛のミルクだけとなった。
「ねーミーシャ」
「はい。マルタ様」
「
「はい。そうですね」
キャンプ地で星空を眺めながら私はミーシャにそう言った。
森に入ってからは一週間が過ぎようとしていた。
――――――――――
【用語】
■ルーンの森
グレグランド王国から北に10kmほどの場所にある森。聖界きっての巨樹の森でさまざまな動植物が生息する。
森の中心部には泉があり、森を守る精霊が棲むと言われている。
■奇跡
神、聖なる種族が起こす現象の総称。
人が使用する場合、聖具を媒介にして行う。
【登場人物】
■セーラ
マルタの昔ばなしを聞く10歳の少女。
竜の卵を手に入れる実力がある(?)
■マルタ・アフィラーレ・ラスパーダ
この物語の案内人であり、昔ばなしの主人公。
17歳の時、故郷の村を魔物の侵攻によって失ってしまう。
その後、聖界最大の国、グレグランド王国に保護され、王様の許可を貰い騎士を目指す。
未来の身分は不明。しかし、少女が「様」を付けているところから、ある程度高貴な身分ではありそうだが...。
■ミーシャル・マーリン
セミロングの40歳の女性。
先代の騎士王から使える使用人。
騎士王の身の回りから公務まで、あらゆることをサポートする。料理が得意。奇跡を使える。
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