新たに紡ぐ物語2

 ここで問題です、今何してるでしょーか?

チッ、チッ、チッ、はいタイムアップです、正解は主従契約の真っ最中でしたー。


「楽しそうだね」


 いや、楽しくないですよ、だって今命の手綱を他人に渡す契約中ですからね。

空元気と言うやつだ、まあ、奴隷契約や投獄契約、その他諸々の強制力の強いものと違い、命を尊重されているため、甘んじて受け入れる。


 というか、この人楽しそうだな。

書類に色々と契約事項を増やしている彼女はニッコニコのお日さまみたいだ。

 ん?何言ってんだ自分?まあ、いっか。


「よし、これで後は血判を二人分押せば終わりだよ」


「いや、待て契約内容が読めないんだが」


 クレオメは何を言ってるのかわからないと、首を捻る動きを見せる。

 いや、こっちが文字読めない訳ではないよ...え、本当だよ。多分この契約書は旧文明文字を使われている。


「心配性だな、大丈夫だよ君の不利になる事は書いてないから」


「旧文明文字の時点で怪しけどね」


 うだうだ言っていると、血判を押し終わったのか、こちらに書類と短剣を寄越してくる。

しかも挑戦的な笑顔で。


「はぁ、わかったよ」


 半ば諦めの精神でため息をつき、短剣を持つ。

血判...そういえば、ビックスが短剣で指を深く斬りすぎて書類が真っ赤になった話を思い出して、クスクスと笑ってしまう。


「契約に則り汝を従者とする」

「契約に則り貴方様を主人とします」


 誓いの言葉を言い終わると、書類が光に包まれて消失し、代わりに二人の手の甲に紋様が浮かび上がったと同時に、薄れて消えていく。


「契約もできたし、これからの目標を言います」


「ん、で?」


 返事に関しては許して欲しい。基本的にコミュ障だから。


「えー、反応薄いよ、まあ、良いや、まず即行でガーデフィン学園を卒業します」


 ガーデフィン学園は大陸随一と謳われるほどの魔法学園で、年齢不問の5学年制で、人気は高いために在学人数が多いが、逆に卒業生は少ない事でも有名である。

でもあるじは2学年であり、卒業まで最短でも3年以上必要だと思うんだけど。


「あれ、今2学年だよね」


「うん、そうだけど?」


 一瞬首を傾けるが、問いかけの意味を理解したのか、説明してくれた。

 要約すると、新たな魔法を創り出したら良いって事と、それが合格ラインであれば卒業出来るとの事。


「どのぐらいで卒業を考えてるの?」


「3ヶ月ぐらいかな?まあ、魔法自体は君の力が無いと無理だけど」


 また不適な笑をする主に嫌な予感がする。

でも、魔法は使えないから、何を手伝えば良いのか、わからないな。


「力って何を貸せばいいの?」


 素直に何をすれば良いのか確認するが、返答がないので、主の顔を覗くと無表情になっているため、先を促す事ができない。


「感情を...私にくれないかな?」


 感情をあげるって、どういう事?何も感じなくなるってことかな?話が飛躍し過ぎてて頭がついていかない。


「私のね、魔法はね...」

「それって、どうい...」


 主が無表情から突如悲しい顔に変わったことに、焦って言葉を発したせいで、被ってしまう。


「ふふ...大丈夫だよ。私の魔法は人の感情と共鳴する事で威力を増大させるんだ」


 微笑んでいるが、まだどこか哀愁のある表情をしている。

ここで励ましの言葉とか言えたら、できた従者と認定してもらえるかもしれないが、やはり何も思いつかない。


「わかったよ、感情をあげる」


「良かった...儀式自体は明日にしよう、今日は疲れたから、夕飯を食べてゆっくりしよう。」


 先ほどとは打って変わって、笑顔になっているので、嬉しく思う。

 あれ?今日だけでだいぶ毒されているような...



 















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